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「観る将」が観た第32期銀河戦決勝トーナメント2回戦 藤井竜王名人vs広瀬九段
12月3日に、銀河戦決勝トーナメント2回戦第1局が放映されました。1回戦で狩山四段を降した藤井聡太竜王名人と、杉本五段を破った広瀬章人九段の顔合わせとなっています。
両者は11月2日に行われたJT杯準決勝でも顔を合わせ、広瀬九段が3連覇を目指していた藤井JT杯を倒しています。本局はそれよりも前に収録されていたと思われます。
右玉対穴熊
振り駒で先手となった広瀬九段が角換わりに誘導し、藤井竜王名人は右玉に構えます。広瀬九段が▲8八玉と入城すると、藤井竜王名人は△6五歩と仕掛けます。広瀬九段が▲5六銀と腰掛けると、藤井竜王名人は歩を取り込んでから△6四歩と打ち直します。広瀬九段も▲6六歩と打ち直し、穴熊に潜って▲8八金と固めると、藤井竜王名人は玉を7筋から6筋に戻して手待ちします。
藤井竜王名人の馬
広瀬九段が飛先の歩を交換すると、藤井竜王名人は△5五銀と出て、再び6筋の歩をぶつけます。広瀬九段が▲5六金とぶつけると、藤井竜王名人は6筋の歩を取り込んでから金銀交換し、8筋の歩を突き捨ててから△6九角と打ち込みます。銀が上ずって囲いが金1枚となった広瀬九段は角取りに▲7八銀と打ち、藤井竜王名人が△3六角成と馬を作ると、取られそうな桂を▲4五桂と跳ねます。
広瀬九段が駒損を厭わぬ攻勢
藤井竜王名人は△4六馬と寄って飛車に当て、広瀬九段が▲2六飛と浮いて馬に当て返すと、△1九馬と香を取ります。広瀬九段は▲2八歩と打って馬の利きを止め、▲6五歩と合わせて銀を繰り出し、藤井竜王名人が△6四歩と応じると、同銀と食いちぎってから銀取りに▲6五歩と打ちます。藤井竜王名人は構わず桂取りに△1八馬と引き、広瀬九段が▲2七歩と馬の利きを遮ると、歩を取って銀交換に応じます。
王手金取りの桂
広瀬九段は金取りに▲5三銀と打ち込み、藤井竜王名人が△6一銀と打って金に紐を付けると、▲6四銀成と引いて桂に当てます。藤井竜王名人は手堅く更に△6三銀と打ち、広瀬九段が成銀で桂を取ると、△6四歩と打って成銀を追います。広瀬九段は強く成銀で歩を食いちぎってから▲6五歩と銀頭を叩き、藤井竜王名人が△7三銀とかわすと、王手金取りに▲6四桂と打って金桂交換し、▲6四金と打って絡みつきます。
藤井竜王名人の正確な受け
藤井竜王名人は△2八馬と寄って自陣に利かせ、広瀬九段が▲7三金と銀を剥がすと、同馬と応じます。広瀬九段は馬取りに▲6四銀と打ち、藤井竜王名人が△6三金と持ち駒を投じて補強すると、金銀交換してから再度馬取りに▲6四金と打ちます。藤井竜王名人は△4四銀と打って5三の地点に利かせつつ桂取りに打ち、広瀬九段が▲3三歩と金頭を叩いて桂交換してから▲4五桂と打ち直すと、再度△4四銀と上がって催促します。
待望の反撃
広瀬九段は再度▲3三歩と金頭を叩き、藤井竜王名人が△3一金とかわすと、▲6三金と馬と交換して後手の銀頭に▲6四角と打って金に当てます。藤井竜王名人は角銀交換に応じてから△5一桂と玉頭を補強し、広瀬九段が▲3二歩成と"と金"を作って金に当てると、構わず△7九銀と金取りに打って反撃に転じます。
飛香の二段ロケット
広瀬九段は"と金"で金を取り、藤井竜王名人が△8三香と二段ロケットを設置して詰めろを掛けると、▲7七銀打と歩を支えて逃れます。藤井竜王名人は△8六香と走って銀で取らせてから△6八金と詰めろを続け、広瀬九段が▲7七角と打って逃れると、△5五角と合わせます。
金3枚を並べた王手
広瀬九段は角を交換してから▲6三香と王手し、藤井竜王名人が玉を7筋に寄ってかわすと、7筋の歩をぶつけて飛車の横利きで8筋の銀を支えます。藤井竜王名人は△8七歩と金頭を叩いて銀で取らせ、△8八銀成~△7九角と連続王手で先手玉を穴熊から追い出し、△6七金打~△6六金打と3枚の金を縦に並べる珍しい形で追い詰めます。先手玉には即詰みが生じており、広瀬九段は数手指し続けましたが、藤井竜王名人が△8八角成と王手したのを見て投了を告げました。
まとめ
本局は藤井竜王名人が右玉を採用し、広瀬九段は穴熊で対抗しました。藤井竜王名人が仕掛けて馬を作ると、広瀬九段は自玉の遠さを頼りに駒損を厭わず攻めを繋いで後手玉に迫りました。素人目には広瀬九段の攻めが決まるかと思われましたが、藤井竜王名人は馬を自陣に引き付けて正確に受け続け、反撃に転ずると鮮やかに寄せ切りました。
2回戦を突破した藤井竜王名人は、次の準決勝では佐々木勇気八段と梶浦宏孝七段の勝者と顔を合わせます。堅実な受けを披露した藤井竜王名人が、次局ではどのような将棋を魅せてくれるのか楽しみにしたいと思います。