![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/151500320/rectangle_large_type_2_c23a23b0b51343df0f9f159c1ffda0e7.jpeg?width=1200)
「観る将」が観た第6期清麗戦五番勝負第四局
8月20日、大成建設杯第6期清麗戦五番勝負第四局が関西将棋会館で行われました。ここまで2勝1敗とリードした福間香奈清麗が勝って一気に防衛を決めるのか、加藤桃子女流四段が勝って最終局に決着を持ち越すのか、大注目の一局となりました。
福間清麗は中飛車から三間飛車に
挑戦者の加藤女流四段が花柄のワンピースに濃紺のジャケット姿で入室し、福間清麗は白いシャツにベージュのパンツ姿で入室します。後手の福間清麗は中飛車に振り、加藤女流四段が超速で銀を繰り出すと、銀対抗の形になります。加藤女流四段が▲6七金と上がって中央に厚みを築くと、福間清麗は飛車を3筋に振り直します。
加藤女流四段の仕掛け
加藤女流四段は▲7七角~▲8六角と覗き、福間清麗が63分の長考で△6二金と上がって5三の地点を補強すると、5筋の歩を交換します。里見清麗が3筋の歩を突き捨て、△5五歩と打って先手に金を引かせてから△3五銀とぶつけると、加藤女流四段は▲3七銀と引いて銀交換を避けます。次の40手目を福間清麗が考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は福間清麗が2時間26分、加藤女流四段が2時間36分となっています。
難解な中盤戦
福間清麗は昼休を挟む27分の長考で5筋の歩を伸ばして金に当て、加藤女流四段が金を6筋に寄ってかわすと、△1五角と飛び出します。加藤女流四段が25分熟考し、2筋の歩を突き捨てて角で取らせてから5筋に歩を垂らすと、福間清麗は23分考えて△5二金上と受けます。加藤女流四段も▲6八銀と上がって5筋の歩成に備え、福間清麗が6筋の歩を突いて先手の角の利きを止めると、▲2二歩と桂頭を叩きます。
福間清麗の踏み込み
福間清麗は手抜いて△3六銀とぶつけ、加藤女流四段が桂を取って"と金"を作ると、銀交換はせずに△4七銀成と5筋に戦力を集めます。加藤女流四段は▲5六金と歩を取り、福間清麗が金頭を歩で叩くと、引くと成銀に取られてしまうので、38分の長考で▲5五同金と応じます。先手陣は金を吊り上げられて薄くなり、形勢はわずかに福間清麗に傾き始めたようです。
激しい駒のぶつかり合い
福間清麗が△3七成銀と銀を取って飛車に当てると、加藤女流四段は飛車を角と刺し違えてから▲3三歩と飛頭を叩いて吊り上げ、▲5三歩成と成り捨てます。残り1時間を切った福間清麗は△5三同銀直と応じ、加藤女流四段が飛金両取りに▲4五桂と打つと、更に26分熟考して飛車を見捨ててじっと△4七成銀と寄ります。
先手玉に詰めろ
加藤女流四段も残り1時間を切って桂で飛車を取り、福間清麗が△2八飛と打ち込むと、▲3二飛と打ち込んで攻め合いを目指します。福間清麗は△5八成銀と金に当て、加藤女流四段が▲5九歩と催促すると、成銀を金と交換して玉で取らせ、△8八金と挟撃態勢を作って詰めろを掛けます。形勢は大きく福間清麗に傾いています。
加藤女流四段の粘り
加藤女流四段は▲5六角と打って詰めろを逃れ、福間清麗が△5七歩と詰めろを続けると、▲6七銀打と粘ります。福間清麗は△8七金~△7四銀と角を捕獲し、加藤女流四段が▲3七飛成と王手飛車を避けつつ飛車に当てると、焦らず△5五飛成と竜を作って金に当てます。加藤女流四段は▲5三成桂と金を取り、福間清麗が△5五竜と金を取ると、▲5七竜と歩を取って守りを固めます。
後手の玉頭を睨む角
福間清麗は△5三竜と成桂を取り、加藤女流四段が▲7五歩と銀を取り返すと、角取りに△5五金と打ちます。加藤女流四段は角を3筋に引いてかわし、福間清麗が△5六歩と竜頭を叩くと、▲8四歩と合わせます。うっかり竜を取ると角の利きが通って後手玉は頓死してしまいますが、福間清麗は△7二金と玉頭を補強し、加藤女流四段が飛車を3筋にかわすと、△3六歩と叩きます。
先手の竜と角を押さえ込む福間清麗
この歩を取ると王手竜取りの筋があるので、加藤女流四段は▲4八竜とかわしますが、福間清麗は執拗に△4七歩と叩いて竜の位置を変えてから△5七桂と王手します。加藤女流四段は銀で桂を食いちぎり、福間清麗が再度△5六歩と竜頭を叩いて先手の角の利きを遮ると、1分将棋に突入して竜を2筋にかわします。
鮮やかな即詰み
福間清麗は△4六角と打ち、加藤女流四段が▲6八銀と受けると、△6八同角成と食いちぎります。先手玉には長手数の即詰みが生じているようで、読み切ったと思われる福間清麗は迷いなく王手を続けます。加藤女流四段は数手指し続けましたが、福間清麗が△2六銀とタダ捨ての王手を掛けたところで、無念の投了を告げました。
まとめ
本局は福間清麗が中飛車から三間飛車に振り直したのを見て、加藤女流四段は5筋から仕掛けました。結果的に一度前に出て行った先手の金銀は押し返され、激しい駒の取り合いの末に福間清麗が主導権を握りました。加藤女流四段は竜を自陣に引き付けて粘りましたが、福間清麗は徹底的に先手の竜と角を押さえ込み、最後は鮮やかな即詰みに討ち取りました。
福間清麗は3勝1敗で防衛を果たし、早くも通算5期目の清麗戴冠によりクイーン清麗の称号を獲得しました。感想戦後の囲み取材で「結果が幸いしたシリーズもあったんですけど、光栄に思います」と話しましたが、長年女流棋界を牽引してきた第一人者に相応しい勲章が、また一つ増えたことになります。月末からは西山女流三冠との白玲戦七番勝負も始まりますので、好勝負を楽しみにしたいと思います。
残念ながら敗退となった加藤女流四段は、対局直後のインタビューでファンに向けた一言を求められ、タオルで顔を覆う場面も見られましたが、「ファンの方のことを思うと情けないというか、また頑張りたいなと思いますし、自分のためにもまた精一杯頑張りたいと思います」と言葉を絞り出しました。この悔しさをバネに、福間清麗と西山女流三冠という二強の牙城を崩す存在として、捲土重来を期待したいと思います。
大成建設杯清麗戦は大成建設が主催しています。棋譜は下記サイトをご確認ください。