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「感情生活」と「知的生活」 (後編)

先日、内田先生と面会した際、「感情生活と知的生活」というお話を伺ったので、前編・中編・後編でお届け中。
後編は「知的生活」についてです。
コーヒーを啜りながら、内田先生とお話しているような感じで、お楽しみください。
(前編はこちら、中編はこちらからご覧いただけます)


「知的生活」というのは、現実に起きている物事をよく眺めて、自分を調整したり、相手とともに「共生」する道を、自分たちなりに手づくりしていく、体と頭の使い方をする暮らしぶりのことなんです。

もう少し言い換えると、自分たちの知力を、自分たちができるだけ心地よく生き延びていくために使うこと。


たとえば、結婚生活の中で、「感情生活」の違いが次第に浮き彫りになってきた場合、どのような暮らし方が「知的生活」なのか、考えてみると…

それは、「お互いの感情生活が違うこと」をお互いに知っておくこと。
どちらか一方の「感情生活」を基準にして、もう一方がそれに合わせる、ということではなく、「お互いの違いを、お互いが知る」に留めておくこと。

先にお話したように、「感情生活」はこれまでの時間の中で形作られてきたもので、ちょっとやそっとでは変わりっこない。変化が絶望的に望めないものに、変化を望み続けることも、変化を強いられることも、お互いに大変なストレスとなり、共同生活を続けていくことが、むずかしくなってしまいますから。

お互いの傾向、特性、資質、偏り、感情の振れ幅や感じ方の違い…そういったところを変えようとか変えさせようとせずに、「そっか、そういう人なんだね」と微笑ましく相手の姿を眺めながら暮らせば、共同生活でのストレスは格段に減ります。生活基盤でストレスを抱えるほど、人間は強くないし、そんなふうに強がらなくていい。

相手のことなんて、全部わかるはずがないですからね。それは相手にとっての自分も同じこと。わかるはずもないし、共感できるところも、実際のところ極めて少ない。
だから、コミュニケーションを立ち上げることは、共感から始めるよりも、共感を絶したところから始める方が、理にかなっているんです。
このコミュニケーションの立ち上げ方には、それこそあんまり共感されないんだけど(笑)、自分が仲良くいたい人にこそ、Respectを持って、敬意を払って、適切な距離を取ることで、相手に敬意が伝わる。このことは、往復書簡の方でも話したことと同じです。敬意は絶対に伝わるんです、愛情は伝わらなくても。
仲良くいたい人とは、愛情や共感をベースにするよりも、「相手を傷つけないでいる」ことの方が、お互いにとって有用です。

それと、目標設定とか理想を掲げるなんて、しちゃダメだよ(笑)。人間関係って、単純に直線的に目標に向かうものじゃないからね。目標に近づいていないことばかりが目について、減点法で相手のことを見てしまうんだよね、人間って。そんなストレスフルな環境で生き延びるって、ものすごく大変。
だから、暮らしの中で減らせるストレスを減らして、限られた生命力を大切にしていくことが、とっても大切。
知的生活を送ることで、お互い思いやれるようになるんです。


前編・中編・後編でお届けしてまいりましたが、いかがでしたでしょうか?
人生を愉しむやさしいスパイスとして、皆さんにご活用いただければ、大変うれしいです。
(しみずしょうこ)


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