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「観る将」が観た第49期棋王戦五番勝負第一局

2月4日、富山県魚津市の新川文化ホールで第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負が開幕しました。全八冠を有する藤井聡太棋王に挑むのは、秋の竜王戦七番勝負で藤井竜王に敗れ、早くもリベンジの機会を得た伊藤匠七段です。

藤井棋王は、前期に10連覇中だった渡辺明棋王(当時)に挑戦し、3勝1敗で降して六冠目のタイトルを奪取しています。伊藤七段は今期、挑戦者決定トーナメントの準決勝で敗れたものの、敗者復活戦を勝ち上がり、挑戦者決定二番勝負で広瀬九段に2連勝して挑戦権を獲得しています。

両者の対戦成績は、藤井棋王が6勝0敗と圧倒しています。同学年の伊藤七段には、自身のタイトル獲得のためにも、今後何度も番勝負で顔を合わせるであろう藤井棋王と対等に戦うことが期待されます。本シリーズがその幕開けとなるのか、将棋界が固唾を飲んで見守る注目の顔合わせとなりました。

本シリーズは第一局の富山県に続き、第二局は石川県、第三局も新潟県での開催が予定されています。前夜祭では、藤井棋王は「大変な状況の中でこうして対局ができることを本当にありがたく思います」、伊藤七段は「棋士としていい将棋を指して皆さまを元気づけることができれば」と挨拶しています。


戦型は角換わり相腰掛け銀

広々とした対局室に伊藤七段が紺色の着物と青灰色の袴に白い羽織で入室すると、藤井棋王は亜麻色の着物と灰色の袴に青灰色の羽織で入室します。振り駒で先手となった藤井棋王が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となります。伊藤七段は飛車を4筋に回して備えますが、藤井棋王は4筋の歩をぶつけ、2筋と7筋の歩を突き捨ててから4筋の歩を取り込みます。

伊藤七段の端攻め

伊藤七段は自陣に角を打って桂頭を守り、藤井棋王が7筋に歩を合わせると、飛車で4筋の歩を取り返します。藤井棋王は金を5筋に寄せてかわし、伊藤七段が飛車を引くと、7筋の歩を取り込みます。伊藤七段は9筋の歩を突き捨てて歩を垂らし、藤井棋王が玉で取ると、3筋の歩をぶつけます。

早くも激しい戦いへ

藤井棋王は7筋に角を打ってぶつけ、伊藤七段が3筋の歩を取り込むと、桂を4筋に跳ねてかわします。伊藤七段は9筋の香を走って王手し、藤井棋王が歩で防ぐと、香で取り込んで先手玉を吊り上げます。早くも激しい戦いに突入しましたが、両者とも研究の範囲内なのか、あまり時間を使わずに指し手を進めています。

飛車と角の取り合い

伊藤七段は銀で4筋の桂を取り、藤井棋王が角を交換してから9筋に歩を垂らすと、銀で5筋の銀を取り込みます。藤井棋王は飛金両取りに角を打ち、伊藤七段が飛車を9筋にかわして先手の玉頭を睨むと、飛車取りに香を打ちます。伊藤七段が飛車を取らせる代わりに金を引いて角を取り返すと、藤井棋王は5筋の銀を取ります。駒割りは飛香と角桂の交換ですが、AIの評価値は藤井棋王の57%とわずかに傾いています。

伊藤七段の馬

伊藤七段が飛車取りに角を打ち込むと、藤井棋王は初めて手を止め、52分の長考で7筋にかわします。伊藤七段が馬を作ると、藤井棋王は金を馬に当てます。次の86手目を伊藤七段が20分程考えたところで昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は藤井棋王が2時間38分、伊藤七段が3時間16分となっています。

"と金"の作り合い

伊藤七段が昼休を挟む24分の熟考で馬を自陣に引き付けると、藤井棋王は桂取りに7筋の歩を伸ばします。伊藤七段は3筋に"と金"を作り、藤井棋王が7筋の桂を取って"と金"を作ると、玉を2筋に上がって相入玉を目指します。藤井棋王が飛車を後手陣に打ち込むと、伊藤七段は銀を3筋に上がって自玉の脱出路を作ります。

藤井棋王の竜

藤井棋王は9筋に2枚目の"と金"を作り、伊藤七段が3筋に角を打つと、玉を前進して入玉を目指します。伊藤七段が4筋に歩を垂らすと、藤井棋王は後手の馬の利きに金を差し出します。ハッとする一手に伊藤七段は40分熟考して金を取り、藤井棋王が5筋の金を取って竜を作ると、馬を引き戻して竜に当てます。

持将棋が成立

藤井棋王は歩を取って竜をかわし、伊藤七段が4筋に2枚目の"と金"を作ると、7筋の銀を前進します。伊藤七段が竜銀両取りに馬を引くと、藤井棋王は竜と馬の交換に応じてから銀を8筋に上がります。伊藤七段が玉を3筋から上部脱出を図ると、藤井棋王は狙われていた飛車の縦利きを通して脱出します。両者とも淡々と入玉を果たし、17時30分過ぎに持将棋が成立しました。

まとめ

本局は先手となった藤井棋王が角換わりに誘導し、端攻めで先手玉を不安定な状態に追い込んだ伊藤七段は、自玉の上部に脱出路を築き、相入玉を視野に入れた将棋となりました。伊藤七段としては、驚異的な勝率を誇る藤井棋王の先手番を持将棋に持ち込んだことで、次局以降に余裕をもって臨めるように思います。

棋王戦コナミグループ杯は、共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟が主催しています。
本稿は「棋王戦の棋譜利用ガイドライン」(https://www.shogi.or.jp/kifuguideline/terms.html#kiou) に従い、インターネットでの棋譜の利用はすべて「営利を目的とする」ものとみなす(有償)と通知がありましたので、棋譜の利用は断念しています。

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