オリジナル短編小説: 『傲慢なる影と微かな光』 5/7
5/7: 真実との対峙
アリアとエリスは、巨大な機械と迫り来る敵の間に立ち、守りの構えを取った。背後にそびえる機械の冷たい金属が、彼らの背中を冷たく押さえつけているかのようだった。しかし、二人はその威圧感を振り払うように、剣を強く握りしめた。
敵の兵士たちは、アリアたちを倒すために進軍を続けながらも、その背後にある機械に目を向けることは決してなかった。まるでその存在が見えていないかのように視線を逸らし、慎重に距離を保っている。アリアはその様子に疑問を抱き、再び敵の動きに注意を向けた。
「エリス、見て。彼らは機械を完全に無視している…いや、避けている。やっぱり、これはただの兵器じゃないんだ。」
エリスは息を整えながら、うなずいた。「確かにそうだ。もしこれがただの兵器なら、敵もためらいなく攻撃してくるはずだ。」
敵の兵士たちはじりじりと距離を詰めるが、彼らの顔には焦りが浮かんでいる。そのとき、アリアは兵士たちの中に、一人だけ異質な人物がいることに気がついた。彼は鋭い目つきでアリアたちを見つめ、彼女とエリスがその機械の前に立っていることに動揺しているようだった。
「…あの人、ただの兵士じゃない。」
アリアはその人物を指さし、エリスに伝えた。二人は視線を合わせ、その人物に意識を集中した。もしかすると、彼がこの機械に関する何かを知っているのかもしれない。
「行って、聞いてみる価値があるかもしれない。」
エリスの言葉にアリアはうなずき、二人でその人物に向かって歩き出した。周囲の兵士たちは警戒心を強めるが、誰もその機械の周囲に近づこうとはしない。その奇妙な状況に疑念を抱きつつ、アリアはその男に話しかけた。
「あなた、この機械のことを知っているの?」
その男は一瞬、戸惑いの表情を浮かべたが、すぐに冷たい笑みを浮かべて答えた。「知っているとも。これはかつての戦争で失われた“影の兵器”だ。我々はそれを掘り起こし、この地で再び蘇らせようとしている。」
アリアは息を呑んだ。「影の兵器…?そんなものが何のために存在するの?」
男は冷酷な口調で続けた。「これは、傲慢さそのものを具現化した存在だ。我々の敵を圧倒し、その威力で支配するための究極の兵器だ。だが、それは同時に、我々自身をも支配しかねない危険な力でもある。」
エリスが眉をひそめた。「それで、お前たちはこの兵器を恐れているのか?」
男は苦々しい表情でうなずいた。「そうだ。我々がいくら力を誇示しようと、この影の兵器は決して完全には支配できない。それが我々の傲慢さの代償だ。」
その言葉を聞き、アリアは心の中で確信した。この機械はただの兵器ではなく、傲慢さの象徴であり、彼らが避けるべき存在でもあった。彼女は決意を込めて男に問いかけた。
「ならば、なぜそれを再び蘇らせるの?あなたたちが恐れているその力を、どうして再び使おうとするの?」
男は答えず、目を逸らした。その沈黙が答えを物語っているかのようだった。彼らは、傲慢さと力に溺れることで、自分たちの存在意義を見失っていたのかもしれない。
エリスがアリアに耳打ちした。「やっぱり、この兵器は破壊すべきだ。でも、僕たちにはどうすれば…?」
アリアは静かに目を閉じ、考えを巡らせた。彼女の心の中に、父の言葉が再びよみがえった。「敵の傲慢さには必ず隙がある。そして、その隙には真実が隠されている。」
その瞬間、アリアはこの機械の背後にある「真実」にたどり着けるかもしれないという微かな希望を感じた。そして、次の行動を決めた。
「この影の兵器を完全に破壊することで、彼らの傲慢さを打ち砕く…」
彼女は剣を握り直し、エリスと共に、最後の戦いに臨む覚悟を決めた。
(次回へ続く)