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ABEMAトーナメント2023 予選Cリーグ第一試合

5月27日に、ABEMAトーナメント2023の予選Cリーグ第一試合が放映されました。若手実力者を獲得したチーム広瀬「はやぶさ」と、尊敬する先輩をメンバーに迎えたチーム菅井「関西最強」の顔合わせとなっています。
※本稿は収録当時の段位で記述させていただきます。

一局目:石井健太郎六段 vs 船江恒平六段

チーム広瀬は3大会ぶりの石井六段が先陣を切ります。先手の船江六段の誘導で相矢倉の将棋となります。船江六段が急戦調の駒組みから▲6六銀と出ると、石井六段は飛先の歩を交換します。船江六段が5筋の歩をぶつけると、石井六段は3分近い長考で同歩と応じます。船江六段は▲5五同銀とぶつけますが、石井六段は△6五銀とかわします。船江六段が2筋を継ぎ歩攻めして押さえ込み、4筋の歩をぶつけると、石井六段は△7六銀と出て攻め合います。船江六段は4筋の歩を取り込み、石井六段が金を引いて角道が止まると、▲6六角と出て受けます。石井六段は銀を引いて角に当て、4筋の歩を取り払って立て直しを図りますが、船江六段は歩頭に▲2三銀と打ち込みます。石井六段は構わず歩の技で先手陣を崩しにいきますが、船江六段は銀得の成果をあげ、▲5二銀から殺到して寄せ切りました。
チーム広瀬:0勝 - チーム菅井:1勝

二局目:近藤誠也七段 vs 西川和宏六段

チーム菅井は初出場の西川六段が出陣します。後手の西川六段が三間飛車に振り穴熊を目指すと、近藤七段も穴熊に潜ります。両者とも銀冠穴熊に組み替え、ジリジリした序盤戦が続きましたが、近藤七段が5筋の歩をぶつけて銀交換すると、西川六段は飛車を5筋に回して迎え撃ちます。角交換の後、近藤七段は2筋に"と金"を作って香を取りますが、西川六段は△5六飛と走って竜を作り、先手の飛車を押さえ込みます。西川六段が8筋の歩を取り込んで先手の穴熊に攻め掛かると、近藤七段は後手陣に角を打ち▲8七同角成と馬を作って引き付けます。西川六段も△3七角成と桂を取って馬を作りますが、近藤七段は後手の玉頭から逆襲します。時間に追われた西川六段は△6八銀から先手陣の金と飛車を剥がして攻め合いますが、時間に余裕のあった近藤七段は、落ち着いて▲8二"と"から寄せ切りました。
チーム広瀬:1勝 - チーム菅井:1勝

三局目:広瀬章人八段 vs 菅井竜也八段

両チームとも順番通り、早くもリーダー対決が実現しました。先手の菅井八段が四間飛車に振り穴熊を目指すと、広瀬八段も穴熊に潜ります。菅井八段は6筋の歩を伸ばして角道を開け、広瀬八段が△5三銀と引くと、角交換してから向かい飛車に振り直します。菅井八段が▲4八角と自陣に打って打開を図ると、広瀬八段も△7三角と自陣に放ち、飛車を4筋に転回します。菅井八段も飛車を4筋に回して受け、お互いに決め手を与えないまま残り時間が切迫します。菅井八段が▲5五銀と角にぶつけると、広瀬八段は角銀交換に応じ、飛車も交換します。両者とも飛車を相手陣に打ちおろし、菅井八段は▲2二角成と金を食いちぎって攻め込みます。広瀬八段は△2八角から馬を作って粘りますが、菅井八段は後手玉を穴熊から吊り上げ、竜取りに▲5四角と打ち、角で銀を食いちぎって寄せ切りました。
チーム広瀬:1勝 - チーム菅井:2勝

四局目:近藤誠也七段 vs 西川和宏六段

両チームとも順番を変え、二局目と同じ顔合わせとなりました。前局と同様に西川六段が三間飛車に振り、相穴熊の将棋となります。お互いに隙を作らないように陣形を組み替え、飛車の位置を変えて間合いを測ります。西川六段が角取りに△4五歩と伸ばし、桂で取らせて△3三桂とぶつけると、近藤七段は桂交換に応じ、角も交換して▲5五飛と走ります。西川六段は△6六角と打って飛車の捌きを狙いますが、近藤七段は▲5二飛成と竜を作り、▲4三角と飛車を追って馬を作ります。西川六段も竜を作りますが、近藤七段が先に後手陣に攻め掛かり、▲6二竜と金を食いちぎって畳み掛けます。西川六段は馬取りに△6一香と打ちますが、近藤七段は馬を取らせる代わりに▲8三歩成と銀を剥がし、▲8四歩と追撃して寄せ切りました。
チーム広瀬:2勝 - チーム菅井:2勝

五局目:石井健太郎六段 vs 船江恒平六段

「あれはないわ」と西川六段に奮起を促したチーム菅井は船江六段が出陣し、一局目と同じ顔合わせになりました。船江六段が前局と同じ矢倉を選択すると、石井六段は雁木に組んで変化します。船江六段が3筋の歩を突き捨てて▲3五銀と攻め掛かると、石井六段は△1五角と出て飛車を追い、銀取りに△3四歩と打って銀交換します。船江六段は▲3六飛と引いて角の捕獲を狙いますが、石井六段は飛車取りに△2七銀と打って飛車を追います。船江六段は▲3五銀と打って角と交換し、石井六段が飛角両取りに△4四銀と打つと、▲5二飛成と金を食いちぎります。石井六段が王手桂取りに△4九飛と打ち込み桂を取って竜を作ると、船江六段は金香両取りに▲2二角と打ち込み香を取って馬を作ります。石井六段は△8六桂から金桂交換し、△6九竜~△5八竜と金を取って攻め込みますが、時間に追われて馬取りに△5四銀と自陣に手を戻してから頭を抱えます。両チームの作戦会議室で「えーっ!」と叫び声が上がりますが後手玉は詰まず、石井六段は△8三金から即詰みに討ち取りました。
チーム広瀬:3勝 - チーム菅井:2勝

六局目:広瀬章人八段 vs 菅井竜也八段

両チームとも奇をてらわず、リーダー同士の再戦となりました。後手の菅井八段が四間飛車に振り、4筋の歩を伸ばして角交換すると、広瀬八段は桂で取って左美濃に構えます。菅井八段が穴熊を目指すと、広瀬八段は銀冠に組み替えて7筋と8筋の位を取ります。菅井八段が3筋の歩を突き捨ててから飛車を3筋に寄せると、広瀬八段は▲3四角と打って後手の捌きを防ぎます。菅井八段は6筋の歩を突き捨て、桂で取らせてから飛車を角と刺し違え、更に銀で桂を食いちぎります。広瀬八段は角桂両取りに▲4一飛と打ち込み、桂を取って竜を作りますが、菅井八段は△3五角打から銀取りに△6三桂と打って攻め合います。広瀬八段が▲6四銀とかわすと、菅井八段は△5七角成と銀を食いちぎり、更に△6六銀とぶつけて金と交換し先手陣を崩します。広瀬八段は▲7三桂から攻め掛かりますが、菅井八段は自陣に金駒を埋めて決め手を与えません。菅井八段が△7九飛成と竜を作って反撃すると、広瀬八段は上部脱出を図り、どちらが勝ってもおかしくない激闘となります。最後は菅井八段が2枚目の竜を作って自陣に引き付け、広瀬八段の攻撃を封じて逃げ切りました。
チーム広瀬:3勝 - チーム菅井:3勝

七局目:近藤誠也七段 vs 西川和宏六段

チーム菅井は相手を変えようとしましたが、読みが外れて三度同じ顔合わせとなりました。先手の西川六段が三間飛車に振り美濃囲いに構えると、近藤七段も左美濃に囲います。西川六段が7筋の位を取って高美濃に組み替えると、近藤七段は銀冠穴熊に組み替えます。西川六段が▲9七桂~▲8五桂と跳ね、銀冠への組み替えを目指すと、近藤七段は7筋の歩を突き捨て銀を繰り出します。西川六段が▲7三歩と叩いてから▲7六飛と飛車先突破を目指すと、近藤七段は飛車を5筋に回してから角をぶつけて交換します。西川六段が飛車に当てて▲5一角と打ち馬を作ると、近藤七段も△8八角と打って馬を作ります。両者秒読みに追われながら、西川六段は成桂と銀で後手陣に迫りますが、近藤七段は竜を作って先手玉に迫ります。ギリギリの寄せ合いとなりましたが、最後は西川六段が▲2五桂と歩頭桂を放って即詰みに討ち取りました。
チーム広瀬:3勝 - チーム菅井:4勝

八局目:広瀬章人八段 vs 船江恒平六段

後がなくなったチーム広瀬はリーダーが出陣します。後手の船江六段が飛先の歩を突かない工夫を見せますが、広瀬八段が角を交換して角換わりの将棋となります。船江六段は飛車を4筋に回して先手からの仕掛けを牽制し、8筋の歩を伸ばしてから飛車を8筋に戻します。広瀬八段が4筋から仕掛けると、船江六段は飛先の歩を交換します。広瀬八段が4筋の位を取って▲4六角と据えると、船江六段は9筋の歩を突き捨て△9七歩と垂らします。広瀬八段は3筋の歩をぶつけて桂交換し、▲2六香と打って後手陣に嫌味を付けますが、船江六段は丁寧に応じて決め手を与えません。船江六段が飛角両取りに△3八角と打ち込むと、広瀬八段は▲3五歩と取り込み金で取らせてから▲3九飛とかわし、作戦会議室では近藤七段が「逆転だよ!」と叫びます。船江六段は金を取って馬を作りますが、広瀬八段は飛車で金と桂を取って竜を作ります。最後は広瀬八段が竜を切って即詰みに討ち取りました。
チーム広瀬:4勝 - チーム菅井:4勝

九局目:石井健太郎六段 vs 菅井竜也八段

フルセットとなり、チーム菅井は温存したリーダーが出陣します。振り駒で後手となった菅井八段は、三間飛車に振ってから四間飛車に振り直します。石井六段が左美濃に囲うと、菅井八段も美濃囲いに構えます。菅井八段は飛車取りに△3五銀と出て、石井六段に飛車を引かせてから4筋の歩をぶつけます。石井六段は2筋と3筋の歩を突き捨ててから4筋の歩を取り、菅井八段が飛車を走ると、▲2二歩と桂頭を叩きます。菅井八段は構わず△4九飛成と竜を作り、石井六段が桂を取って"と金"を作ると、4筋に歩を垂らして"と金"作りを目指します。石井六段は角道を通して角交換し、竜取りに▲1六角と打ち、▲2四飛と走りますが、菅井八段は更に5筋に歩を垂らして2枚目の"と金"を作って銀を剥がします。石井六段も2枚の"と金"を作って後手玉に迫りましたが届かず、菅井八段は△7六竜と転回して即詰みに討ち取りました。
チーム広瀬:4勝 - チーム菅井:5勝

第一試合の結果

チーム菅井は、リーダーの菅井八段が破竹の3連勝でチームを牽引しました。船江六段も初戦に勝ってチームに勢いを付けました。初出場の西川六段は初めは固さが感じられ連敗スタートとなりましたが、リーダーから「ちゃんとやって」と激励され、貴重な1勝を挙げて貢献しました。文字にすると厳しい言葉でしたが、菅井八段の人柄とメンバーの日頃からの信頼関係があってこそのやり取りは、一人ひとりの実力以上のものを引き出す可能性を感じます。
チーム広瀬は、リーダーの広瀬八段が2度のリーダー対決に敗れる誤算で波に乗れませんでした。近藤七段は2勝してチームに貢献し、久し振りに登場した石井六段も1勝して緊張はほぐれたと思いますので、次戦でリーダーが本来の調子を取り戻せば、予選突破は十分可能なチーム力だと思います。

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