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綿野恵太著『みんな政治でバカになる』反響まとめ

綿野恵太著『みんな政治でバカになる』、おかげさまで重版も決定し、多くの方々からの反響をいただいております。ここでは、未読の方々のために、本書に寄せられたコメント、ツイッターでの反響を、許可をいただいたうえでまとめました。読もうかどうか迷っている方がいらっしゃいましたら、参考にしていただけるとさいわいです。

樋口恭介さん(コメントいただきました)
バカであることはバカであることを意味しているにすぎず、そのこと自体は良いことでも悪いことでもない。バカになってももちろん良いし、その反対に、バカにならないという身振りだけでバカにならずに生きていくのは、バカになるバカよりもずっとバカな生き方であるようにも思える。繰り返すが、バカであること自体は良いことでも悪いことでもない。一般には、バカは矯正されるべき悪しきものということになっているが、むしろ個人的にはバカな人間のほうに共感と好感を覚える。なぜなら、他でもない、私自身がバカであるからだ。けれど、自分がバカであることを知りながらバカをやることと、自分がバカであることを知らずにバカをやることは、たぶん違う。そして、バカを自覚しながらバカをやることはけっこう難しい。本書はそのような、「バカであることを引き受けるバカ」を可能にする、稀有な本だと私は思っている。

與那覇潤さん(コメントいただきました)
政治は急に劣化したのではなく、私たちが前からバカだったのだ。それでも昔はバカに罹れば「免疫」ができたのに、SNSで増幅するバカの変異株の隆盛が、それを無効にしつつある。本書のタイトルだけで憤慨し、検索して一緒に叩く仲間を探してしまうとしたら、急性症状で発熱している状態です。まずは実際に読んで、熱を冷ましましょう。

倉下忠憲さん(ツイートより)
まず驚いたのだが、著者が何度か「この本のタイトルにイラッときた人がいるかもしれない」と言及しているのだが、このタイトルのどこにイラツキポイントがあるのかが、私にはさっぱりわからなかった。だって、「みんな政治でバカになる」のである。
これがたとえば「政治参加するやつはみんなバカ」というならば、イラッとするのは理解できる。なにくそ、と感じてしまう部分はあるだろう。しかし、「みんな」なのだ。みんなが「バカ」になるというならば、それは差異によって示される「劣等」ではないだろう。単に、政治的な領域では合理的な(あるいは理性的な)判断を下せなくなる、という性質を記述したものでしかない。
https://honkure.net/rbook/archives/3693

太田明日香さん(ブログより)
タイトルだけ見てみると、政治に興味関心持つやつなんてバカばっかりとシニカルな態度で批判するような本に見えるが、その逆である。
むしろ、政治活動したり支持政党があるほど政治的主張がはっきりしてるわけでもないけど、政治に無関心でもない普通の人が政治とどうつきあったらいいかの指針になるような本だった。
https://kokeshiwabuki.hatenablog.com/entry/2021/10/14/225209?_ga=2.183197030.1977701944.1635209291-1401593574.1632401162

大野左紀子さん(ツイートより)
第5章、クリシェと化した戦後民主主義的言説に対抗して生まれた保守言説が大量のネトウヨを生み出したという下りの解説がとても詳細で面白かった。市民的公共性が失われた今、左右を問わず覆っているこうした「部族主義」からいかに自由になるかを論じる第6章は千葉雅也の『勉強の哲学』と響き合う。
所謂政治的主張は抑制されつつも真正の左翼の真摯な提言の書と認識した。
https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/1450419599762022403?s=20
https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/1450419916939546628?s=20
https://twitter.com/anatatachi_ohno/status/1450419916939546628?s=20

江永泉さん(ツイートより)
『みんな政治でバカになる』は、ひとびとが「バカの壁」(養老孟司)を精神論では越えられないとして、では何をすればもっとうまく世論をつくっていけるのか考えなおす本だろうと見当をつけています。「バカ」等の語でひとがカッとしがちという機序を著者が悪意では使っていない。
https://twitter.com/nema_to_morph_a/status/1451720145684992005?s=20
https://twitter.com/nema_to_morph_a/status/1451720147715047426?s=20
https://twitter.com/nema_to_morph_a/status/1451720149896032260?s=20
https://twitter.com/nema_to_morph_a/status/1451720152244912134?s=20
https://twitter.com/nema_to_morph_a/status/1451720154518220804?s=20

沼田和也さん(ツイートより)
道徳感情による怒りに基づいた部族的な直感システムと、時間がかかるが可能な限り理性的な討論に基づいた推論システムとの葛藤を軸にした、スリリングな論考であった。ただ、最後の呉智英氏を参照したバカとドヂの比較は難しすぎて理解できなかった。
ユーモアは、一所懸命現状をアイロニカルな視点から見た結果、現状に戻ってくるのだが、もはや現状べったりではないため、どこか現状とずれていて面白みがある。神学部時代に学んだ、イロニーとフモールという議論を想いだす。綿野恵太氏が言うドヂというのはそういう意味かもしれない。
https://twitter.com/numatakazuya/status/1452801956632690691?s=20
https://twitter.com/numatakazuya/status/1452807798597689348?s=20
https://twitter.com/numatakazuya/status/1452808485381369864?s=20

以上、発言を紹介させていただいたみなさま、ありがとうございました。

綿野恵太『みんな政治でバカになる』四六版並製256ぺージ 本体1700円+税