「観る将」が観た第32期銀河戦決勝トーナメント決勝 藤井竜王名人vs丸山銀河
12月24日に、銀河戦決勝トーナメント決勝が放映されました。前期も決勝を戦った藤井聡太竜王名人と丸山忠久銀河の顔合わせとなっています。
藤井竜王名人は1回戦から狩山四段、広瀬九段、佐々木(勇)八段を降して、3年連続で決勝の舞台に登場です。前期敗れた相手に何としても雪辱を果たしたいところです。
丸山銀河は前期に銀河戦初優勝を果たし、今年度も達人戦に初優勝するなど好調を維持しています。今期は1回戦から西尾七段、阿久津八段、森内九段を破り、2期連続優勝を目指します。
丸山銀河の一手損角換わり
振り駒で先手となった藤井竜王名人が角換わりに誘導し、丸山銀河は得意の一手損角換わりで応じます。相腰掛け銀の将棋となり、手待ちが続いた後、藤井竜王名人は8筋に入城してから▲4五桂と仕掛け、丸山銀河が△4四銀と上がってかわすと、飛先の歩を交換します。
藤井竜王名人が飛車を6筋に転回
丸山銀河は6筋の歩を突き捨ててから7筋の歩をぶつけ、藤井竜王名人が2筋の桂頭を叩くと、同金と応じます。藤井竜王名人は6筋の歩を伸ばし、丸山銀河が8筋を継ぎ歩攻めすると、飛車を6筋に回します。丸山銀河は△8六歩と取り込み、藤井竜王名人が▲8二歩と飛頭を叩くと、7筋に寄ってかわします。
丸山銀河の好所の角と藤井竜王名人の竜
藤井竜王名人は7筋の歩を取り込み、丸山銀河が△4五銀直と桂を食いちぎり、△3三角と据えて先手玉を間接的に睨むと、6筋の歩を成り捨てて金で取らせ、▲5五銀打とぶつけて角の利きを止めます。丸山銀河は△7六歩と銀頭を叩き、藤井竜王名人が▲8六銀とかわすと、△5五銀と銀を取ります。藤井竜王名人は▲6三飛成と金を取って竜を作り、丸山銀河が△5六銀と銀をもう1枚取りつつ角の利きを通して王手すると、▲4四金と後手の歩頭に打って角の利きを止めます。
角金交換から竜飛交換
丸山銀河が△5二銀と打って竜を追うと、藤井竜王名人は角金交換してから竜飛交換に応じ、▲7四角と据えて後手陣を睨みます。丸山銀河は△5二銀打と補強し、藤井竜王名人が▲5六歩と銀を取ると、△6九飛と打ちこんで攻め合います。激しい駒の取り合いとなりましたが、駒割りは先手が角桂交換の駒得で、形勢もわずかに藤井竜王名人が指し易くなってきたようです。
激しい攻め合い
藤井竜王名人は▲6二歩と銀頭を叩き、丸山銀河が△6六桂と打って詰めろを掛けると、▲8七銀と打って逃れます。丸山銀河は△6二銀と歩を取り、藤井竜王名人が4筋の歩をぶつけると、△6三歩と打って後手の角の利きを止めます。AIの評価値はいったん丸山銀河に振れますが、藤井竜王名人が4筋の歩を取り込んでから▲7九金と飛車に当て、丸山銀河が△5九飛成とかわしつつ竜を作ると、ほぼ互角に戻っています。
藤井竜王名人の攻防の角
藤井竜王名人は▲4九飛とぶつけて竜と交換し、丸山銀河が△8五歩と銀頭を叩くと、▲4八飛と王手しつつ自陣の守りにも利かせます。丸山銀河は△4五飛と合わせ、藤井竜王名人が▲8五銀と歩を食いちぎると、飛車を交換して△5九飛と打ち直します。藤井竜王名人は6筋に底歩を打って補強し、丸山銀河が△8五桂と銀桂交換してから△8六歩と銀頭を叩くと、▲7六角と王手しつつ玉頭の守りに利かせます。AIの評価値は再び藤井竜王名人に傾いています。
丸山銀河が王手角取りで逆襲
丸山銀河は5筋の歩を突いて角の利きを止め、藤井竜王名人が▲8六銀と歩を取ると、△5六飛成と竜を作ります。藤井竜王名人は▲4四歩と叩いて玉を引かせ、▲5三歩と銀頭を叩き、丸山銀河が同銀右と応じると、▲7一飛と打ち込みます。丸山銀河は△7八桂成と王手しつつ竜の利きを角に当て、藤井竜王名人が同金と応じると、△7六竜と角を取ります。両者とも一歩も引かずに攻め合い、AIの評価値は再びほぼ互角に戻っています。
丸山銀河が角切りの強襲
藤井竜王名人は▲7七銀と引いて竜に当て、丸山銀河が△8五竜とかわしつつ王手すると、玉を7筋に引いて逃れます。丸山銀河は4筋に底歩を打って補強し、藤井竜王名人が▲9一飛成と香を取って竜を作ると、△8八歩と桂頭を叩いて銀で取らせてから、△4五角と打って先手陣を睨みます。藤井銀河は▲5七金と上がって角に当てますが、丸山銀河は△7八角成と金を食いちぎり、△7六銀と打って先手玉の上部を押さえ込みます。AIの評価値は丸山銀河に大きく傾きます。
丸山銀河の玉頭攻め
藤井竜王名人は▲9八角と打って玉頭を補強し、丸山銀河が金取りに△4五桂と打つと、▲6六金とかわします。丸山銀河は△6五金とぶつけて金を上ずらせ、△6七金と王手して先手玉を下段に落としてから△6五銀と金を取り返して詰めろを掛けます。藤井竜王名人が▲8七銀と立って受けると、丸山銀河は△7六銀とぶつけて追い詰めます。藤井竜王名人は▲5一角と王手して形を作り、丸山銀河が△4三玉とかわすと、無念の投了を告げました。
まとめ
本局は丸山銀河が得意の一手損角換わりを採用し、藤井竜王名人の仕掛けから激しく駒を取り合う乱戦となりました。両者秒読みに追われる中、形勢も大きく揺れ動く大熱戦となりましたが、最後は丸山銀河が角切りからの玉頭攻めで寄せ切りました。
丸山銀河は2年続けて決勝で藤井竜王名人を倒し、羽生九段以来2人目の銀河戦連覇を果たしました。対局後のインタビューでは「出来過ぎで、結果が偶然でた感じ」と謙虚に話し、藤井竜王名人との対戦成績が3勝1敗となったことについても「局数も少ないし、早指し戦は時の運もある。自分としてはなんとも思っていない」と受け流していますが、大変な偉業であることに間違いありません。強豪ひしめく羽生世代の中で、50歳を過ぎてひときわ輝きを放つ丸山銀河に、大きな拍手を贈りたいと思います。