『ホテル・ピーベリー』-近藤史恵-
あらすじ
主人公・木崎淳平が、仕事を辞めて心の整理をつけるために訪れたハワイ島のヒロで繰り広げられるミステリー。友人に勧められた日本人経営のホテルは、珍しく「リピーターを受け入れない」という特徴を持っていました。淳平は、美しい自然とともにハワイでのリフレッシュを楽しもうとしますが、滞在中に宿泊者が次々と命を落とす不穏な事件が発生します。プールでの溺死に続き、バイク事故での死亡――。このホテルには何か裏があるのか? …
感想
『ホテル・ピーベリー』は、リピーターを受け入れないというホテルの設定が、物語全体に独特の緊張感をもたらしています。序盤から、宿泊客たちがどこか嘘をついているような不穏な空気が漂い、ホテルに隠された真実が徐々に明かされていくプロセスは非常にスリリングです。
物語の中心を担う淳平のキャラクターには、読者として少々苛立ちを覚えるところもありました。自己陶酔的で、どこか鈍感な一面が目立つ彼の行動には共感しづらい面があり、感情移入が難しい場面も感じました。
しかし、その一方で、淳平を取り巻く不気味な雰囲気や、次々と死者が出る展開が、ページをめくる手が止まりませんでした。
また、島全体のリゾート感と、裏に潜む人間の暗部が交錯する描写は、ハワイという美しい舞台との対比が見事でした。
一方で、クライマックスに向かう展開がやや急で、事件の解決があっけなく感じられる部分もありました。謎が解けた瞬間のインパクトをもう少し強く感じたかったという声も多いかもしれません。
それでも、ハワイ島の異国情緒と緊張感あふれるミステリーの融合が、作品全体を通して楽しめる要素となっています。
どんな人におすすめか
『ホテル・ピーベリー』は、スリリングな展開を楽しみたいミステリー好きの方におすすめです。特に、リゾート地の明るい雰囲気と、そこに潜む陰鬱な謎が絡み合った設定が好きな方にはピッタリの一冊です。
また、軽快で読みやすい文体で、次々とページをめくりたくなる作品なので、サクッと読めるミステリーを探している方にも適しています。主人公に共感できなくとも、島の不穏な空気感や事件の謎に引き込まれることは間違いありません。
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