第2回女流ABEMAトーナメント予選Bリーグ第三試合
11月13日、第2回女流ABEMAトーナメント予選Bリーグ第三試合が放映されました。この日は第1期白玲戦で七番勝負に進出した西山女流三冠と渡部愛女流三段が率いる、チーム西山「ウォリアー」とチーム渡部「North」の顔合わせとなっています。第一試合で圧勝したチーム西山は、2勝すると予選突破が決まります。
■一局目 西山朋佳女流三冠 〇 vs ● 渡部愛女流三段
両チームとも初戦からリーダーが登場し、いきなりリーダー対決となりました。チーム西山がタイムアウトを要求しましたが、予選突破条件の優位さもあって余裕が感じられます。先手の西山女流三冠が初手▲7八飛と三間飛車に振り美濃囲いに構えると、渡部女流三段は左美濃に囲います。西山女流三冠は飛車を6筋に振り直すと機敏に▲6五歩~▲5五銀と仕掛け、角銀交換の戦果を挙げます。渡部女流三段は銀が突進して△5七銀成と拠点を作りますが、西山女流三冠は構わず後手陣に攻め込みます。渡部女流三段も必死の抵抗を見せましたが、▲5七飛成と拠点の成銀を取られたところで無念の投了となりました。
■二局目 上田初美女流三段 ● vs 〇 内山あや女流2級
初戦を落として早くも苦しくなったチーム渡部は、期待の新鋭内山女流2級が登場します。後手の上田女流四段が四間飛車に振り穴熊に囲うと、内山女流2級は左美濃から銀冠に組み替えて対抗します。上田女流四段は飛車を7筋に回して飛先の歩を交換すると、内山女流2級は2筋から反撃します。上田女流四段は手順に△4五桂と跳ね銀桂交換に成功すると、飛車を角と交換して飛金両取りに△4八角と打ち込みます。苦しくなってきた内山女流2級は飛車で角を取り、金を取られましたが馬取りに飛車を引いて守りに利かせます。上田女流四段は先手陣の金銀を剥がして攻め掛かりますが、内山女流2級も▲7二歩から反撃して際どい終盤戦となってきました。最後は内山女流2級が▲6三角とタダ捨てから即詰みに討ち取り、殊勲の初白星を挙げました。
■三局目 山口恵梨子女流二段 ● vs 〇 中井広恵女流六段
両チームとも順番通り出陣します。先手の山口女流二段が初手▲5六歩から中飛車に振り、中井女流六段は超速7三銀で迎え撃ちます。山口女流二段が穴熊に囲うと、中井女流六段は高美濃から銀冠に組み替えます。山口女流二段が左金も玉側に寄せて固めると、中井女流六段は更に銀冠穴熊に組み替えます。中井女流六段が飛車を4筋に回して仕掛けると、山口女流二段も飛車を4筋に回して反発します。中井女流六段は△8四角と出て間接的に先手の飛車を睨み、△4八歩から"と金"を作って攻め込みます。山口女流二段は角取りに▲7五銀と後手の歩頭に出ますが、中井女流六段は冷静に角を引き先手陣に利かせます。山口女流二段は▲4三歩と飛頭を叩いて竜を作りますが、中井女流六段は銀を取ってから手堅く自陣を守り、最後は即詰みに討ち取りました。
■四局目 西山朋佳女流三冠 〇 vs ● 渡部愛女流三段
両チームとも順番通り、リーダー同士の再戦となりました。チーム渡部がタイムアウトを要求し、和やかな雰囲気でリーダーを送り出し、チーム西山も相手が飛先の歩を伸ばしてくる対策を確認します。先手の渡部女流三段が飛先の歩を伸ばし、西山女流三冠はためらいなく三間飛車に振ります。西山女流三冠が美濃囲いに構えると、渡部女流三段は左美濃から銀冠に組み替えます。西山女流三冠が3筋の歩を伸ばして石田流に組むと、渡部女流三段は更に銀冠穴熊の堅陣を築きます。これを見た西山女流三冠が銀冠に組み替え5筋から仕掛けると、渡部女流三段は3筋から反発します。西山女流三冠が先に竜を作って角交換し、金銀両取りを掛けます。渡部女流三段は角を自陣に打って金を守りますが、西山女流三冠は銀を取らずに先手の角を攻めます。6分以上残している西山女流三冠に対し、渡部女流三段は残り20秒となり仕方なく桂を取って馬を作りますが、西山女流三冠は歩で先手の馬の利きを止めると鮮やかに即詰みに討ち取りました。
■五局目 山口恵梨子女流二段 ● vs 〇 中井広恵女流六段
予選突破を決めたチーム西山はじゃんけんで山口女流二段が出陣し、チーム渡部は相手を変えるつもりで順番を変えましたが、逆に三局目と同じ顔合わせになりました。チーム西山がタイムアウトを要求し、藤井猛監督がかなり具体的な作戦をアドバイスします。先手の山口女流二段は前局と同様中飛車に振りますが、美濃囲いに変えます。中井女流六段が左美濃から銀冠に組み替えると、山口女流二段も銀冠に組み替えます。中井女流六段が角を△8四角と転回すると、山口女流二段も▲4八角と転回して備えます。中井女流六段が△9三角と引いて8筋に狙いを定めると、山口女流二段は7筋の歩を伸ばして攻め合いを選択します。お互いに飛車を取り合い、角も取り合いますが、山口女流二段が▲4七桂と攻防に打つと、中井女流六段は強く△8五歩と玉頭戦を挑みます。中井女流六段が歩で玉を吊り上げ△6九竜と桂取りに潜ると、山口女流二段は▲3九角と自陣に打って守ります。激しい玉頭戦となりましたが、最後は中井女流六段が馬を攻防に利かせて寄せ切りました。
■六局目 上田初美女流三段 〇 vs ● 内山あや女流2級
両チームとも3人全員が2局目を戦うという形で、二局目と同じ顔合わせになりました。後手の上田女流四段は前局と同様、四間飛車に振り穴熊を目指します。内山女流2級が後手の囲いが完成する前に3筋から仕掛けると、上田女流四段は△3二金と上がって受け止め7筋から反発します。上田女流四段が馬を作って攻め込むと、内山女流2級は角で銀を食いちぎり飛車取りに▲6三銀と打つ勝負手を放ちます。上田女流四段は手抜いて△5七歩と垂らし、飛車を取らせる代わりに先手の守りの金を剥がします。最後は上田女流四段が△7六角から先手の竜を取り返し、即詰みに討ち取りました。
■七局目 上田初美女流三段 〇 vs ● 内山あや女流2級
なんと両チームが連投し、同じ顔合わせで3局目となりました。手番が変わりましたが、先手の上田女流四段はまたも四間飛車穴熊を選択します。内山女流2級が銀冠に構えて4筋から仕掛けると、上田女流四段はノータイムで5筋の歩を突き返します。上田女流四段が飛車を5筋に寄せて▲5五銀と前進すると、内山女流2級は角取りに△6五桂と跳ねます。上田女流四段が金取りに▲4四歩と叩いてから角をかわすと、内山女流2級は△8六飛と走ります。上田女流四段は銀取りに飛車を4筋に寄せますが、内山女流2級は強く△5六銀と前進します。上田女流四段は飛車で金を食いちぎって後手陣に殺到します。内山女流2級は角取りに△6九飛と打ち込んで反撃の機会を探りますが、上田女流四段は角も切って後手玉に迫り即詰みに討ち取りました。
■八局目 西山朋佳女流三冠 〇 vs ● 中井広恵女流六段
顔合わせを変えたい両チームの願いが叶い、本日初めての顔合わせになりました。チーム渡部がタイムアウトを要求し、両チームとも指し慣れた戦型で臨むことを確認します。後手の西山女流三冠が四間飛車に振り美濃囲いに構えると、中井女流六段は6筋の位を取って後手の動きを牽制します。飛車を2筋に振り直した西山女流三冠が△2四歩と仕掛けると、中井女流六段は▲2五歩と打って押し返します。西山女流三冠は3筋から仕掛けると、桂交換の後△3七歩と垂らして"と金"を作ります。中井女流六段は▲6三歩成で後手陣を乱し、▲3一角成と金を取って馬を作ります。ここで西山女流三冠は△5八桂成から先手陣に殺到し、中井女流六段も▲6三歩と後手陣に迫ります。西山女流三冠は竜を作って香を取り、△6五香と飛車取りに打って自陣への脅威を緩和してから一気に寄せ切りました。
【チーム西山 5勝 vs チーム渡部 3勝】
チーム西山はリーダーが終盤まで時間を充分残す安定感のある戦いぶりで、またも3戦3勝とチームを牽引しました。予選を通して6戦全勝は、Aリーグの里見女流五冠と並ぶトップの成績となります。上田女流四段は二局目に手痛い逆転負けを喫しましたが、その後2連勝してチームの勝利に大きく貢献しました。山口女流二段はこの試合では白星に恵まれませんでしたが、一生懸命指す姿が負けてもチームの団結力を高める不思議な存在感を感じさせます。Bリーグをトップ通過となり、準決勝ではチーム里見とのリーダー対決に注目が集まりますが、上田女流四段と山口女流二段の活躍にも期待したいと思います。
チーム渡部は予選通過のためには相手のリーダーを倒す必要があり、リーダー対決に命運を託しましたが2局とも圧倒されてしまいました。しかし第一試合で白星に恵まれなかった中井女流六段と内山女流2級が揃って白星を挙げ、笑顔を見せることができました。残念ながら予選敗退となってしまいましたが、特に内山女流2級には、男性のABEMAトーナメントでも出場した新鋭が公式戦でも活躍していますので、女流棋戦での飛躍を期待したいと思います。
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