Vaundyの「トドメの一撃」は俺には国府達矢っぽくなかったけれど、The Millenniumの「Prelude」は俺にも国府達矢っぽかった
Vaundyのトドメの一撃を聞いて国府達矢を思い出したという人がいるようだけれどよくわからなかったということについて前に書いたけれど、国府達矢を聞いて何を思い出したという話で、なるほどこれはたしかにそうだと思えたものが以前あった。
国府達矢がスラップスティックメロディと音の門を出したあとに出演したポッドキャスト番組があったから聞いたのだけれど、そのポッドキャストをやっている人が、番組の最後に、この人が好きならこれも好きだろうというものを紹介するコーナーで、The Millenniumのアルバム『Begin』の一曲目「Prelude」を紹介していて、それを後で聞いてみたときには、確かにこれはそうなのだとうと思った。
その人が語るには、その曲はアルバムの冒頭の曲で、アルバムが出たのは68年だけれど、こんな時代にこんな曲があったのかとびっくりして、その頃自分は音楽をやっていたけれど、こんなに普遍的な曲を作るのは無理だと思わされた曲だったらしい。
ただ、自分がそんなふうに感じていたのは冒頭のイントロダクション曲であるインストのその曲だけで、そのあとに続くのはソフトロックの歌もので、冒頭の曲の異様な凄さみたいなものを感じさせるようなものではなかったらしい。
ポッドキャスト内で国府と話している中で、その人は、ロックブッダに対して、いつ聞いても新しく感じられるというか、しかも新しいとも古いとも感じないというか、そんな普遍性というか、絶対的な軸をもったものを作り出せるものなのかと感じたらしくて、音楽を聞いてそんなふうに思ったのは、ニルヴァーナを聞いたときとか、何十年ぶりだったかもしれないと語っていた。
そういう異様なまでに普遍性を感じさせるものとして、国府の曲が好きならこの曲も好きになるだろうと紹介したということなのだろう。
その人としては、音楽的にというわけではなく、こんな曲があったのかという発見ということで、The MillenniumのPreludeとの出会いと同じ感動が国府達矢にはあったというように話していた。
けれど、俺はその曲を聞いて、音楽的にというか、聞こえている感触としては、「薔薇」とか、ロックブッダの中でも音数が多い曲に近いものがあるんじゃないかと思った。
Preludeは歌ものではない曲で、バキバキとした音が、次々とガンガンと組み合わさっていって、どんどん巨大な構造物になっていきながら通り過ぎていくのをただ見守っているしかないような気分になっていく曲だった。
それは俺がロック転生とロックブッダに感じてきた、歌ものとしての曲のすごさではなく、歌が演奏に飲み込まれ続けていて、演奏の連なりを耳で追っているだけで呆然と時間が過ぎていくような感じだったり、いつのまにかすごく心地よい景色の中を通り過ぎていくときのような感覚になってしまうような、演奏の塊として異質な聞こえ方をしているという感覚と同じようなことなのだと思う。
その人がロックブッダを聞いてみたとき、一曲目の「薔薇」に、なんだかThe MillenniumのBeginの冒頭みたいな曲が始まったと思ったのだろうし、そしてロックブッダは、Beginのようにそこからいかにもそのジャンルの曲という感じになってしまうのではなく、アルバム全体として、その異様な普遍性を感じさせる演奏が続いていくのだ。
Preludeに感じていた特別なものと同質なものを薔薇に感じたのなら、その勢いのまま、アルバム全体でいろんなバリエーションを聞かせるこのアルバムは、衝撃的にすごいものに思えたのだろうと思う。
ポッドキャスト内では触れられていなかったけれど、『Begin』というアルバムは、16チャンネルで録音された最初の作品の一つとされていて、最新技術を駆使して制作された、当時のCBSレコードで最も制作費がかかった作品だったらしい。
そして、前衛的すぎるからと、プロモーションをかけてもらえず、商業的には成功しなかったけれど、当時から批評家からは好評だったらしい。
そういうところでも、ロックブッダ的だったのだろう。
批評家からは好評だったけれど、それほど話題にならないままになったということだけではなく、ロックブッダも、制作において、先進的な技術的な試みに多大な労力をかけた作品だった。
すでに完成していたものを、納得いく完成度に達していないからと、ミックスを何度もやり直して、高音質フォーマットDSD(Direct Stream Digital)を採用するなど、先進的な音作りをすることで、音の鳴り方自体が特殊なアルバムとなっている。
『Begin』も『ロックブッダ』も、制作している過程で、新しい試みの連続に、自分たちが今まで聞いたことがないようなものを作れているという興奮があったのだろうし、そういう高揚感がこもっていることも、作品の持つ異質なエネルギーになっているところがあったのかもしれない。
その人はロック転生もまだ聞けていないくらいの状態で国府に声をかけて番組に出てもらったようだけれど、その人が国府の音楽に対してあれこれ話してくれていたことは、何もかもすんなりとそうかもしれないと思えることばかりだった。
そのポッドキャストは、国府達矢で検索したときに出てきたからたまたま聞いたものだったけれど、本当にロックブッダにすごいと思って、一生懸命たくさんの人に国府達矢を聞いてみてもらえるように話してくれているのが伝わってきて、聞いていてとても気持ちのいいエピソードだったなと思う。
radioDTM RE009 国府達矢
国府達矢の音楽を聞いてきたけれど、このポッドキャストを聞いたことがなかった人いたら、ロックブッダとロック転生の関係性なんかの話もしているし、ぜひ聞いてみて、そこで語られていることに感じたものも合わせて、また国府達矢の音楽を聞いてみると楽しいんじゃないかと思う。
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