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SHODENSHA COMICS通信 2月号 ~海外版『まどかのひみつ』の魅力
こんにちは。SHODENSHA COMICS編集部です。
編集部の日常や、小噺をお届けするマガジン『SHODENSHA COMICS通信』第2回目です。
今回は、海外版単行本の魅力についてのお話をさせていただきます。ご紹介するのは、金魚鉢でめ先生の『まどかのひみつ』。
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金魚鉢でめ
定価:748円(税込)
装丁デザイン:岩井美沙
<あらすじ>
かわいいものが大好きなまどかは、学校では“男の子らしく”しようと決意するが、人には言えないひみつがある男の子。お隣に住むいつきは、双子のお兄ちゃんがいて、サッカーが大好きで、“女の子らしく”がちょっと苦手な女の子。出会ってすぐに2人はケンカをしてしまうが、まどかはいつきの不器用な優しさにだんだんと心を許していく。ある日、まどかの“ひみつ”がいつきやクラスメイトを巻き込んで大事件に―?自分らしく、”好き”をまといたいあなたに贈る物語。
海外版出版までの流れですが、まずは、単行本発売後に作品を見つけてくださった海外の出版社さんから翻訳版発売のご依頼をいただきます。その旨を作家さんにお伝えし、ご了承いただいたあと、翻訳作業を行い刊行、といったかたちになります(この間だいたい半年~18か月)。
『まどかのひみつ』は、世の人たちが言う”男らしさ”や”女らしさ”と、主人公たちの感覚のギャップを描き、ジェンダー観にフォーカスを当てた作品です。今、注目されているテーマということもあり、全7か国で単行本が出版されています。当編集部の中ではなかなか多いです…!
ちなみにこの作品の海外版は、すべて右開きで作られています(海外の本は基本的に左開きですが、日本の漫画は縦書きのため右から左への視線誘導といった演出が使われていることもあり、左開きに直すことが難しいのです)。作品によっては、絵を反転させて左開きで作られているものもあるのだとか…。
日本版と翻訳版との大きな違いは、大きく分けて3つあります。この記事ではその違いと、楽しみ方をご紹介していきます。
1.表紙や中の紙の違い
まずは表紙や中の紙の違いについて。日本の単行本は、本体表紙があり、その上にかぶせるかたちで表紙が巻き付けられているものがほとんどですが、海外の単行本は国によっては表紙がないものもあります。
ちょっと寂しい感じがしますが、実際手に取ってみると表紙がかさばらないので読みやすいような気もします…。
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表紙はないけれど、ある風に折られているケースもあります。
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また、印刷方法も国によって異なり、タイトルだけがぷっくりと浮き出るインク(UVインク)で印刷してくださったりするので、その違いを見るのも楽しいです。
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2.描き文字の違い
次に描き文字の違いです。日本の漫画では、オノマトペを描き文字にして絵の一部として見せる表現が多様されています(「どーーーん」とか「ドキドキ」とか)。ですが、日本語のままだとその文字に込められている感情や音が伝わりづらい場合もあるので、国によってはすべて母国語に修正して描き直しされています。なんという労力。
それを見比べながら、海外ではこんな表現をするのかー!という発見もあって、とても面白いです。言葉の勉強にもなります。
さてここでは、記事の筆者の好きな海外の描き文字を紹介します。
まずは犬の鳴き声。日本では「ワンワン」ですが…
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それから、翻訳語のオノマトペの見せ方にもいくつかパターンがあります。日本版の描き文字をすべて消去し、翻訳して描き換えるパターンと、
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日本語の描き文字は残しつつ、その横にフリガナ的な見せ方で母国語を添えるパターン。ひらがなはデザイン的に可愛いので、絵として残したいという国もあるのかもしれません。
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ひらがなといえばですが、セリフやオノマトペとは関係なく、小物に書き込まれている文字も、翻訳する場合とそうでない場合があります。
「も」が「MO」になったり「M」になったり、見比べながらほっこりして、ニヤニヤが止まりません。
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またほとんどの国で、ふきだしの中の文字のフォントが手描きっぽい雰囲気なのが面白いです。日本だと漢字はゴシック体・ひらがなやカタカナは明朝体で写植されている場合がほとんどなので(この表記を「アンチゴチ」と言ったります)、文字が絵に近いタッチになるとセリフも絵の一部という感じがして読み味もちょっと変わりますね。
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余談ですが、記事の筆者が好きな海外のオノマトペはこちら。
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TADAAAAM!アメリカのホームドラマで見たことあるやつ…。口に出して言いたいです。
3.限定特典
最後に限定特典です。海外版が発売されるとき、作品によっては豪華な特典を制作していただけることもあります。例えば限定ボックスに収納されていたり、アクリルキーホルダーや缶バッチ、トートバッグが付いていることも…。
『まどかのひみつ』では、ポーランド版にすてきなポストカードを付けていただきました。可愛い~~~!
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日本では流通していないデザインのグッズもあったりするので、好きな作品は海外版もすべて欲しくなってしまいますね…。
以上、日本版と翻訳版の違いについてのお話でした。
日本を舞台に、日本で作られた漫画が、こうして様々なかたちのローカライズを経て、遠い国に住む方々にも読んでいただけていることが、なんだかちょっと不思議で、だけどすごく嬉しい気持ちでいっぱいです。
私は『まどかのひみつ』の中で、シンデレラの劇をやるシーンが大好きです。女だとか、男だとか、そんなことは関係なく、なりたい自分について堂々と胸を張って語ることができる世の中になればいいなと願っています。
もしかしたら、遠い国のどこかで翻訳版を手に取ってくれた方の中に、私と同じように考えている人がいるのかもしれない、と思うと、すごく勇気がわいてきます。
物語は国境や言葉の壁を越え、人と人の心を繋げてくれる、偉大なものですね…。改めてそう思えました。
もしこの記事を読んで、『まどかのひみつ』を気になってくださった方がいらっしゃいましたら、ぜひお手に取ってみてくださると嬉しいです!
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SHODENSHA COMICS通信、次号もお楽しみに!