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合気道 お稽古録 025

この日は、道場の創立記念行事で、気の錬磨・剣杖(けんじょう)稽古会が行われた。
杖に触れるのは、大学の選択体育の授業で、内田先生が受け持たれていた杖道のお稽古を半年間受けて以来、約15年ぶり。

稽古が進む中、近くにいらしたの先輩のSさんから、手ほどきを受ける。あまり細かいことをおっしゃらずに(絶対に気になっていらっしゃる点は多々あるのは容易に想像がつくけれど、そこをあえて言及されない節度に、終始感動)、淡々と同じ動きを繰り返してくださり、おかげで、「あ、こんな動きしたな…」「あ、この動きの名前、聞いたことある…」と思い出しながら、お稽古に勤しめた。

お稽古では、多田先生から大先生(開祖の植芝盛平先生)のお話をたくさん伺う。
どんな名医に出会っても、名医は治してくれない。
自分の気が大切。自分が自分を丁寧に大切にすること。
透明な呼吸で、透明な自分でいること。
東洋的価値観から西洋的観念へ、手のひらをひっくり返すような転換点に立たれていた方のお話を伺うたびに、その時の心持ちは、もう一生かかっても想像できないような気がしてしまう。
一般に広く強烈に流布している西洋的観念の中で生活しながらも、対極にある東洋的価値観の合気道の世界に身を浸せることは、内面的な開放感を味わえて、本当にありがたいものだと、常々感じる。

お稽古を終えて、集合写真の撮影に入る前に、多田先生のお誕生日のお祝いの花束贈呈を。
「ひょっとして、この剣杖稽古は、みんなで多田先生のお祝いをするために、稽古を口実にして集まっているのでは?」
という気さえしてしまうほど、温かい空間だった。

「あんなに人に愛されている人を、僕はみたことがない。家族からも、友人知人からも、弟子からも、師匠からも、あんなに愛されている人は、なかなかいない。だから、その姿を見られるだけで、もう価値があるよ」

内田先生に多田先生の道場に通うことをお伝えした時に、内田先生は、多田先生のことを、このようにお話ししてくださった。
きっと、あのお誕生日のお祝いは、そのワンシーンに違いない、と確信している。

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