強くなりたいなら、負けないと強くならない

半年程前に将棋を卒業した長女が、最近になってまた1日1局夫と将棋を指している。

少し前にじぃじと初めて本格的に将棋を指して、負けたのがキッカケだった。
親に散々下駄をはかされまくった長女は、まさかじぃじに負かされるなんて思っていない。青天の霹靂。当然大号泣し、笑顔を取り戻すまで一悶着あった。
それから打倒・じぃじを胸に、将棋を指している。

半年指してないとやっぱり弱くなっていたけど、少し指せば勘を取り戻して来た。
夫いわく、教室の25級の子よりは強くて23級の子よりは弱いらしい。私は10級より下の刻み方がよく分からない。その微妙な差はどこで分かるのだろう。

25級の子がいるなら、その教室に1回行ってみればいいじゃんと長女に言うと「負けるかもしれないから怖い」と言う。

いやいや何言ってんだ、負けるに決まってるじゃん。
最初はみんな負けるし、負けて強くなるんだ。人生は負けることの方が多いんだよ。

と言ったら夫に笑われ、長女には不思議そうな顔をされた。

君が今、自転車に乗れるのも、縄跳びが跳べるのも、前回りが出来るのも、たくさん失敗したけど、諦めずに頑張ったからだろう?負けるのはちっとも怖いことじゃない。おかあさんだって、将棋だけでももう何千回、何万回と負けてんだ。

10年近くしまってある箱を引っ張り出して広げてみせた。
おかあさんはたくさん負けてるけど、将棋で1番になった事があるんだよ。たくさん負けても、強くなりたくて諦めなかったから、1番になれたんだ。

人間国宝が作った一輪挿しを初めて見た長女は目を輝かせて、息を吹きかけた。一輪挿しが「ホー」と音を鳴らす。やめろやめろと言って、また一輪挿しは箱の中に戻っていった。

負けても負けても、強くなりたいと思えるものに出会えるのは幸せなこと。いつか君もそう思えるものに出会えるといいね。


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