#ヒサと共に
今、リトアニア(正確には乗り継ぎ先のイスタンブール)に向かう飛行機の中でこれを書いています。
2本だけ書いて開店休業状態のnoteだけど、本当は始めたときに3本目までは何を書くか決めていました。
それは、私がフットサルに関わり続ける理由のひとつについて。
Fリーグを観戦されたことがある方は、見聞きしたことがあるかもしれないフットサルリボン(http://f-ribbon.jp/)。フットサルファンへのがん検診啓発や小児がん患者の支援活動を行う団体です。
デウソン神戸の鈴村拓也選手(現・監督)と湘南ベルマーレの久光重貴選手(以下、ヒサくん)がご自身の闘病経験を基に立ち上げたこの活動に、初期のころから携わる機会をいただいていました。
鈴村選手とお仕事でご一緒した際にこれから活動していくと聞き、「自分にできることなら何でも協力します」と答えたその少し後に、ヒサくんから「小宮山友祐選手(現・バルドラール浦安監督)に小児がん病棟への慰問をお願いしたい」と電話がありました。それがヒサくんとの初めての会話でした。
※小宮山さんのマネジメントを担当しているので、私のところに連絡がきました。
本人とも話し、引き受けることにしたのですが、その時にヒサくんから「しょうこさんも一緒に来ませんか? 病院に許可を取りますよ」と言われたんです。小児病棟は繊細な場。そのような場所に私が行ってもいいものか…と悩みましたが、「これからどういった活動をしていくか、病と戦う子どもたちのことも知ってほしいし、写真や記録にも残してほしい」と言われ、私も同行することにしました。
当日、ヒサくんと小宮山さんは、医師から体を動かす許可を受けた子どもたちと一緒に体を動かし、ボールを蹴り、病室から出られない子どもたちのベッドをひとつひとつ周って声をかけていきました。
成人の入院であれば、家族や友人を見舞ったり、自分が入院したり、「入院とはこういうもの」という想像がつくと思います。でも、小児病棟はまったく見知らぬ世界。それぞれがどんな症状を抱えているかは分からないけど、一見元気そうに見える子でも制限があり、それでもみんな、とても楽しそうに体を動かしてキラキラした目で選手と触れ合い、「今度は試合会場で会おうね」という言葉に大きく頷いて手を振って見送ってくれた姿が印象的でした。
小宮山さんは訪問前、『俺は本田や香川みたいなスターじゃないからさ〜』『この人、誰? って思われないかな〜』と心配していましたが、それも杞憂に終わりました。
それが2014年11月。当時の画像がこちらです。
小宮山さん、髪が長いですね。
そこからフットサルリボンに微力ながら協力してきたのですが、そのころにヒサくんと話したことがあります。
「フットサル選手ってよく、『有名じゃないから』『俺なんかでいいんですか?』みたいなことを言いますよね。でも私、慰問に行った時に子どもたちが憧れの目でヒサくんと小宮山を見て、触れ合って、退院したらボールを蹴る、今度は試合で選手と会う、と目標を持つ姿を見て、こういう経験は選手の自信につながるんじゃないかと思っているんです」
私の言葉にヒサくんは「そうですよね。だからこそ、特に若い選手たちにはこういう経験をしてもらいたいと思っています」と答えてくれました。
そこからヒサくんが選手生活と治療の両立だけでなく、フットサルリボンの活動も精力的に行っていたのはみなさんご存知のとおり。
そして2019年3月。またヒサくんから1本の電話が入りました
「晃(立川・府中アスレティックFCの皆本晃選手)にフットサルリボンのイベントに出てほしいと思ってるんですけど、しょうこさんまだマネジメントしてますよね? 一緒に来ませんか? 今回、結構たくさんの選手が来るから、しょうこさんにもぜひ見てほしいんです」
この3月末のイベントには、ヒサくんの言葉のとおり、ベテランから若手まで多くの選手が集まりました。
この日、小学校1.2年生くらいの女の子がお父さん、お母さんと参加していました。でも、選手がボールを渡そうとしても「嫌だ!」とお母さんの影に隠れてしまいます。お父さん、お母さんが「お兄ちゃんたち、スポーツ選手なんだよー。かっこいいよ!」「ほら、やってみたら?」と言っても「じゃあパパとやる!」と選手たちとは触れ合おうとせず…。
これは私の勝手な想像ですが、もしかしたらこの子は普段、自分のお父さんと病院の先生くらいしか、男性を目にする機会がないのかもしれない、と思いました。
学校や習いごとに通ったり、家族で出かけたりしていると、大人の男性と触れ合うきっかけはそれなりにあると思うんです。学校や習いごとの先生やコーチ、コンビニやスーパーの店員さん、駅員さんバスの運転手さん、友達のお父さん…。でも、もしそういった世界との接触が少なければ、大人の男性がたくさん来て、突然ボールを蹴ろうと言われても怖いよね、と。
それならまだ、同じ大人でも同性の私のほうが抵抗がないかもしれない。それで声をかけてみたんです。
「じゃあ、私とやってみない?」
お父さんもお母さんも「あら、いいじゃない!」「ほら、お姉ちゃんに渡してみて」と喜んでくれました。
(私のほうがおそらく年上なのにお姉ちゃんとは申し訳ない)
それでしばらくボールを投げ合っていたら、少しして近くに来た選手にすんなりとボールを渡すことができ、次のゲームにはみんなと一緒に参加することができたんです!
常日頃、試合やイベントでは選手や演者が主役、自分は裏方、と思っていて、それは今も変わらないけど、この日までの私は必要以上に奥に引っ込んでいた気がします。選手ではないから、プレー経験もライセンスもないから、素人だから。
でも、選手でもなく、体も大きくなく、ただの素人だからこの子は受け入れてくれたんだ。この経験から私は、脇役や裏方であっても必要とされる場面があれば出ていくことを心がけるようになりました。
フットサルリボンを通してヒサくんから教えてもらった、人生の指針です。
そして、小さな後悔と大きな後悔がひとつずつ。
必要以上に引っ込んできた私は、こういったイベントなどのタイミングで写真を撮るとき、「一緒に入れば?」と言われても、「私はいい」と固辞してきたんです。どうしてもというときは後ろの端で気配を消してみたり、うつむき加減で写ったりしてきました。
そんなことをやっていたので、ヒサくんと一緒に撮った写真が一枚もありません。一緒に活動させてもらった大切な思い出なのに。これが小さな後悔。
そして、大きな後悔は、フットサルリボンを通して、ヒサくんを通して、色々な喜びや発見や自分を見直すきっかけを与えてもらったのに、それを本人に伝えられなかったこと。
19歳のころにとてもかわいがってくれていた祖父を亡くし、亡くなる少し前に「これは今度じっくり教えてやるからな」と言われた話を聞くことができず、「今度」や「いつか」が必ず訪れるわけではないと知りました。
そして、知ったはずなのにその十数年後に祖母を亡くしたとき、「もっと会いに行けばよかった」「こんなことを伝えたかった」とまた後悔をしました。それなのに。
私は本当に学ばない人間で直接伝えることは叶わなかったけど、ヒサくんとよく話していた「フットサルがある日常がしあわせ」「もっとみんなに知ってほしい。盛り上げたい」という思いは変わらず心の中にあります。
マイナースポーツに関わるって、つらいこと、理不尽なこと、腹が立つことも多いのですが、自分で切り開いていく楽しさや可能性にはそれらを凌駕するほどの喜びがあります。
ヒサくん、私、ワールドカップの地に来ました。ここまで来た原動力のひとつは、間違いなくヒサくんにあります。
そして、ここまで読んでくださってありがとうございます。ヒサくんが精力的に活動してきたフットサルリボンは、弟で元・Fリーガーの久光邦明くんが代表理事となり引き継いでいます。
フットサルを通した大切な友人である邦くんと話をしているときに、フットサルリボンの現状を聞きました。これまでFリーグの会場で募金を募ることも多かったのですが、コロナ禍で開幕が延期したり、無観客試合が増えたりして、思うように募金活動ができておらず、このような状況下では病院への慰問やイベントも行えない、といった状況です。
フットサルリボンは振込で寄付をすることもできますが、やっぱり会場にブースがあって、活動が目に見えて、さらに「お財布にある小銭でちょっとだけ」など、気軽に募金できることは大きいと思います。
それでは私に何ができるか? と考えました。もちろん、このご時世では募金箱を持って街頭に立つわけにもいかず、イベントの企画もハードルが高い。それなら。
noteは記事を有料にする機能や、記事をサポートする機能があります。これから先、どなたかが私が書いた有料記事(といっても記事自体はどなたでも読めるようにします)を購入したり、サポートしたりしてくれた場合、手数料を除いた全額をフットサルリボンに寄付します。この記事だけでなく、これから投稿するすべての記事に対して。どのタイミングで締めるかはまだ考えていないけど、寄付金額も公表します。
この話はもちろん、理事である邦くんと鈴村監督に許可をいただいた上で書いています。これまでフットサルリボンに支援をしてきた方、興味がある方、今はじめて知った方、協力してみようかな、と思ったらぜひ、フットサルリボンへのサポートをお願いします。
書きたいことがありすぎて、ヒサくんがいないという実感がなくて、思い出すと泣いてしまって、なかなか書き始めることができなかったけど、やっとなんとか書き上げることができました。
拙い文章ではありますが、尊敬する、親愛なる友人の故・久光重貴選手に捧げます。 #ヒサと共に
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