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同じ涙でも、違う

ボイストレーニングにいけば、いつも誰かから学べる。教えているのに教えてもらっている。生徒さんは、いつも情報を運んできてくれる。ありがたい。
朗読をされる林さんは、遠方からわざわざボイストレーニングに通ってきてくれている。

「先生、こんど神社で朗読会があるので練習したいんです」
「どうぞ」
毎回、詩やエッセイなどいろんな文章を読んで聞かせてくれる。私はいつも、イントネーションやテンポをチェックする。しかし、今日は聞き入ってしまった。泣くことで自分を取り戻させる、占い師のはなしだった。

大人になって、いつのまにか泣けなくなっていた男が、占い師の前で涙を流す。占い師は男を気遣って、顔を背けて見ないようにした。
「先生どうでした?」
「いい話ですね」
「そうでしょ。男の人は泣けないんですか?」
「私も泣くな、と言われて育てられました」

子どもの頃を思い出した。父親が死んだ日に泣きすぎて、泣かなくなっていた。
「嫌だったのに息子にも、いつまでも泣くなと言ってしまいまってます」
喜怒哀楽、どれも必要だから備わっている。
「やっぱり、泣いたほうがいいですね」
私に涙を取り戻してくれたのは、妻のお腹にいた息子の写真だった。うれしい過ぎて泣いたことも、思い出した。

同じ涙でも、違った。

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