司法書士さんは原則として訴訟や紛争の代理人にはなれません
司法書士さんは,登記や供託に関する手続などのプロフェッショナルです。
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詳細な内容は司法書士法3条に書かれていますが,司法書士さんは,登記・供託・筆界特定などについて依頼者の代理人として活動したり,書類を提出したり,相談を受けたりすることができます。
それ以外の業務(簡裁訴訟代理等関係業務),例えば,裁判所で依頼者の代わりに法廷で活動したり,誰かを訴えたりすることなどは,原則としてできません。
研修受講等の条件を満たした司法書士さんだけが,「簡易裁判所」の事件に限って,例外的に行なうことができます。
司法書士さんが地方裁判所の事件・紛争(例えば,140万円以上の損害賠償請求)や家庭裁判所の事件・紛争(例えば,離婚や相続の調停)について代理人になったり,アドバイスをしたりすることはできません。この点を誤解される方がいらっしゃいますので,ご留意ください。
これに違反して,例えば,地方裁判所の事件を司法書士さんに依頼すると,違法な活動であるとして,訴えが却下されることがあります。
2015年2月21日に以下のようなニュースが報道されましたが,もし,この報道内容が事実であれば,上述の理由により,これは違法になる可能性が含まれています。司法書士さんとしても困られるのではないかと思うのですが……。
実際に,上述したような訴えの却下が裁判所で為された最近の事件としては,富山地方裁判所の事件があります(富山地判平成25年9月10日判時2206号111頁)。
この事件では,依頼者が司法書士さんに依頼して過払金の返還を株式会社オリエントコーポレーションさんに求めたのですが,富山地裁は,司法書士さんが実質的に訴訟行為を行っているとして,不適法として訴えを却下しました(地裁で確定)。
ご参考までに判決文を一部,参考情報と共に引用しておきます(太字等は引用者による)。尚,お名前等は適宜,引用者が匿名化しています。
■富山地判平成25年9月10日判時2206号111頁
「民事訴訟法54条1項本文は,いわゆる弁護士代理の原則を規定し,地方裁判所以上の裁判所の訴訟事件について訴訟代理人が弁護士であることを訴訟代理権の発生・存続の要件とし,この要件を欠いた訴訟行為の効力を否定するものであるが,その趣旨は,訴訟の技術性・専門性を重視し,訴訟の効率的運営のために訴訟代理人を弁護士の有資格者に限定するとともに,いわゆる事件屋などの介入を排除するという公益的目的を図ることにある。」
「もっとも,紛争の当事者以外の第三者の訴訟関与の形態は訴訟代理に限られないところ,法律上の定めなく,実質的当事者である被担当者が訴訟担当者に訴訟追行権を授与し,訴訟担当者の名において訴訟追行をさせる,いわゆる任意的訴訟担当は,弁護士代理の原則を回避,潜脱するおそれがなく,合理的な必要がある場合に限り認められるものと解されているほか,非弁護士で法律事務の取扱いを業とする者を補佐人とすることも,弁護士代理の原則の趣旨に反して許されないものと解されており,民事訴訟法54条1項本文により効力が否定されるべき訴訟行為は,非弁護士が当事者本人を代理して行ったものに限られず,実質的にこれと同視できるもの,すなわち,当事者が非弁護士に対して訴訟行為を策定する事務を包括的に委任し,その委任に基づき非弁護士が策定したものと認められる訴訟行為を含むものと解すべきである。」
「司法書士法3条1項4号は,裁判所に提出する書類を作成する事務を司法書士の行う事務と定める一方,弁護士法72条は,弁護士又は弁護士法人でないものによる報酬を得る目的での訴訟事件に係る法律事務の取扱いを禁止する旨定めているところ,司法書士法3条1項4号所定の書類作成事務の限界と弁護士法72条により禁止される法律事務の範囲については,訴状,答弁書又は準備書面等の作成は,他人から嘱託された趣旨内容の書類を作成する場合であれば,司法書士の業務範囲に含まれ,弁護士法72条違反の問題を生ずることはないが,いかなる趣旨内容の書類を作成すべきかを判断することは,司法書士の固有の業務範囲には含まれないと解すべきであるから,これを専門的法律知識に基づいて判断し,その判断に基づいて書類を作成する場合には同条違反となるものと解されており,民事訴訟法54条1項本文の適用範囲につき上記のとおり解釈することは,紛争の当事者からの委任を受けていかなる趣旨内容の訴訟行為を行うべきかを判断し,訴訟行為を策定する事務は弁護士の固有の業務範囲とされ,非弁護士がそのような事務を業として行うことが弁護士法72条により禁止されていることと整合的である。」
「原告の司法書士Aに対する本件処理方針に従った事務の委任は,本件に係る訴訟行為を策定する事務を包括的に委任するものであり,本件訴えの提起は,この委任に基づき司法書士Aが策定した訴訟行為であると認められる。」
「よって,本件訴えの提起は,民事訴訟法54条1項本文に違反するものであり,無効というべきである。なお,本件訴状の記載によってなされた送達場所及び送達受取人の届出の各訴訟行為も本件訴えの提起と同様に無効である。」
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