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第29期銀河戦決勝トーナメント2回戦 藤井銀河vs佐々木(大)五段

12月9日に、銀河戦決勝トーナメント2回戦第4局が放映されました。銀河戦は持ち時間各15分、切れたら1手30秒未満(1分の考慮時間10回)という早指し棋戦で、8つのブロックに分かれて本戦トーナメントを行い、最終勝ち残り者と最多勝ち抜き者の2名が決勝トーナメントに進出しています。この日は前期優勝者であり1回戦で斎藤明日斗四段を降した藤井聡太銀河と、佐藤康光九段を降した佐々木大地五段の顔合わせとなりました。

佐々木五段は過去の対戦成績で2勝1敗とリードしており、藤井銀河が負け越している数少ない棋士の一人です。藤井銀河が勝った一局も、佐々木五段が優勢の局面を築きながら最終盤の大逆転で決着しており、本局も熱戦になることが期待されます。

振り駒で先手となった藤井銀河が相手の得意とする相掛かりに誘導し、佐々木五段はもちろん受けて立ちました。藤井銀河が先に飛先の歩を交換して▲3五歩と突き、後手の角道を開けさせない工夫を見せます。佐々木五段は6筋の位を取り、△6五角と要所に据えて対抗します。千日手の筋が現れましたが、藤井銀河が打開すると、佐々木五段は角を交換して馬を作ります。

藤井銀河は1筋から反撃し、▲2五桂と跳ねて後手の香を吊り上げてから3筋に戦火を拡げます。佐々木五段は△2四歩と金を上がるスペースを作って受けますが、藤井銀河は▲1三歩と後手玉に迫ります。佐々木五段は少ない持ち時間を投入して△1三同桂と取りますが、藤井銀河は▲2四飛と王手を掛け、飛銀桂で攻撃をつなぎます。佐々木五段は飛車を3筋に回して△3七桂不成から馬桂と銀2枚を交換して清算しようとしますが、藤井銀河は取れる馬を取らずに飛車の利きを止めて金取りに▲3五桂と打ち、飛車を3筋に寄せて玉頭攻めを継続します。形勢は藤井銀河に傾いてきたようです。

佐々木五段は△3八銀と飛取りに打ちますが、藤井銀河は▲5八金と後手の馬に当てて寄ります。この金はタダで取れますが、取ると先手は飛車で銀を取り返して3筋の利きが復活します。佐々木五段は△5六馬と引きますが、藤井銀河は飛車を5筋に逃げてから1筋で銀を犠牲に香を取り、▲3六香と打って再び間接的に飛車を睨みます。

佐々木五段はここで15手前の金取りをかわすと、飛車を7筋に回して先手の馬を追います。藤井銀河は馬で銀を食いちぎり▲2三銀と詰めろで打ち込みます。佐々木五段は△1五歩と香を取って詰めろを逃れますが、藤井銀河は▲3五銀と金を取って詰めろを続けます。佐々木五段は△2一香と打って詰めろを逃れますが、藤井銀河は構わず▲2三桂成と飛び込み桂香交換してから▲2九香と成銀取りに打ちます。佐々木五段は辛抱強く△2二桂と打って玉頭を守り、形勢は混沌としてきたようです。

ここで藤井銀河はじっと▲4七金と寄って後手玉の逃走ルートに圧力を掛けます。佐々木五段は飛香両取りに△2六角と打ちますが、藤井銀河は▲2三銀成と後手玉を2筋に呼び出し、▲3六金と角取りに打って香に紐を付けつつ後手玉の上部脱出を防ぎます。佐々木五段は角を逃げて△1七角成と馬を作りますが、藤井銀河は▲1九飛と寄り馬との交換を迫ります。後手玉は▲3二角と打たれると寄り形になるので、佐々木五段は△4一銀と打って粘りますが、藤井銀河が▲4二銀と打つと凌ぎきれないと見て投了となりました。

本局は佐々木五段が好形を築き、千日手模様から馬を作って駒組みは成功したかに見えました。藤井銀河は機敏に端から反撃し、優勢になった局面もありましたが、佐々木五段の粘り強い受けに再び形勢は互角に戻されました。藤井銀河がいったん自玉の守りに就けた右銀を5筋に戻して攻撃を継続し、更に4筋に寄せて後手玉の退路を断つのに一役買わせた構想が良かったようで、最後は鮮やかに攻め切りました。

藤井銀河は準決勝に進出し、渡辺名人と顔を合わせることとなりました。収録はかなり前に行われているようですが、1月から王将戦七番勝負を戦うことが決まっている両者が、どのような将棋を魅せてくれるのか楽しみです。

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