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イッツアワンダフルワールド カード別評価(第二弾)

はじめに

 Board Game Arena(通称BGA)ではブラウザで数百種類のゲームをプレイすることができるが、その一つにイッツアワンダフルワールド(通称ワンワル)というゲームがある。ワンワルの攻略記事はいくつかあるが、本noteではワンワルに登場するカード単体に焦点を当てて、評価・解説をしていく。なお、本noteはBGA版アリーナモードのルール(2人戦帝国B面拡張なし)に準拠した評価となっている。ちなみに、ワンワルの戦略について知りたい方は、私が以前書いた「BGA版イッツアワンダフルワールドのすゝめ(以下リンク)」を読むことをオススメする。

本編に入る前に評価の見方について説明をする。本noteでは以下の形式でカードを評価する。

評価の例
  • 建設コスト……建設するのに必要なコスト(カード左上部)

  • 生産……各ラウンドで発生する資源量(カード最下部)

  • 売却……カードを売却した際に得られる資源の色(カード右下部)

  • 建設時ボーナス……カードを建設した瞬間に獲得するもの(カード下部)

  • 点数……ゲーム終了時に得られる勝利点(カード左下部)

  • 枚数……カードの収録枚数(カード右上部)

  • 評価……各ラウンドにおけるピック優先度を示し、10~1点で表される

  • 使いやすさ……カードの使いやすさを示し、5~1点で表される

 本noteではカードの総合評価は行わない。というのも、カードによって序盤に引きたいカード、終盤に使いたいカード、生産を強くするカード、大量得点するカードなど役割が異なるからだ。そのため、総合評価の代わりに各ラウンドでのピック優先度(≒強さ)として評価している。これによって各カードの尺度を合わせて評価できると考えている。

 なお、本noteでは便宜上以下の用語の読み替えを行う。公式のルールブックと合わせて読む場合は注意していただきたい。

  • 建材・建造物→白

  • エネルギー・軍用機→黒

  • 科学・研究→緑

  • 資金・巨大事業→黄

  • 探査・発見→青

  • クリスタリウム→赤

  • 選択→ピック、取る

  • 構築→建設、建てる

  • リサイクル→売却

  • 製造フェイズ→生産フェイズ

  • 不変→固定点(タイムトラベルなど)

 その他、用語として

  • カット(相手が欲しがっているカードを妨害目的で取ること)

  • ルート(生産から最終的な得点までの一連の流れ、道筋)

  • 回る(資源の生産やカードの建設が滞りなく行われること)

  • 参照(生産や得点のために投資家・将軍や建設済みのカードの数を用いること)

などがある。

カード評価(第二弾)

 ワンワルは基本セットで78種類のカードが存在する。それらを1noteで全て列記すると、とんでもない量になってしまうため、何回に分けてカードの評価・解説をしていく。第二弾の本noteでは前回解説しきれなかった白カードを扱っていく。

以下が本noteで評価・解説をするカードの一覧である。

  • 工業団地

  • 金融取引所

  • 原油採掘

 今回紹介するカードは黄生産を生み出す白カードである。一見似た性能をもつこの3枚だが、それぞれ異なる役割を持つので、本記事を読み終える頃にはその違いを少しでも理解していただけたら幸いである。

工業団地・金融取引所

略称はなし。労働者に生気がないように見えるのは気のせいか。
略称は金融。イラストは金融取引というより宝くじ当選のようなノリである

 今回のトップバッターは工業団地&金融取引所。このカードたちは似た性能をしているため、2枚まとめて評価・解説を行いたい。

 まずは工業団地。前回のnoteで評価・解説をした研究施設、軍事基地と同じく白3黒1を建設コストに持つカードである。生産や建設時ボーナスの内容から軍事基地の対になるようなカードデザインだが、評価は軍事基地と違って1ラウンドに7点を付けている。

 その理由として、工業団地は金融取引所との差別化が出来ているからである。工業団地と金融取引所の違いは以下の2つである。

  • 建設コストが工業団地が白1つ安い

  • 生産が工業団地は白1黄1、金融取引所は黄2

 ここから言えることは工業団地は金融取引所に比べて建てやすく、かつ白生産が増やせるということだ。では、これがどう利点に繋がるのか。

 例えば1ラウンドでリサイクル工場と工業団地をピック出来たとする。この際の流れは以下のようになる。

  1. リサイクル工場を計画フェイズで建設する

  2. 白生産フェイズで白3つを工業団地に、残り白1つを他の白カードに置く

  3. 黒生産フェイズで工業団地が建つ

  4. 緑生産フェイズ、黄生産フェイズが行われ資源が生産される

 これを行った盤面が以下の画像である。

1ラウンド終了時点での盤面

 画像からわかる通り、2ラウンドのドラフト前で既に白生産が5ある。かつ、白カードに1つ白資源が乗っている。そのため、このラウンドで供給される白生産5つと消費される白資源5つが丁度釣り合っている。画像の盤面なら、青売却カードが1枚あると原油採掘と研究施設が建ち、加えて黄売却カードを2枚取ることでリニアモーターカーが生産前に建つ。その上でまだ4枚ピックができる。

 1,2ラウンドにおいて白資源は貴重であり、できる限り無駄にはしたくない。だが、それは相手も同じであり、もし白売却カードが少ないドラフトならば、非常に厳しい展開にならざるを得ないこともある。

 だが、工業団地を建てておくことでこの問題を無視することが出来る。つまり、工業団地は1ラウンドの生産が控えめになるかわりに、2ラウンドのピックに余裕を作ることができるカードなのである。より端的に言えば、しゃがみに向いているカードということになる。

 さらにこの盤面だと2ラウンド時点で白カードが4枚建つことになり、家庭用ロボットやリニアモーターカーなどの白カードを参照する生産カードと相性がいいのも特筆すべき利点である。

 ちなみに、リサイクル工場がなかった場合だが、工業団地を建てることで2ラウンドの白生産が3で始まるため、白カードの多くが建てられる状態になっている。リサイクル工場の有無によらず、白生産に困らないようになっているのだ。

 さて、ここまで読んで勘のいい読者の方は気づいたかもしれない。「ここまで書いてること、軍事基地にも当てはまるんだが」と。

 では、軍事基地とはどこで差がついたのか。それはカード単体のシナジーである。

 工業団地が生産を増やす白と黄はどちらも最多生産で投資家がもらえる色になっている。かつ、工業団地も建設時ボーナスで投資家が1枚もらえる。つまり、生産もボーナスも投資家で揃っており、カード単体でのシナジーが噛み合っているのである。この観点から軍事基地と工業団地では大きく評価が分かれる結果となっている。(ちなみに軍事基地の評価・解説は以下のリンクから読むことができるため、興味がある方は読んでみてほしい)

 ちなみに、工業団地は建設時ボーナスで投資家がもらえるカードの中ではヒトクローンに次いで建設コストが安い。そのため、4ラウンドで投資家を集める目的で建てられることもしばしばある。

 工業団地の弱点を強いて挙げるとするなら、黄生産が1しか伸びないという点である。だが、黄カードには黄生産を伸ばすものが数多くあるため、黄生産が1しかないことは正直あまりデメリットにはならない。

 総評としては、工業団地は「プレイヤーにピックのゆとりをもたらしてくれる、地味だが使い勝手のいいカード」であり、前回のnoteで力説した風力発電所のような立ち位置である。上手く使いこなすことで金融取引所を凌ぐアドバンテージを生み出してくれるだろう。

 続いては金融取引所。ここまでで工業団地が使い勝手のいいカードであることを述べたが、対して金融取引所は黄生産に特化したカードである。1ラウンドから黄生産を2にしてくれるのは強力であり、港湾区域やプロパガンダセンターなどの黄カードが建てやすくなる。その反面、建設コストに白4を要求すること、金融取引所では白生産が増えないことから、他のカードで白生産を補う必要がある。

 相性がいいカードはリサイクル工場は勿論、港湾区域やプロパガンダセンターなどの黄生産カードとなる。特に港湾区域は建設コストが黄5と重いが、白生産を2増やしてくれるので、金融取引所の弱点である白生産の伸び悩みを助けてくれる。

 上記のカードと比較するとリニアモーターカーは少し相性が良くない。リニアは白カードの建設枚数が生産に繋がるので、建設コストが重い金融取引所とはあまりマッチしない。また、リニアで黄が大量生産されるので、金融取引所と合わせると黄が過剰生産になりかねない。とはいえ、リニアモーターカーが非常に強力なカードであることに間違いはないので、「リニアがピックできていて、工業団地と金融取引所の2枚から選べるようなシチュエーションなら、工業団地を選択すべき」ぐらいに思ってもらっていい。

 工業団地と比較した時のメリットは、黄の最多生産に競り勝てることである。工業団地や後述する原油採掘、ヒトクローンなどの建設コストが安い黄生産カードに対してマウントが取れるので、投資家ムーブをするなら3~6点ほど拾えると思ってよい。

 ちなみに、工業団地と比較した時のデメリットは白生産が増えないことである。そのため、2ラウンド以降は他のカードで白生産を増やさない限り白の最多生産が取れなくなる点には注意である。

 工業団地と金融取引所、似た性能を持つ2枚のカードだが、正しく使い分けることで、他のプレイヤーと差をつけることができるだろう。

原油採掘

略称は原油。工業団地に勤める労働者と比べると、待遇は幾分か良さそう

 白カード最後の1枚は原油採掘。黒と黄の両方の生産を上げるカードは原油採掘と気候制御しかない。また、基本の白カードの中では唯一建設コストに青を要求するカードである。(拡張カードでは金鉱というカードが建設コストに青を要求する)

 このように独自性が高い原油採掘だが、1ラウンドの評価はリサイクル工場、原子力発電所に次ぐ8点という高評価をつけている。このカードは複数の強みを持っているため、はじめに列挙する。

  • 黒と黄の生産を伸ばせるため、黄青ルートに走りやすい

  • 黒生産を1増やすので序盤の黒の最多生産が取れる可能性がある

  • 黄生産を1増やすので、序盤の黄の最多生産の牽制になる

  • 黄青ルートで入手しにくい投資家が獲得できる

  • カット目的で取った青売却カードを有効活用できる

 これらの強みについて、順を追って解説していく。

 はじめに、黄青ルートに走りやすいという点。原油採掘の最大の強みでもあるが、そもそもとして黄青ルートが何かわからない人もいると思うので、簡単にではあるが説明をする。

 黄青ルートとは読んで字のごとく、黄カードと青カードを主軸として回す得点方法である。黄青ルートで1ラウンドにピックしたいカードがこれらである。

画像にはないが、黄金都市やテンプル騎士団の財宝なども候補に入る

 1ラウンド白生産のタイミングで原油採掘を建てて、その生産を使って諜報機関や海底都市を建てて、黄生産を持つ青カードを建て始める、というのが黄青ルートの1ラウンドの流れである。これ以上の詳細は割愛させていただくが、知りたい方は以下のリンクにある黄青ルートの箇所を読んでほしい。

 この黄青ルートをする上で原油採掘は必要不可欠なカードである。なぜなら、諜報機関や海底都市の建設コストにマッチしており、かつ1ラウンドから建てられるカードが原油採掘しかないからである。

 そのため、1ラウンドのドラフトに原油採掘があるときは諜報機関や海底都市があるかどうかチェックをするし、その逆もまた然りである。なので、1ラウンドの8点という評価は「諜報機関や海底都市があれば9点、なければ7点」というのが実情である。

 次に黒生産を伸ばせるという点。これは前回のnoteで説明したように、黒生産を伸ばせるカードが少ないということに起因している。再掲にはなるが、1ラウンドで建てれる黒生産カードを以下に列挙する。括弧内はそのカードの収録枚数、右には建設コストを記している。

  • 風力発電所(7枚)……白2

  • 原油採掘(5枚)……白3青1

  • 原子力発電所(5枚)……白4緑1

  • 巨大ダム(1枚)……白3黄2

  • 地底都市(2枚)……白3黄3

 ここから言えることとして、原油採掘は風力発電所ほどお手軽ではないが、比較的安価に黒生産が伸ばせるカードであるということである。これは言い換えると、原子力発電所などの大量生産カードが建たなければ、原油採掘でも黒の最多生産ボーナスが狙えるということである。黄青ルートは将軍参照カードが建てやすいため、黒生産を上げられるカードは当然相性が良い。

 注意として、黒生産を伸ばすという観点だけで見れば、原油採掘はコスパの悪いカードであるため、原油採掘だけで黒生産を終盤まで補うのは現実的でないことは留意すべきである。

 次に黄生産を伸ばせる点。これは本noteで先述した工業団地への対策という意味合いである。工業団地と原油採掘は共に黄生産を1増やすため、黄の最多生産ボーナスを工業団地を建てた相手、つまりは投資家ルートに行く可能性が高いプレイヤーに渡さないというメリットがある。黄青ルートは投資家を集めるムーブではないため、原油採掘を建てた側のデメリットは少ない。

 次に黄青ルートで入手しにくい投資家が獲得できる点。黄カードには国際会議など建設コストに投資家を要求する高得点カードが複数ある。これらのカードを建てるために、2~3枚は投資家をキープしておく必要があるのだ。

画像に載せてはいるが、国際博覧会は黄青ルートで用いられることは少ない

 しかし、黄青ルートは白生産が伸びにくく、かつ、白黄ルートと比較して黄生産で劣るため、最多生産ボーナスで投資家を集めることが困難である。もちろん、工業団地や金融取引所でも投資家は獲得できるが、建設コストに黒を要求するため、若干相性が悪い。それに対して原油採掘は黄青ルートの邪魔をせずに投資家を獲得できる。これも原油採掘ならではの強みと言えよう。

 最後にカット目的で取った青売却カードを有効活用できる点。ここまでは原油採掘を黄青ルートで使うことを想定して話していたが、このカードは白黄ルートでも使うことが出来る。青売却カードはその多くに青生産がついており、白黄ルートでは使い道に困ることが多いが、原油採掘に置くことで売却資源を帝国に送るという最悪のケースを回避することができる。

 これらの理由から1ラウンドは8点という評価を付けたが、原油採掘は2ラウンド以降も評価がそれほど落ちない。それは、原油採掘が黒と黄の両方を生産することに起因する。

 白黄ルートに走ると、白生産が6を超えることはそう珍しくない。白カードの多くは建設コストに白3を要求するため、白生産が6を超えると、1ラウンドで白カードを2枚以上建てることが容易になる。しかし、白カードの多くは建設コストに黒1を要求するため、黒生産が足りないという事態に直面するのだ。

 この問題に対し、原油採掘は自身は建設コストに黒を要求せずに黒生産を生み出すため、白カードを複数枚建てる時の潤滑油の役割を果たす。それに加えて建設時ボーナスで投資家を獲得することもできる。つまり、白黄ルートでもこのカードは十二分に働いてくれるというわけだ。

 ここまで褒めちぎっている原油採掘だが、弱点を強いて挙げるとするなら、建設コストに青を要求することである。青売却カードの多くは黒生産、または黄青ルートに求められるカードのため、黄青ルートでは原油採掘のために建てたいカードを売却に充てなければならないというシチュエーションがしばしば発生する。青売却カードがドラフトに複数枚あればさほど問題ではないが、1~2枚しかない場合は原油採掘を建てることが難しくなるため、他のピックとの兼ね合いには少し注意が必要である。

 総評としては、黄を絡めた動きをするならどのルートにおいても使い勝手が良く、代替が効かないカードである。他カードや戦略についての知識が少し必要ではあるが、このカードを使いこなせたらワンワルの戦略の引き出しをいくつも増やすことができるだろう。

おわりに

 今回は白カード3枚の評価・解説を行った。建設コストや生産が似たカード3枚だったが、それぞれの特性や長所を理解していただけたら筆者としては冥利に尽きる。最後に。このカード評価、あと12回ほどの予定だったのが早速大幅に崩れてしまったので、もっと長くなりそうです。ここまで読んでくれてありがとう!次回のnoteでお会いしましょう!

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