「残されるべき人」

息を吸って吐いてるだけで過去は訪れる。
これから先、今日という1日を振り返ることはおそらくやってこないだろう。
生きた証なんて大袈裟なものじゃなくても何かを残したいんだ。
例えそれが真っ白なキャンバスを見つめるだけの時間であっても。

限られた情報の中で動き回っていたのに、ソファに横たわったまま情報に溺れていく。
窓の外、行き交う車や小学生たち。
家の中なのに姿を消している私は独りでいることが寂しいというよりは、独りでいることを選んでいるのかもしれない。

子どもの頃、日々に魔法があったことは確かだろう。花や虫との会話、雨上がりの雲の切れ間から差し込む陽光。
風邪を引いた冬の朝、すりガラスに垂れる朝露を眺めているだけで美しさに胸が満たされていた。

もしもし  

そっちに聞こえてますか?

私は残ります。

あなたも残されるべきだったはずです。

そんな物語を書いてみました。

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