ギャレス・ベイルの思い出
ギャレス・ベイルが引退するとのこと。お疲れさまでした。自分はトッテナムもレアル・マドリーも特に応援しているわけではないが、彼のプレイをリアルタイムで見ることができたのは1人のフットボールファンとして本当に嬉しかった。すごいプレイヤーだった。
インテル戦
ベイルの存在がヨーロッパシーンで話題になったのはCLのインテル戦だが、あの試合はリアルタイムで見ていた記憶がある。
ベイルは大型の左サイドバックとして若くしてスパーズに移籍していたがそこからの印象はあまり無かった。そんな中、左サイドハーフとして出場した時に、身体能力が攻撃面に置いて爆発したのがこの試合だった。
マッチアップしていたインテル右サイドバックのマイコンは当時あのポジションで世界最高の選手だったように思うけれど、スピードでガンガンマイコンの裏を取ってフィニッシュを続けるベイル。結果彼はハットトリックすることになるのだけど、何度もブチ抜かれた結果、最後はマイコンが戦意消失しているようにすら感じられたのが忘れられない。
また、インテルGKのジュリオ・セーザルも当時世界最高のGKの1人だったけれど、彼にもセービングの機会すら与えられないような、手の届かない隅に流し込まれたシュート技術も印象的だった。ベイルはスピードだけでなく、キックのセンスもある選手だった。
この試合の前まで、彼は16歳でデビューした早熟のプレーヤーだったものの特に印象はなく、「ベイルが出ると試合に勝てない」なんて言われたりしてた記憶がある。それを覆したホームアンドアウェイだった。
トッテナムでのラストシーズン
トッテナムでのラストシーズン、2012-2013は本当に印象的だった。プレミアを主に見ている自分にとって、ベイルと言えばこのシーズンの印象がある。
このシーズンのベイルは確か11番を付けていて、4-2-3-1の右サイドに王のように君臨していた。その数年前にインテルとやった頃は3番を付けて左サイドにいたから、えらく大きな違いだ。今からちようど10年前だから、23歳か。
このシーズンはペナルティエリア外からいとも簡単にゴールを決めまくってたんだけど、あの左足のミドル、本当に軽く蹴ってる雰囲気だったんですよね。
ゴール集の動画を見てもらったら分かる通り、フリーキックにせよミドルにせよ、全員が全員ベイルの左足を120%で警戒してるのに、それでもあるようなないようなスペースで軽く振り抜いてゴールを揺らしていた。
最近のプレミアリーグだとミドルシュートでのゴールってあまり見なくなったような気がしてるんだけど、この辺りの時期まではランパード、ジェラード、クリスティアーノ、ファン・ペルシ、トゥーレ・ヤヤ、理不尽砲を撃ち込む選手が何人かいた(今はデ・ブライネくらいだ)。彼らの存在とプレーはプレミアリーグの魅力だったと思う。
プレミアリーグの魅力は、スピードとパワー、闘争心がややアンコントローラブルな状態まで出力された殴り合いの空気にあると思うのだけど、全体を取り巻く空気だけでなく、そんな野蛮な22人の中で、一際目立つスピードだったりパワーを持つバケモンの存在、というのも含まれると思う。だからベイルという存在は、自分にとっては「めちゃくちゃプレミアリーグ」なんですよね。
ボールを持った時の後ろ姿を見ると、背中が美しい逆三角形で、ハムストリングが大きくて、見るからに恵まれたアスリート。多少無理な体勢でもゴールにボールを突き刺したりと、美しいプレーも泥臭いプレーもどちらもできた。とにかくスケールが大きくてアンストッパブルな選手だった。
レアル・マドリー
8シーズンもプレーしてたんですね。24歳から32歳くらいまで。サッカー選手としてのほぼ全盛期。マドリーの試合をフルで見るのはCLの決勝トーナメントくらいなので、あまりこの時期のことは知らないのですが、大変そうでしたね。
移籍当時の自分のツイートを見返してみると、マドリーに行く必要なんかないでしょ、ってボヤいてたんだけど、そういうことじゃないんですよね。実際、振り返ってみるとクリスティアーノ、ベンゼマ、ベイル、ハメス、モドリッチ、クロースのスーパーファイアーフォーメーションをカルロが押し付けられたりしてて笑った。
リーグカップでバルトラをブッちぎった有名なゴールシーン、あのめちゃくちゃさはいかにもプレミアリーグだった。あれだけ全力疾走できたプレーは、スペインでは他にいくつあったんだろう。
自チームのサポにも叩かれながらゴルフをし、チャンピオンズリーグを5回優勝したらしい。
フリーキック、ペナルティキック
フリーキックとペナルティキックに絶対の自信があったことも、いちサッカーファンとしてはシンプルに華だと感じるところだった。どっちもを任せられるチームの絶対的存在。なかなかいないんですよね。それで左利きでね。ズルいよな。
ローンで戻ってきたスパーズでの半年とか1年とか
アメリカに行く前、スパーズに出戻りしており、久しぶりにベイルを見ました。ご時世柄スタジアムに観客はおらず、パートナーはレノンやクラウチではなく、ソンとケインだった。9番を付けていた。
正直なところ、もう既にベイルは全然スピードが無くなっていた。ただ、ストライドの大きなドリブルで相手に交わしてパスを捌いて…と、30分くらいはトップ下的に機能していた。プレミア下位チームであったりヨーロッパリーグではそれくらいのそつないプレーはまだできていた。
ほとんど過去のロマンを追うようにプレイを見ていた。世界全体の情勢がおかしなことになっていたので、あのシーズンのサッカーはあまり記憶にないのだけど、振り返ると二桁以上の得点をしていたようだった。昔を感じさせるゴールも何点かをか獲っていた。左足は相変わらずすごかった。
ワールドカップ
代表サッカーはほとんど見ない自分だけど、ウェールズのユーロでの躍進とワールドカップ出場権の獲得は嬉しかった。それも、ベイルのフリーキックで出場を決めたんですよね。とことん主人公だよな。
アンストッパブル
結局、今もプレミアリーグは面白いままだけど、彼のようなプレイヤーはいないままだ。モー・サラーはスピードとシュートテクニックでアンストッパブルなパフォーマンスを数年間披露しているキングだけど、サラーよりもプレーが不器用な分ベイルの方がすごい。
不器用でいながら完成されたスーパースター。楽しかったです。お疲れさまでした。