第5回ABEMAトーナメント 本戦2回戦第一試合
8月13日に、ABEMAトーナメントの本戦2回戦第一試合が行われました。Aリーグ1位のチーム永瀬「川崎家」とCリーグ1位のチーム広瀬「国士無双」の顔合わせとなっています。
一局目:斎藤明日斗五段 vs 三枚堂達也七段
チーム広瀬は「自分を信じて」という言葉を残して三枚堂七段が出陣します。先手の斎藤五段が相掛かりに誘導し飛先の歩を交換すると、三枚堂七段も飛先の歩を交換して五段目に引きます。斎藤五段は角を飛び出し桂を跳ねて後手の飛車を追い返すと、角を交換してから9筋を端攻めします。斎藤五段は飛車をぶつけますが、三枚堂七段は歩を打って飛車交換を拒否します。三枚堂七段は飛車取りに△6四角と打って先手の飛車を寄らせますが、斎藤五段は▲9二歩と垂らして飛車で取らせ、桂を跳ねて銀桂交換に成功します。持ち時間を5分以上に増やしている斎藤五段に対し、三枚堂七段は残り1分半程となりましたが、先手の歩切れを突いて9筋の歩を伸ばします。斎藤五段は1分程考えて角取りに▲6六銀と打ちますが、三枚堂七段は構わず9筋の歩を伸ばします。斎藤五段は更に2分近く考えて角銀交換し、飛車取りに▲5六角と打ちます。三枚堂七段は飛車を7筋にかわしてから9筋の歩を成り込み、更に香取りに歩を打って2枚目の"と金"を作ります。三枚堂七段は飛先の金を△6五金とタダ捨てして△7八飛成と竜を作り、△3九銀と打って先手玉の右辺への退路を断ちます。斎藤五段は時間に追われながら5筋の歩を突いて上部への脱出を図りますが、三枚堂七段が△5七角と間接王手飛車を掛けると、無念の投了となりました。
チーム永瀬:0勝 - チーム広瀬:1勝
二局目:永瀬拓矢王座 vs 青嶋未来六段
先行されたチーム永瀬は、時間ギリギリまで悩んだ末リーダーが出陣します。先手の青嶋六段が作戦会議での宣言通り居飛車を採用し雁木に構えると、永瀬王座は右銀を前進して飛車先突破を図ります。青嶋六段は右玉に構えますが、永瀬王座は銀を交換して金の両取りに△6九銀と打ち込みます。永瀬王座が銀冠の形を作ると、青嶋六段は▲8五桂と跳ね金で桂を支えて▲8六角と飛び出します。青嶋六段は角取りに▲7五銀と打って追撃し、▲5三銀成と後手陣に攻め込みます。永瀬王座は△2五桂と跳ねて反撃しますが、青嶋六段は慎重に1筋の歩を突いて後手の角の活用を阻みます。永瀬王座は角を馬にぶつけて交換しますが、青嶋六段は飛車取りに▲7五飛と打ち、5三の地点で清算して後手玉に迫ります。永瀬王座は必死に粘りましたが、青嶋六段は▲1五桂から銀を剥がし、歩で金を吊り上げて寄せ切りました。
チーム永瀬:0勝 - チーム広瀬:2勝
三局目:増田康宏六段 vs 広瀬章人八段
2連敗スタートとなったチーム永瀬ですが、和やかな雰囲気で増田六段を送り出します。後手の広瀬八段が角道を止めて雁木に構えると、増田六段は左美濃に構えます。広瀬八段が9筋の歩を突き捨て7筋の歩をぶつけると、増田六段は9筋の歩を進めます。広瀬八段は7筋の歩を取り込みますが、増田六段は構わず▲9三歩成と飛び込みます。広瀬八段は飛車を5筋に回し、△8八歩と叩いて角で取らせてから銀取りに△5五歩と突きます。増田六段が▲4五銀とぶつけて銀交換すると、広瀬八段は△4四歩と桂を取りにいきます。増田六段は桂を取らせる代わりに9筋の香を取り、▲3四香と打って金を吊り上げて飛金両取りに▲4三銀と引きます。広瀬八段は△7七桂と打って桂交換し、銀取りに△6五桂と跳ねますが、増田六段は飛銀交換して▲8一飛と打ち込み竜を作ります。広瀬八段は桂香で先手玉を攻めますが、増田六段は▲5四桂と打って後手玉に迫り、即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム広瀬:2勝
四局目:増田康宏六段 vs 三枚堂達也七段
チーム永瀬は、リーダーが「お願いします」と増田六段を連投します。先手の三枚堂七段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換します。三枚堂七段が飛車を五段目に引き▲8五歩と飛頭を叩くと、増田六段は飛車を7筋に寄せて先手の歩を狙います。三枚堂七段は7筋の歩も突いて後手の飛車を追ってから角交換しますが、増田六段は△3六歩と打って桂を取ります。三枚堂七段が飛車取りに▲2六角と打ちますが、増田六段も飛車取りに△4四桂と打ち、お互いに飛車を取り合います。増田六段が先に△2九飛と打ち込み竜を作りますが、三枚堂七段は左桂を▲6五桂と跳ねた後、銀取りに▲8四桂と打ちます。増田六段が銀取りに△3九竜と寄り△6九角と王手すると、三枚堂七段は▲5三玉とかわしてから7三の地点で清算し▲8二飛と王手で打ち込みます。増田六段は△5四桂と打って先手玉の上部脱出を阻止し、△3六竜と攻め駒を補充して寄せに入ります。三枚堂七段も竜で後手玉を追いますが届かず、最後は増田六段が金のタダ捨てで鮮やかな即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム広瀬:2勝
五局目:永瀬拓矢王座 vs 青嶋未来六段
チーム広瀬はリーダーが「次はエースで」と青嶋六段を送り出し、二局目と同じ顔合わせになりました。後手の青嶋六段が三間飛車に振ると、永瀬王座は穴熊に囲います。青嶋六段はミレニアムに囲い、お互いに陣形を固め合います。じっくりした駒組みが続きましたが、青嶋六段は飛車を2筋に振り直し、5筋の歩を突き捨ててから8筋の歩をぶつけます。永瀬王座は5筋の歩を伸ばしますが、青嶋六段は構わず9筋の歩も突き捨て7筋の歩をぶつけます。永瀬王座は5筋の歩を成り捨ててから飛車を5筋に回しますが、青嶋六段が△2六角と飛び出して桂を狙うと、飛車を3筋に戻して桂を支えます。青嶋六段が8筋の歩を取り込むと、永瀬王座は9筋の歩を前進し金を援軍に送ります。白熱の玉頭戦となりましたが、青嶋六段が飛車を守りに利かすと、永瀬王座は金を打って飛車と交換し▲5二飛と打ち込み竜を作ります。青嶋六段は△8八桂成から王手を続けますが届かず、永瀬王座が寄せ切りました。
チーム永瀬:3勝 - チーム広瀬:2勝
六局目:斎藤明日斗五段 vs 広瀬章人八段
リードを許したチーム広瀬はリーダーが出陣します。後手の斎藤五段が横歩取りに誘いましたが、広瀬八段は角道を止めて相雁木の将棋となります。広瀬八段は飛車を3筋に寄せて歩を交換し、▲3四歩と打って拠点を作ります。斎藤五段が8筋の歩を突き捨て、角で取らせて6筋の歩をぶつけると、広瀬八段は▲2四歩~▲2三歩と叩いて金を上ずらせます。広瀬八段が銀をぶつけて交換し桂取りに▲6二銀と打ち込むと、斎藤五段は飛車を浮いて桂を支えます。斎藤五段は△6六歩と銀頭を叩いて銀を浮き駒にしてから角銀両取りに△6三飛と回りますが、広瀬八段は▲9一角成と香を取り、銀を取らせて飛車取りに▲6四香と打ちます。広瀬六段は▲6三香成~▲7三馬と飛車を追い、▲6五桂と攻め駒を足しますが、斎藤五段も時間に追われながら自陣に銀を投じて5三の地点を守ります。広瀬八段は▲4五馬と引いて後手の玉頭から攻め掛かり、馬で銀を食いちぎって寄せきりました。
チーム永瀬:3勝 - チーム広瀬:3勝
七局目:永瀬拓矢王座 vs 三枚堂達也七段
タイスコアとなり、チーム永瀬はリーダーが出陣します。後手の三枚堂七段が横歩取りに誘導し、永瀬王座は横歩を取ります。三枚堂七段が飛車先の歩を交換して五段目に引き△2五歩と飛頭を叩くと、永瀬王座は▲5六飛と横にかわします。永瀬王座が角を交換してから▲7七桂と跳ねて後手の飛車を追い返すと、三枚堂七段は5筋の位を取ってから7筋の歩をぶつけます。永瀬王座が▲2七角と打って後手陣を睨むと、三枚堂七段は飛車を5筋に回します。永瀬王座が▲4五桂と跳ねると、三枚堂七段は△2五歩と打って飛車を追ってから桂交換に応じます。三枚堂七段は△4四歩と突いて角も追い、飛車取りに△7四桂と打ちます。永瀬王座は▲4五角と飛び出し▲2四桂と銀を追ってから▲2三角成と馬を作りますが、三枚堂七段は玉を早逃げし、5筋の歩を突き捨てて飛車の横利きを止めてから王手金取りに△6六桂と跳ねて金を取ります。永瀬王座が飛車取りに▲2五馬と引くと、三枚堂七段は飛車を8筋に回して竜を作ります。永瀬王座は▲6六桂~▲7四金と後手玉に迫りますが、三枚堂七段も歩で先手陣を崩します。両者時間に追われる中、永瀬王座は懸命に後手玉に迫りましたが届かず、三枚堂七段が逃げ切りました。
チーム永瀬:3勝 - チーム広瀬:4勝
八局目:増田康宏六段 vs 広瀬章人八段
カド番となったチーム永瀬はエース増田六段が出陣し、三局目と同じ顔合わせになりました。先手の広瀬八段が作戦会議での宣言通り矢倉を選択すると、増田六段は急戦調の駒組みを進めます。広瀬八段が飛先の歩を交換して下段に引くと、増田六段は6筋の位を取ります。広瀬八段が▲7九角~5七角と角の活用を図ると、増田六段も角を引き△7五歩から飛先の歩を交換して銀をぶつけます。広瀬八段が角のラインを活かして▲8四歩と飛車の利きを遮ると、増田六段は銀を引いて歩を取りにいきます。広瀬八段は5筋の歩を取り込むと、増田六段は再度銀を前進して8筋突破を狙います。広瀬八段が3筋の歩をぶつけると、増田六段は7筋の歩をぶつけて角を交換し△7六歩と打って銀を引かせます。増田六段が△3三角と打ってから飛車を浮くと、広瀬八段は5筋の歩を成り捨ててから▲3四歩と取り込み、飛車で取らせて▲8二角と打ち込みます。広瀬八段は香を取って馬を作り、▲5四香と打って金を剥がしますが、増田六段も△4五桂と跳ねて先手の玉頭に攻め掛かります。広瀬八段が飛角両取りに▲5五金と打つと、増田六段は△5七桂成と銀を剥がしてから飛車で金を食いちぎり、再度金取りに△4五桂と打ちます。広瀬八段は▲9二飛と王手で打ち込みますが、増田六段は香で受けると、△5七桂成と金を剥がしてから先手玉に迫り、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:4勝 - チーム広瀬:4勝
九局目:斎藤明日斗五段 vs 青嶋未来六段
フルセットにもつれ込み、「ここで力出せなかったら今日ここにいる意味がない」と悲壮感漂う斎藤五段と「大舞台で指せるのが楽しみ」と言う青嶋六段が出陣します。振り駒で先手となった青嶋六段が四間飛車に振り穴熊に囲うと、斎藤五段は角を交換して左美濃に囲います。青嶋六段は向かい飛車に振り直し、斎藤五段が3筋の歩をぶつけると、5筋の歩を突き捨ててから3筋の歩を取ります。斎藤五段は8筋の歩を突き捨ててから飛車取りに△7九角と打ち、青島六段が飛車を5筋にかわすと△3五角成と馬を作ります。青嶋六段が銀をぶつけて交換すると、斎藤五段は馬を飛車にぶつけて交換します。青嶋六段は▲5五同角と飛車に当てますが、斎藤五段は角取りに△6四銀と打ちます。斎藤五段が△6九飛と打ち込むと、青嶋六段も▲4四銀と打って攻め合います。斎藤五段は角取りに△6七飛成と竜を作りますが、青嶋六段は飛車取りに▲7一角と打ち、▲4四角成と馬を作って角に紐を付けます。斎藤五段は馬と角のラインを遮断して馬を取り、青嶋六段は角も切って後手玉に迫ります。斎藤五段は大駒4枚を持っていますが、青嶋六段も金銀6枚を持っています。青嶋六段は時間に追われる中で小駒の攻めを継続しましたが、後手の玉頭でお互いに銀を打ち合い千日手が成立しました。
九局目:斎藤明日斗五段 vs 青嶋未来六段(千日手指し直し)
先手の斎藤五段は50秒、青嶋六段はなんと6秒という持ち時間での指し直しとなっています。青嶋六段は三間飛車に振り美濃囲いに構えて持ち時間を1分強に回復します。斎藤五段は2筋の歩を突き捨て、角道を開けてから▲2二歩と叩きます。青嶋六段は桂を見捨てて角交換し、4筋突破を狙います。斎藤五段は▲3一角と打って飛車と交換しますが、青嶋六段も桂取りに△4七角と打ち込みます。斎藤五段は銀で桂に紐を付け金取りに▲4四飛と打ちますが、青嶋六段は構わず銀で桂を取ります。斎藤五段は金を取って竜を作り、早くも後手陣に攻め込みます。青嶋六段は△7五桂と先手陣に嫌味を付け、△4三角と攻防に打ちますが、斎藤五段は落ち着いて後手玉を受けなしに追い込み逃げ切りました。
チーム永瀬:5勝 - チーム広瀬:4勝
2回戦第一試合の結果
チーム永瀬はリーダーが1勝2敗と負け越して苦しい展開となりましたが、増田六段が予選5戦無敗の好調を維持して、この試合でも3連勝してチームの勝利に大きく貢献しました。斎藤五段も決着局の苦しい将棋を千日手で逃れ、指し直し局では会心の将棋で殊勲の星を挙げました。終局直後には涙を見せた斎藤五段が呪縛を解き放って活躍すれば、このチームが優勝に向けて勝ち進んでいくことを十分期待できると思います。
チーム広瀬もリーダーが1勝2敗と苦しみ、チームを勝利に導くことができませんでした。青嶋六段と三枚堂七段が、それぞれ相手のリーダーを破る活躍を見せただけに、ここでの敗退は残念に思います。この大会で得た自信を力にして、今後の公式戦での活躍を期待したいと思います。
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