少年は魚になった!Ⅱ
あまりに暑いので
「川でも行くか?」
息子と友達に言うと
「行きたい、行きたい」
吉野川に行くことにした。
奈良には海がないので、
泳ぎに行くなら、プールか川しかない。
プールより川のほうが、断然に涼しい。
車で1時間も走れば、川遊びができて泳げる場所に行ける。普通ならテントを張って太陽の光をさけるが、木陰を探してその下にレジャーシートを広げて弁当を食べた。
「さあ、自由に遊んでや」
浮輪も膨らませ、川に流されたり、泳いだりして子ども達は遊んでいた。
「お父さん、魚とりたい」
「じぁやるか」
短い網を片手に川に入る。
「だいたい、川の際の草の下に魚は隠れてるねん」
そう言って、草の下に網を突っ込んでガサガサやると網に魚が入っている。
「やってみい」
息子と友達はガサガサやるが
「採れないよ」
「もっと下までグッと突っ込まんと逃げられる」
素直にやると
「なんか採れた」
「うわーカニ」
魚、おたまじゃくし、カニいろいろと採れて興奮していた。
「もうそろそろ、戻ろか」
レジャーシートまで戻ってお茶を飲む。
「もうちょっと泳ごう」
そう言って二人で川に入る。
私は、レジャーシートで横になってくつろいでいた。
「これがニクセンかなあ」
何もしないで、川の音、セミの鳴き声に耳を傾けていた。ほんとにリラックスできた。
そんなリラックスタイムも
「お父さん網、網。魚がいっぱいだ」
水中メガネをして川をのぞくと、別世界が広がっていた。透き通った水の中で魚たちが泳ぎまくっている。二人は必死になって潜って魚をゲットしようと頑張っていた。
「見える魚はなかなか採れないで」
そんな言葉も彼らの耳には入らない。
ひたすら泳ぎまくっていた。
あっという間に日が傾いてきた。
「さあ、帰ろう」
最後の最後まで粘るが魚は採れなかった。
帰り道、温泉で汗を流しサッパリとする。
「惜しかったね」
「もうちょっとで採れたよ」
そんな会話が車の中で交わされていたが、
次の瞬間、車の中が沈黙に包まれた。
バックミラーを見ると、二人は首を傾けて爆睡していた。
魚になった子ども達は眠りについた。
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