「なな星くんとふた星ちゃんの願い星」作さよちゃん
なな星くんとふた星ちゃんの願い星(前編)
梅雨明けはまだですが、日差しはもう真夏。緑も、いよいよ濃くなっていきました。いろんな虫たちが、活発に活動を始めています。
そんな中、ふた星ちゃんの元気がありません。
「ふた星ちゃん、どうしたの?あまり飛びたがらないね」
なな星くんは心配そうです。
「そう言うなな星くんだって、葉っぱの陰でじっとしてるじゃない」
そう、てんとう虫は、暑さが苦手なのです。強い日差しが増えてきて、なな星くんたちはぐったりしていました。
てんとう虫は夏眠といって、暑い夏は冬眠と同じように、寝て厳しい季節を越すのです。
なな星くんは、元気を出してふた星ちゃんに話しかけました。
「ふた星ちゃん、人間の町に緑色のツルツルの木があってね、いろんな色の紙がひらひらしてたよ。人間はね、紙にお願い事を書くんだって。お星さまにお願いするらしいよ。」
「お星さまにお願い? 星なら、私たちの背中に付いてるじゃない。」
ふた星ちゃんはそういって笑いました。
なな星くんは、その笑顔を見てホッとしました。
「実はね、僕もう、お願い事書いてきちゃったんだ。」
「え〜、いつの間に? 私も書きたい。でも、もう飛べそうにないなぁ。」
「大丈夫!暗くなったら、いっしょに飛んで行こう!僕が支えるよ。」
なな星くんはキラキラ笑って言いました。
その日はちょうど曇りがちで、日差しは緩やかでした。雨もつかの間、お休みです。
ふたりは町まで飛んでいって、七夕飾りに止まりました。風に、笹の葉がサラサラ鳴っています。短冊も、ひらひら揺れていました。
「なな星くんのはどれ?なんて書いたの?」
「ナイショ。ふた星ちゃんは、なんて書くの?」
「ナイショ!」ふたりは笑い合いました。
ふた星ちゃんは、こそっとお願い事を書くと、
「あぁもう疲れちゃった。眠たい。」と言いました。
「そうだね。ちょっとここで寝ていこう。」
ふたりが笹の葉っぱの上でウトウトしていると、上の方からヒンヤリ冷たい風が吹いてきました。
細かい粒のようなものが、てんとう虫たちにサラサラ、サラサラと当たります。
気がついたふた星ちゃんが、なな星くんに声をかけました。
「なな星くん? これなんだろう?雨?」
雨でないのは、濡れていないことで分かります。体に当たっては、サラサラ落ちて消えてしまうのです。
降ってくる方を見て、なな星くんが言いました。
「ふた星ちゃん見て、空から何か降りてくるよ。僕たちの方に来るよ。」
見えない空気がサラサラ流れてきます。
周りの空気と違うのは、澄んだ水のように冷たいことと、その流れの中に、星のカケラのような小さな光がキラキラ光っていることでした。
それは、天の川の細い細い支流でした。それが、ふたりに向かって降りてきます。
「なな星くん、きれい。それに、涼しくて気持ちいいね。。。」
ふた星ちゃんは目をつぶってしまいました。なな星くんは、なにか心配で眠れません。
すると、星のカケラがサラサラサラサラ集まって、雲のようになりました。
雲のようなものは、なな星くんとふた星ちゃんを乗せて、天の川の支流に静かに浮かびました。
ふたりを乗せた流れは、ゆっくり天の川に戻っていきました。なな星くんも、ふたりが離れる心配がなくなると、ふた星ちゃんに寄り添って、気持ちよさそうに寝てしまいました。
こうして、なな星くんとふた星ちゃんは天の川の流れに揺られながら、この夏を過ごすことになるのでした。
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