大分の国宝・城跡巡り その① ~ 臼杵磨崖仏~
国宝と城郭巡りを進める上では、私の住む神奈川県から遠い西日本はなかなか訪れる機会もなく、鑑賞件数をこなす上での課題となっています。
そんな中、昨年(2021年)12月に、人生初の九州訪問ということで、ようやく福岡県を訪れることができました。
今回は2022年9月に生涯2度目の九州、そして生涯初の大分県に出掛けた時の国宝と城郭巡りの様子をご報告します。
■このnoteを書いている人:sho
日本の歴史・文化・自然・世界遺産、国宝、(続)100名城、日本遺産、建築、町並み、旧街道、映画、日本酒、折り畳み自転車などに興味があります。京都/奈良/横浜/鎌倉/江の島などなど…。
■大分県を訪れた理由
国宝鑑賞件数をこなすには、まずは常時公開している国宝を訪問し、その上で限定公開される国宝を逃さず見に行くことが求められます。また、件数の中の「内訳」についても1点でも多く見ることにより、より多くの自己満足を得られることとなります。
今回大分県を訪問先として選んだのは、国宝の件数が4件と、九州の中では多く、また、その全てが常時公開されているものだからというのが大きな理由です。
そして、臼杵磨崖仏についてはひととおり普通に鑑賞することで、全ての国宝61体(附(つけたり)含む)を見ることが出来ることを、国宝仲間の友人から事前に聞いていたことも決め手となっています。
今回はその臼杵磨崖仏からご報告します。
■大分駅から臼杵磨崖仏へ
臼杵磨崖仏(臼杵石仏)とは、平安時代末期から鎌倉時代にかけて彫像されたとされる、我が国を代表する石仏群で、キリシタン大名として知られる大友宗麟が築いた臼杵城を中心とした臼杵市郊外の山間の里にあります。
大分空港からバスで大分駅に到着し、大分駅で昼食を済ませたら11時半頃に大分駅を出発する佐伯行き列車に乗り込みます。
やがて列車は臼杵駅に到着します。駅名表示板のハートマークが可愛らしく、思わずほっこりした温かい気持ちになります(見出し下の写真)。
臼杵駅から臼杵摩崖仏に行くにはバスで行く方法もありますが、本数が少ないため迷わずタクシーに乗り込みます。
■観覧券を入手して摩崖仏のもとへ
駐車場でタクシーを降りたら石仏観覧券発売所で料金を払い、観覧券を受け取り、川沿いの道を進みます。
石仏参道入り口から散策路は緩い上り坂となりだんだんと神域(仏域?)に近づいていく雰囲気になってきます。
■最初は「ホキ石仏第2群」
「ホキ」とは、「崖」を表す地名です。参道を歩いて最初に到着する「龕(石仏が彫られている場所)」はホキ石仏第2群となります。
第1龕では、左右に脇侍を従えた阿弥陀三尊像が掘り出され、第2龕では「九品(くほん)の弥陀」と呼ばれる比較的小さな仏像が彫られています。
■壮観な石仏群「ホキ石仏第1群」
ホキ石仏第2群を出たら石段を上り、次の石仏群であるホキ石仏第1群を目指して歩きます。
ホキ石仏第1群には4つの龕があります。
石仏群に向かって一番右手の第4龕には、地蔵菩薩半跏像と十王像の11体があります。臼杵摩崖仏の石仏群の中では最もよく彩色が残っています。
第3龕 には大日如来像ほか4体の仏像があります。2体は横向きなのと、右側の仏像は上部が欠けているのでうっかりすると見落としてしまいそうです。中央3体の台座の四角と丸の穴は何の意味があるのでしょう。
第1龕 の如来坐像3体と菩薩立像2体は、ホキ石仏第1群のなかで最も存在感のある石仏群です。中央の如来は、一説にはこの臼杵摩崖仏の石仏群のなかでも一番のイケメンとの噂もあるとかないとか。
■少し寄り道 石造五輪塔と日吉神社
ホキ石仏第1群出て進むと、石造五輪塔の案内看板があります。「国指定重要文化財」の文字にひかれて右に進み、急坂を上ります。
やがて覆い屋の下にある二つの五輪塔が現れます。
大きい方は1170年、小さい方は1172年の銘があり、臼杵摩崖仏全体の造立年月を知る上での重要な目安となるものであり、国の重要文化財に指定されているとのことです。
山王山石仏の覆い屋の手前を右に曲がって暫く進むと、日吉神社の境内に出ます。
日吉神社はうっそうとした森の中にあります。本殿や拝殿、石の祠などのほか土俵などもあります。ここで相撲を取ったら全身蚊に刺されてしまいそうなくらい、周辺は深い森になっています。
■優しい顔の如来像 山王山(さんのうさん)石仏
日吉神社から参道に戻り、分岐点を山王山方面に進みます。階段を上ると、ここには三体の如来像があります。
中央の如来像は、これまで見た他の石造と違い、柔和で優しい顔立ちをしています。もしかすると作者も違うのでしょうか。
■最高傑作大日如来 古園石仏
山王山石仏を出て先に進むと、眺望が開けたところに出ます。遠くに見える屋根瓦は、この石仏を彫ったとされる法師が創建した満月寺(まんがつじ)のもの。後ほどそちらにお邪魔することになります。
小園石仏の手前にある二つの摩崖仏は金剛力士立像です。他の石仏に少し遅れて2017年に追加で国宝に指定されました。
古園石仏の覆い屋に入ります。中央に大日如来、左右に6体ずつの石造が並んで曼荼羅を構成しています。
臼杵摩崖仏の中でも最高傑作といわれる大日如来像は、かつては首が下にあった姿が思い出されますが、その後修復して現在のような本来の姿になっています(記事冒頭の写真もご覧ください)。
古園石仏に向かって左側には、不動明王(左から2番目)などの石仏が並びます。
古園石仏に向かって右側には、多聞天や観音菩薩などが並んでいます。
■石仏公園から満月寺(まんがつじ)へ
古園石仏から階段を下り、臼杵石仏公園に入ります。
臼杵石仏公園に着いて振り返ると、先ほどまでいた古園石仏の覆い屋などが遠くに見えています。
臼杵石仏公園は、夏のハスを始めとした四季折々の咲く静かな公園です。ここには、臼杵市の友好都市である中国敦煌市から贈られた、日中両国の偉人の言葉を刻んだ50基の石碑があります。
「深田心の小径」を通り臼杵石仏公園を横切ると、満月寺に到達します。まず出迎えてくれるのは、2体の仁王像です。
この仁王像は木原石仏ともいい、国の史跡に指定されています。見た目はどことなくユーモラなのは、仁王像の割には小さ目だからかもしれませんが、下半身は土中に埋められ、実際にはもっと大きなものとのことです。
下半身が土中に埋められた理由はわかりませんが、鼻を削って飲むと病気に効くといわれ、鼻がなくなってしまい、仁王像の割には気の毒な扱いを受けている気がします。
仁王像を過ぎて境内に入り右に進むと、3体の石像があります。
左の石像は、臼杵摩崖仏を彫ったとされる蓮城法師像、右側の2体は石仏を造ることを頼んだ長者である真名野長者夫妻の像といわれていますが、いずれにしても伝説であり、正確なことは謎に包まれています。
満月寺のはずれには巨大な宝篋印塔があります。この宝篋印塔は日吉塔ともいわれ、その名は先ほど訪れた日吉神社から来ています。
宝篋印塔としてはわが国最大であり、国の重要文化財に指定されています。
■最後に
時折雨の降る中、国宝の臼杵摩崖仏と周辺の見どころを訪ねました。この付近は「深田の里」と呼ばれるのどかな地域で、散策しているうちに心穏やかな気持ちにさせてくれるところです。
満月寺を出たら、臼杵石仏公園を歩いて石仏観覧券発売所に戻ります。ここからタクシーで次の目的地に向かいます。
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