「学生たちは僕にとって先生やねん、学生はみんな大好きや」“キャリアソリューショニスト”本田勝裕さん
キャリアコンサルタント市場を創造し、今もその最前線を走る本田さんはキラキラした目で学生たちと日々向き合っている。その背景には、幼い頃のいじめ、会社に行けず家にも帰れず行くあてのなかった絶望、不安を抱いたまま駆け抜けるしかない日々があった。
そんな本田さんが思い描く美しい時代についてお話を伺いました。
本田さんプロフィール
出身地:兵庫県
活動地域:日本とアメリカと東南アジア
経歴:京都造形芸術大学教授 甲南大学非常勤講師
本田ポンタ勝裕(ほんだかつひろ)
1985年甲南大学経営学部卒業後、㈱学生援護会(現・パーソルキャリア㈱)入社。その後雑誌「あまから手帖」広告企画部長を経て、1997年に独立。
就職・起業・進学・留学など学生のキャリアデザインをテーマに全国の大学、高校、行政などで講演。講演実績は大学で110校を超える。
キャリアデザイン関連授業は北星学園大学、龍谷大学、甲南大学で1200人を担当。
SVJU(シリコンバレージャパンユニバーシティ)設立ボードメンバー。
神戸市東灘区在住。
座右の銘:行動は思考を加速する
「濁っていたのは自分の目だった。それを教えてくれた学生たちに恩返しをしていきたい。」
記者 本田さんのどんな心の変化や認識の変化が今の活動に繋がっていますか?
本田 出版業界で仕事をしていた時に、数字に対するプレッシャーや奥さんの病気、社内の人間関係のストレスで会社にいけなくなったことがありました。ある日、自宅から自転車で駅まで行こうとして、気がついたら駅を通り過ぎてUターンし、家に帰ることもできず、走る車をボーっと眺めている自分に気がついた。
今ではそんなことは全然ないのですが、かなりのストレスに参ってたんだと思います。
退職して時間を持て余していた僕に先輩が、専門学校で編集の講師の仕事せぇへんか?って声をかけてくれたんです。大変お世話になっていたので期待に応えたいと思い、しゃあなしでその仕事を受けることにしました。
あ、今のはオフレコで。(笑)
いざ、仕事を始めてみると、学生たちの目がドヨヨ〜ンとしていたんです。それまで出版業界でギラギラした人たちと仕事をしていた僕にとってそのことは衝撃的だった。
ただ先輩への恩返しもありましたし、教壇で偉そうに授業をしていたんですけど、学生たちが話題にしていることや当たり前な事がわからない。その時「そんなことも知らず偉そうにしてるオレ、めっちゃダサいやん・・・」と痛感させられました。
僕は教壇に立って学生たちに教え、僕も自分の知らないことを学生たちから教えられる。お互いの“知りません”を教え合うことで学生たちとどんどん仲良くなっていったんです。ある時は彼女を取られたと思った男の子と殴り合い寸前のケンカになったこともありましたね。(笑)
そうした講師生活の中で、当初はドヨヨンとしているように感じた学生たちでしたが、実はドヨヨンとしていたのは自分自身の濁った目だったと気づくことができました。
その濁った目を外して学生たちを見ると
「こいつらめっちゃキラキラしてるやんかー!こいつらの役に立ちたい!恩返しがしたい!」
と強く思えるようになったんですね。でも、恩を返したいと思うその23人の学生たちは卒業してしまう。
だから、次に入学してくる新しい学生にその恩を返していくしかない、ペイ・フォワードをしていこうと決心しました。
※ペイ・フォワード:ある人物から受けた親切を、また別の人物への新しい親切でつないでいくこと。
そうした気持ちで仕事に取り組んでいたところ、そんなに学生が好きなら大学で講演してみるか?とお声掛けがあり、そこから今の活動につながっています。
記者 恩で繋がる関係性が、今の本田さんに繋がっていることを感じられますね。
「非効率の中で常に組み合わせを変えてクリエイティビティを発揮する。それをing、現在進行形でやり続けていく」
記者 これからのAI時代にとって求められるものはなんだと思いますか?
クリエイティビティにつきます。
AI に勝てる人材というのは、その人でないとできないスキルとその人でないとできない人間関係のことを指すと考えています。若いうちにそういう自分でないとできない創造性の開発と自分でないと出来ない人間関係構築は作った方がいい。
矛盾するようですが、クリエイティビティはAIが人間に敵うものではないと言う方がいらっしゃいますが、実はそうじゃないということをAIが既に証明しているんです。レンブラントがもし生きていたらこんな画を描くだろう、光と影はこういう風に表現するだろう、それでその作品をAIが一週間で描き上げてしまった。つまりAIのクリエイティビティがビッグデータの解析によって人間のイメージできない世界を創造してしまったということです。
※レンブラント=大画面と光と影の明暗を明確にする技法を得意とした、バロック期を代表する画家。1669年没。
そうするとクリエイティブな世界は残っていくというものではなく、それが常に更新され創造されていくようなクリエイティブになる。人間関係にしても同じことで、分かりやすく言うとクリエイティブとコミュニケーションを括弧でくくってingを掛け算することだと思います。
(クリエイティブ+コミュニケーション)×ing
記者 今ここ、ということでしょうか。
本田 それに加えて進行形ですね。 クリエイティブということ自体に終わりがない、コミュニケーションにも終わりがない。
僕の師匠の本間正人先生が「最終学歴ではなく最新学習歴の更新」という言い方をしているんです。どこの学校を出ました、じゃなくて今これを学んで更新していますということが大事だと。
AIもディープラーニングを通して学習歴を更新していく。だけどそれは過去形のデータの組み合わせでしかない。僕らはAIができない妄想・空想・インスピレーション・思いつき、こういったものを組み合わせていくことができます。どう結びつけるか考えられないような組み合わせを最適化できたもの、例えばそれがウォークマンだったりiPhoneだったりするじゃないですか。そういう新しいものの組み合わせがイノベーションを起こしてきたわけですからね。クリエイティブな発想っていうのは全く異なるものの組み合わせの最適化なので、それができるようになることが求められますね。
人は生きている中で、成長・変化・気づき・後退や停止、上にいったり下にいったりしてという非効率的なことを繰り返していきます。そうした非効率の中で常に組み合わせを変えてクリエイティビティを発揮していく。それをing、現在進行形でやり続けていく必要がある。
僕みたいな割といい加減と言うか真面目じゃない、研究者として大学入ってるわけじゃないような奴が大学生とか専門学部生に未来を論じていいのかと思っていたんです。このままじゃダメだと思ってコーチングや心理学を猛烈に勉強したり、組織心理学の勉強をバージョンアップしたりっていうのをずっとしてきた。そうやって最新学習歴の更新をやっていくうちに、だんだんと自分のやりたいことが明確になっていきました。AI の時代は本当に自分が何をしたいのか問われる時代といえるでしょうね。
記者 出版業界からキャリアコンサルタントへの転身も、一見つながりのないようなことをご自身で最適化され、生き方で実践し続けているのが本田さんのクリエイティビティだと言えますね。
「美しい時代という言葉が書いてあったからこの取材を受けようと思った」
記者 これからどんな美しい時代を作っていきたいのか、本田さん自身がどんな時代を描いていらっしゃるのか教えて下さい。
本田 実は美しい時代という言葉が書いてあったからこの取材を受けようと思ったんです。美しさっていう言葉を使えるセンスがね、すごく大事。
美しさってすごい大事で、これはかっこいいという言葉に近いのかもしれません。これから美しくなるというのは自分らしくなることとイコールだと思っています。つまり、Be Yourself。でも実はBe Yourselfってすごい難しい。
寄り道をしないとBe Yourselfというのは出来上がらないし、無駄をやらないと美しい人生を作れない。だから無駄なことや回り道も全部やること。ただそうなってくると実は世の中には無駄というものがないということになるんです。
そうした意味では多くの無駄や寄り道をしないとダメなのですが、これがまた面倒くさいんですわ。情報社会で効率的にいきたいって学生が多いですし、僕自身もそれはめっちゃわかる。
だけどそれは無駄を排除するってことになるわけで、それはちゃうねんと。
もう一つ美しさには条件があって、それが何かって言うとそれそのものを楽しむこと。このあたりは“かしこ”じゃあかん。(笑)
※かしこ:賢い人、利口な人。
記者 バカになれ、ということでしょうか?
本田 バカになるんじゃなくて、アホ。(笑)
で、アホになるのもあかん、アホそのもの。偏差値は関係ないし、アホになるとかバカになるとかじゃなくて、THE・アホやね。それとアホがかしこのふりをしてるのが一番アカンと思っていて、かっこいいのとかっこつけるの違いみたいな。
かっこつけてるつけていないじゃなく、かっこいい。かっこつけず本質であろうと追求している、その人自身そのものであることがかっこよさであり、それがつまり美しさであると。だからアホがかしこのふりしたり、かっこよくないのにかっこつけてたりとかは美しくないんです。
美しいというのは、美しくみせるというよりもそれ自体を楽しむこと。自分らしくアホのまんまで楽しむこと、Be Yourself とPlay itやね。
記者 自分自身を追求し、そこから滲み出てくるものがかっこよさ。本田さんのかっこよさもそこから由来しているんでしょうね。
最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
本田
「騙されるな!
今まで言ったこと全部ウソや!!!」
って、ホンマにウソやったらどうする?
所詮、たぬきだぞと。
未来はこうなるからそうするべきだとかああするべきだとか、そんな言葉を使ってる人は僕は全く理解できなくて、よくそんな無責任なことに責任取れるよね、と。そうならなかったらどうするのっていつも思うんです。
ちゃんとしっぽを持ってるよって言ってあげた方が嘘がないよね。
大阪弁でめっちゃええのは大阪のおばちゃんがよく使う言葉で最後に“知らんし”って言うやつ。(笑)絶対こうやでって言うたのになんでか最後は“知らんけど”って言う。
でもあれってここまで語ったことの真髄をついてる。
嘘がなくって、すごい大事。
知らんけど。
記者 今まで取材をさせていただいたり、リライズニュースの他の記事をみてきましたが、まさか最後にオチを持ってくるとは・・・。(笑)
さすが関西人のおもてなしの心を感じます。
本日はとてもユーモラスでクリエイティブな時間をありがとうございました。
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本田さんの詳細情報についてはこちら
Facebook:https://www.facebook.com/katsuhiro.p.honda
HP:http://www.ponta.co.jp
【編集後記】
今回記者を担当した中村と小畑です。
終始笑いが絶えず、語る表情がイタズラをたくらむ少年のようにイキイキとされていて、現役で授業を受けている学生たちが羨ましいです。関西弁を文語体に泣く泣く翻訳しましたが、ガハハと笑う笑顔からの言葉は、学生たちへのとめどない愛が溢れていることが伝わってきました。
私(中村)の母校の大先輩でもありますし、今後ますますの活躍を期待しています。
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この記事はリライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。