ヒッチハイクして得たものは
25歳の冬、
約3年勤めた会社を辞めて、
ヒッチハイクの旅にでた。
仕事が忙しく、
旅行なんて満足に行けなかった私にとって、
これは3年ぶりの旅。
少ない軍資金を握りしめ、
九州一周の旅に向かった。
目指すは、
九州最南端の佐多岬。
真冬のヒッチハイクは、
一抹の不安もあったが、
向かう足は軽い。
***
福岡→佐賀→長崎→熊本と、
長崎で一回フェリーに乗ったが、
多くの人に車に乗せて貰い、順調に旅は進む。
そして、
目的地 佐多岬のある鹿児島へ。
そこで思いがけない出会いがあった。
それは、鹿児島中央駅で、
乗せてくれた同級生の女性との出会い。
車に乗せてくれたものの、
何一つ喋ってくれない。
こちらがする質問にも、満足に答えてくれない。
「困った。なぜ乗せてくれたんだ。この人は」
本気でそう思った。
ただ、とてもキレイな女性だったので、
悪い気もしない。
私は単純だ。
どういう流れでそうなったか覚えていないが、
この女性が、目的の佐多岬まで連れて行ってくれた。
距離にして、
約100kmのドライブ。
その道中、
照れながら色々話してくれたり、
時折見せるはにかむ笑顔に、
私は少しだけ恋をした。
***
宮崎、大分を経由して旅も終わり、
乗せてくれた人、一人一人にお礼の手紙を書く。
乗せて貰った人たちの中には、
今でも繋がっている人もいる。
人も食も、見た景色も忘れられない、
万福の旅だった。
***
時々、妻とそんな思い出話をする。
13年経った今でも、
鹿児島で見せてくれた笑顔は色褪せない。