居合の本質
居合道と居合術
14年前に居合を始めた頃は、全く気にも留めなかったこの二つの呼び名。
ここ6,7年、自身で技を研鑽・研究するようになってからは、その定義や違いについて様々な媒体をみて学ぶようになった。
自分が実践・稽古している居合術についてまずは話そう。
戦国~江戸時代に林崎甚助によって創始されたサバイバルを生き抜くための実践的な抜刀術である。
刀を「抜く」と「斬る」を同時に行う特徴をもっており、不利な状況(例えば相手がすでに抜刀していて、こちらは抜刀していない状況など)であっても瞬時に対応できる術として創られた。
死ぬか生きるかが一太刀で決まる時代。
かなり実践を想定した稽古が繰り返されていたであろう。
この本質部分は大事だと思うので、自分も稽古しているときはいつも色んな敵を具体的に想像し、タイミングなども計りながら、抜刀するよう心掛けている。
無双直伝英信流の初伝・中伝・奥伝を稽古する際も、基本的事項は踏襲しながらも、より実践を想定し、かつ臨機応変な動きにも対応できるように、様々な軽微なアレンジを加えて稽古している。
例えば、初伝「前」。
前に抜きつけて、斬り下ろすというシンプルな型だが、抜きつけの角度・高さ・距離、斬り下ろしの距離・角度・方向などを軽微なアレンジを加えていけば、初伝「前」の型でも数十パターンの稽古ができ、さらに、そのアレンジを瞬時に判断するといった要素も加えると、予定調和の型にはならず、様々な身体操作が鍛えられるし、刀の制止方法がいかに重要かも理解できるので、文字通り型にはまらない稽古法が実現できる。
これが、居合術の型稽古から学べる身体操作性・臨機応変性だと思っているし、本質的な部分であると思っている。
決して型がゴールではないし、型はあくまでも稽古でしかない。
つづいて居合道について話そう。
現在、日本では5つぐらいの大きな居合道関連の連盟・団体・組織があり、それぞれが全国に支部を持っている。
自分はそこに所属したことがないが、演武会などで実際にみた印象や、YouTubeなどの動画、また実際に連盟に所属されている方々の日々の稽古を綴っているブログなどから得た情報から考察すると、型をいかに教えられた通り行うかが最も重要で、段位をとることに重きを置いているように思う。段位性を設けることで、個々のモチベーションを高めてくれるし、明確な目標があることでより稽古に励めるという利点があるのはわかるが、本質的な部分(実践性や身体操作性)が優先されていないように見えるのは気のせいだろうか。
特に気になるのが、「抜刀の速さ」。
抜刀の速さは、居合の根幹・本質部分であり、この部分こそが剣術や剣道と異なる技術的な特異点であり、いかに綺麗に抜こうとも、いかにさりげなく抜こうとも、その速さが伴わなければ、相手に先に斬られる、もしくは初発刀を避けられて逆にカウンターを受ける可能性がある。
居合道の抜刀の速さを見ていると、とてもじゃないが戦国時代に生み出された武術の本質がそこに引き継がれているとは思えない。
ちなみに、ここでいう抜刀の速さとは、左手が鞘に触れてから抜きつけるまでの速さではなく、左手が鞘に触る動作を開始してから抜きつけるまでの速さを意味しています。
もちろん、動作の起こり・初動をさりげなくすることで、相手に悟られない抜刀法もあるが、本質的には「居合わせ」て、それに対するのが居合。
抜刀の速さはないがしろにできない。
(色々な想定をした型があるので、速さを追求しない技も中にはあるが)
両手とも刀に全く触れていない状態から始まるのであれば、左手が鞘に向けて動き出してから抜刀するまでの速さを追求すべきであるし、左手で鯉口近くを持った状態から始まる場合は、鞘送り(するのであれば)から抜刀までの速さを追求すべきであると思う。
(ちなみに、左手が鯉口にかかり、右手もすでに柄を持っている状態からの抜刀は本質ではないのでしていません。)
最近、ネット上ではあるが、様々な居合(特に英信流)の文献的なものを解説したサイトなどを見つけ、先人達が書き残した抜刀・斬りおろし・納刀・所作・気概などの解説文を見ているが、抜刀部分についても、先人はかなり重要であると記している。(序破急という言葉を用いて表現している先人もいるが、この部分の序と破は、本当の最初の起こりの部分だと個人的には解釈しています。)
もちろん速さだけではなく、そこには同時に抜きつけの力強さ(力みはいらない。身体全身の力を刀身に伝えること)も必要であるのは承知しているが、その両方を追求して、初めて達人の域と言えるのではないかと。
自分の知る限り、現在その領域に達している人は片手で数えるぐらいしかいないと思う。(自分の知らない達人、メディアに一切出てない達人がまだどこかにいることを願うが)
居合道は、大学居合でも徐々に普及していっており、世界中でも、鬼滅の刃やるろうに剣心の影響か、居合(居合道系)が多くみられるようになってきた気がする。
どうか本質をぶらすことなく伝えていっていただけたらなと切に思う。
読んでいただきありがとうございました。
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