見出し画像

レイルロード・インクのすゝめ(攻略編)

お知らせ

本noteは「レイルロード・インクのすゝめ(ルール説明編)」の続きになっています。ルールを既に知っている方は本noteから読んでいただいても問題ありませんが、ルールを知りたい方は以下のnoteを先に読んでいただくことをオススメします。

はじめに

 上記リンクにもある前noteではレイルロード・インクのルール説明を行った。本noteでは、主にBGAアリーナモードのレイルロード・インクで勝つための戦略について、話を展開していく。なお、このゲームにはいくつかの拡張要素があるが、本noteではBGA版アリーナモードである「拡張なし」を前提として話を進めていく。これを書くにあたって、筆者はレイルロード・インクの現物を所持していないため、実際のルールブックとは用語に差異があることについてはご容赦願いたい。

本noteでは以下の流れで順に解説をしていく。


 なお、以降は便宜上、出口の位置を指し示すために方角を用いる。ボード上側を北とみなして、16方位のうち四隅を表す北東、南東、南西、北西を除いた12方位を用いて各出口を呼び分ける。

各出口と16方位の対応

レイルロード・インクで勝つために

 レイルロード・インクというゲームで勝つためには、どのような考え方が必要だろうか。まずはこれについて述べたいと思う。

 レイルロード・インクに限らず、勝利点の高さで争うボードゲームにおいて勝つための考え方は大きく2つある。

  • 常に高い点数を取る (絶対評価)

  • 相手より高い点数を取る (相対評価)

 おそらく、ボードゲームをやる人の多くは相対評価の考え方を持っているだろう。なぜなら、以下の考えが成立するからだ。

  • カードの引きやダイスの出目次第では、いつも高い点数を取れるとは限らないから

  • 自分の点数を上げるよりも、相手の点数を落とした方が勝ちやすい場合があるから

  • 自分よりも格上のプレイヤーに正攻法では勝てないから

 それ故に、自分が点数を稼ぐということは大前提の上で、妨害によって相手の戦術を崩したり、早期にゲーム終了トリガーを引くことで相手の盤面の完成を待たなかったりといった戦術がある。これらはゲームシステム上、正しいプレイングであるし、こういったプレイがあるからこそゲームに深みが出るとも言える。

 しかしながら、レイルロード・インクではこういった戦略は全く通用しない。なぜなら、レイルロード・インクは以下に列挙するようなゲームシステムだからだ。

  • 全員が同じダイス面を使用する (運による有利不利がない)

  • 相手プレイヤーへの干渉要素がない

  • 確実に7ラウンド行う

 そのため、レイルロード・インクでは相対評価による考え方はほとんど無駄である。いつでも「常に高い点数を取る」ことが正義となる。

目標点数について

 前の章では、このゲームはとにかく高い点数を取ることが最重要事項であると伝えた。では、高い点数とは具体的に何点取ればいいのか。

 レイルロード・インクではいくつかの得点項目があるが、それぞれについておおよその点数の目安を以下の表に示す。ただし、この目安は筆者の経験則からくるものであり、統計的、理論的裏付けは全くないということはご理解願いたい。

点数の目安

 表の縦は各項目の名称を、横はいわゆる”評価”を示しており、S評価が一番良く、C評価が一番悪いといった見方になる。最長経路は道路と線路の合算の数値である。中央9マスは8~9点をA評価にしているが、これは中央9マスを描きすぎると出口点が稼げなくなってしまうこと、出口を1つ繋ぐのと真ん中を追加で4マス描く (どちらも4点行動) なら出口を1つ繋ぐ方がコスパが良いという意味合いを込めている。基本的には何か一つの項目を突出させるよりも、C評価の項目を作らないように立ち回ることを意識した方がよい。

 次に、BGAのELOランクに応じた平均得点のおおよその目安である。上記と同様に筆者の経験則でしかないので、参考程度に留めていただきたい。

ELOランクとおおよその平均得点

 このゲームを始めたての人は、まずは安定して50点を出すことを目標にするぐらいが調度良い。そこから少しずつ平均得点が上がっていけば、それに従って自ずとELOランクも上がっていくだろう。

高得点を取るために

 では、高得点を取るためにはどうすればいいのか。ここまで長かったが、やっと本noteの本題に入っていく。

 まず、当たり前のことではあるが、高得点を取るためには以下の事項を意識してプレイする必要がある。

  • 出口はたくさん繋ぐ

  • 道路や線路はなるべく長く繋ぐ

  • 中央は通れるなら通る

  • エラーはできるだけ減らす

 これら全てを完璧にこなせたら文句のつけようがない街が完成するが、実際はそんな上手くはいかない。なぜなら、ダイス運が絡んでくるからだ。

理想 (左) と現実 (右) 。右は三叉道路を待ち続けた結果、道が不通を起こしてしまっている。
なお、どちらも筆者のプレイである。

 思い描いていた通りのダイス面が来ると左の画像のように綺麗な街が出来上がるが、お望みのダイス面がいつまでたっても来ないと、右のように各箇所で不通が発生し、街が崩壊する。そのため、このゲームでは理想と現実の狭間で「崩壊のリスクをどれだけ許容できるか」を問う必要がある。

 それ故、安定して高得点を取るためには上記の4事項 (出口、最長、中央、エラー)に加えて、以下の3つを常に意識する必要がある。 

  • 最悪のパターンにならないように未然に防ぐ (リスク回避)

  • 最悪のパターンになった時でもリカバリーが効くようにする (リスク低減)

  • 最悪のパターンの発生を受け入れる (リスク受容)

 突然リスクマネジメントのお勉強になってげんなりする方もいらっしゃると思うため、レイルロード・インクの言葉で言い換えると

  • そもそも事故が発生しないようにルートを描く

  • スペシャルルートでなんとかできるように備える

  • 極端なダイスの出目は考えないことにする

となる。

リスクを低くしてプレイする

 リスクを低くしながらプレイをするとはどういうことなのか。それは「リスクの高い行動をできるだけ避ける」と言い換えることができる。

 ここで、リスクの高い行動を以下に列挙する。

  • 道路・線路を描ける場所が限られている (描きたくない絵柄を描かされる可能性が増える) 

  • 同じ絵柄を複数待つ(同じ絵柄が偏って出る可能性は比較的低いため)

  • 複数の出口から道路・線路を伸ばす (繋げずにエラーだけが残る可能性がある) 

  • 最長経路が途中で切れている (ゲーム終了時までに繋げないと得点化できなくなる)

  • スペシャルルートでないと解決できない箇所が複数ある

 これらのリスクの高い行動を防ぐために、以下の行動を積極的に行う必要がある。

  • 道路・線路を描ける場所を複数持っておく

  • 待つ絵柄をばらけさせる

  • 複数種類の絵柄で対応可能な場所を作る

  • 極力一本道 (できるだけ一筆書き) で道路・線路を引く

  • 予めどの場所に道路・線路を引くか考えておく

  • 駅を有効活用する

 これらを踏まえた上で、以降はそれぞれのラウンドでどのようなことを念頭に置きながらプレイすべきか実例を交えて解説していく。

1ラウンド

 1ラウンドはゲームの行く末を大きく左右するラウンドであり、最も難しいラウンドである。それ故、1ラウンドの描き方でそのプレイヤーの熟練度が推し量れるといっても過言ではない。

 1ラウンドで注意すべき点を優先度が高い順に上から列記する。

  • 道路・線路を描ける場所を複数持っておく (エラーは増やしていい)

  • 待つ絵柄をばらけさせる

  • 極力一本道 (できるだけ一筆書き) で道路・線路を引く

 これらに気を付けた上で得点を取るためにプレイすると熟練者はおおよそ以下のような描き方を好む。

1ラウンド終了後の盤面

 この描き方の特徴は、中央エリアの中に道路・線路がそれぞれ2つずつ入っているスペシャルルート (一番右 or 右から2つ目) を使うということだ。この描き方によって以下の利点がある。

  • 道路・線路が描ける場所が複数ある

  • 待つ絵柄をばらけさせることができる

  • 道路・線路を接続させながら一本道にできる

  • 中央に描くことができる

 道路・線路が描ける場所が複数あるのは明白で、道路と線路も接続できているし、中央にも2マス描けている。では、待っている絵柄はばらけているのか。

 筆者は1ラウンドが終了した時点で以下のようなルートを想定していた。

筆者の想定ルート。赤が道路、青が線路を表している。

  このルートを構成する絵柄は以下のようになる。

  • 直線道路……1つ

  • 曲線道路……2つ

  • 三叉道路……2つ

  • 直線線路……1つ

  • 曲線線路……1つ

  • 三叉線路……1つ

  • 立体交差……1つ

  • 曲線駅……1つ

 やや道路が多めだが、ほぼ全ての絵柄を均等に待っていることがわかるだろう。また、絵柄の出る順番によって描けなくなるのは北西の曲線線路 (出口から三叉線路か立体交差を伸ばさないと隅には描けない) だけであり、他のパーツは何が出てもすぐに描ける状態になっている。

 また、この盤面でルートが崩壊してしまうダイスの出目は「三叉道路と立体交差がない and 直線道路が2つ以上」だけであり (これもスペシャルを使うことで解決は可能である) 、その確率は(1/6)² * (5/²) * (2/3)≒0.015=1.5%とかなり低いことから、許容できるレベルまでリスクを十分減らしていると言える。

2・3ラウンド

 2・3ラウンドでは、1ラウンドでの流れに乗りつつ、ダイスの出目が偏った際は軌道修正やスペシャルルートを使った対応をしていくことになる。基本的には1ラウンドよりも考えることは少なく、比較的スムーズにできることが多い。

 2・3ラウンドで注意すべき点を優先度が高い順に上から列記する。

  • 出口を繋ぐ。三叉が来ない場合は繋ぐ経路を確保する

  • 待つ絵柄をばらけさせる

  • どの場所に道路・線路を引くか考えておく

  • 極力一本道 (できるだけ一筆書き) で道路・線路を引く

 これらに気を付けて先ほどの続きを描いていくと以下のようになった。

2ラウンド (左) と3ラウンド (右) 終了後の盤面

 ダイスの出目の偏りがあまりなかったのも幸いして、1ラウンドで想定したルート通りに描くことができている。3ラウンド終了時で想定ルートを構成するために待っている絵柄は以下の通りである。

  • 曲線道路……1つ

  • 三叉道路……1つ

  • 曲線線路……1つ

  • 立体交差……1つ

 この中で三叉道路と立体交差は代用が効きにくい上に、描けないと壊滅的な被害を出すので、万が一後半の4ラウンドでこれらの絵柄が全く出なかったことを考慮して、残り2つのスペシャルルートで解決することは頭の片隅に置いておくべきである。

 ちなみに、3ラウンド終了時での点数の目安は以下の通りである。

  • 出口が4つ以上繋がっている (将来高い確率で繋がるでも可)

  • 最長経路を構成すると予想される道路・線路の合計が12以上である

 まだ待っている絵柄があることを加味して、出口による点数は見込み点でよい。最長経路は寸断されていてもよいので、ゲーム終了時に最長経路を構成すると思われるタイルを数えて (立体交差などは道路・線路で重複して数える) 見込み点にする。

ここまでで想定される質問と回答

Q. 立体交差を待つの危険じゃありませんか?
A. 残り6ラウンドで立体交差が1つも出ない可能性は(2/3)⁶≒0.087=8.7%なので、許容できる範疇であると考えられる。ちなみに、残り6ラウンドで立体交差が1つ以下しか出ない可能性は (2/3)⁶ + ₆C₅ * (1/3) * (2/3)⁵≒0.351=35.1%もあるため、立体交差を2つ以上待つのはオススメしない。

Q. 2ラウンドで直線駅を南の出口に描いたのは?
A. 北側は想定ルートから外れるため却下。西と東南東の出口はその後のルートが制限されるため避けたい。南南東は伸びてきている道路との兼ね合いが悪い。南南西と西南西は線路がそこまで延びる保証がない。よって、南が消去法で選ばれた。

Q. 2ラウンドで三叉道路を東の出口から描いた理由は?
A. その一つ上のマスに描いた場合、直線道路を都合よく描ける場所が用意できないから。東の出口に描くことによって、その下に直線道路を描けるようになる。

4・5ラウンド

 4ラウンドからは後半戦に突入する。ここからは、点数行動はしつつも7ラウンドで綺麗に終わるために、出口やルートの取捨選択をする必要がある。盤面の状態にもよるが、ここでルートの見直しや新たにどこに道路・線路を伸ばすかを決める必要が出てくるため、個人的には1ラウンドの次に難しいラウンドである。

 4・5ラウンドで注意すべき点を優先度が高い順に上から列記する。

  • 複数種類の絵柄で対応可能な場所を作る

  • 極力一本道 (できるだけ一筆書き) で道路・線路を引く

  • 4ラウンドまでで1度もスペシャルルートを使用していない場合は、5ラウンドで忘れずに使う

  • スペシャルルートで対応しなければならない箇所がいくつあるか確認する

  • 最長経路が封鎖されないために、予めどの場所に道路・線路を引くか考えておく

  • 出口を繋ぐ。三叉が来ない場合はスペシャルルートで対応するか諦める

 考慮する事項が多いため初心者の方は大変だろうが、まずは「無理をしない」ということを念頭に置いてほしい。4・5ラウンドで攻めた描き方をすると、収集がつかなくなって盤面が崩壊してしまいかねない。基本的には特定の絵柄を複数待つ動きは避けて、今ある道路・線路から地道に延ばしていく方が安定して得点が取れる。

 これらに気を付けて先ほどの続きを描いていくと以下のようになった。

4ラウンド (左) と5ラウンド (右) 終了後の盤面

 4ラウンドは想定ルートに必要な絵柄が都合よく来たため北北東の出口を捨てることを決めて繋ぐことを優先している。5ラウンドでは三叉道路が出たため、南東周辺の出口はスペシャルルートを使わずに繋ぐことにした。

 5ラウンド終了時で想定ルートを構成するために待っている絵柄は以下の通りである。

  • 直線or三叉道路……1つ

  • 曲線道路……1つ

  • 直線or三叉線路……1つ

  • 立体交差……1つ

 スペシャルルートは2つ残っているので、6ラウンドで立体交差が出なかった場合はスペシャルルートにある十字交差を用いて北西のマスを埋める。他に3つほど待っている絵柄があるが、待ちがばらけているので残り2ラウンドでも回収可能と判断している。

6ラウンド

 6ラウンドはゲームも終盤であり、どれくらい得点が取れそうなのかが把握できる頃合いでもある。残りのスペシャルルートの数、待っている絵柄の数や種類など、様々な要素に注意して慎重にプレイすべきラウンドである。

 6ラウンドで注意すべき点を優先度が高い順に上から列記する。

  • スペシャルルートが2つ残っている場合は使用する

  • 待っている絵柄を回収する

  • エラーを減らす

  • 可能な範囲で出口を繋ぐ

  • 最長経路を伸ばす

 4・5ラウンドと違い、後のラウンドのことはあまり考慮しなくてよい。というより、今更気を遣ったところで修復は不可能に近いと思ってよい。そのため、不通箇所を繋ぎ、エラーを減らし、できそうなら他の出口まで延ばしてみる。リスクが低くない限り、決して新しく待ちを作ってはいけない。

 ただ、唯一冒険をしてもよい場合がある。それは相手が高得点を取りそうな時だ。このまま安定策を打っていても点数で負けそうな時は、少し無理をしてでも他の出口まで延ばしたり、最長経路を無理矢理稼いだりするのは作戦として有効である。そのため、絵柄を描く前に相手が何点ぐらい取れそうか、自分と比較して高そうかどうかを確認することをオススメする。

 これらに気を付けて先ほどの続きを描いていくと以下のようになった。

 6ラウンド終了後の盤面 

 通常ダイスが3つとも道路だったのは少し面食らったが、問題ない絵柄だったので悩むことなく描けている。南南東出口横の曲線道路はエラーを消すために外周にぶつけてもよかったが、最長を伸ばせるチャンスがある、7ラウンドで曲線道路 or 曲線駅が出たら南の出口に繋ぐことができる、もし上手くいかなくてもエラーのマイナス1点で済むなどの理由から上方向に向けている。

 特殊ダイスはここでやっと立体交差が出たため、北北西の出口が完成。7ラウンドで直線線路が出ないことを憂慮して西の出口を繋げるためにスペシャルルートを使用している。

 なお、この時点で既に54点あり、7ラウンドで

  • 南の出口が繋がる +4点

  • エラーを消す +2点

  • 最長経路が伸びる +3~5点

が少なくとも見込めるため、63~65点が最終得点になると予想できる。

7ラウンド

 7ラウンドは最後のラウンドでもあり、ある意味一番悩まなくていいラウンドでもある。というのも、後のことなど全く気にしなくてよく、一番点数が高い描き方を見つけるだけだからだ。BGAでは確定を押す前でも自分の点数は自動計算を行ってくれるため、試しに描いてみて点数をチェックして描き直す、ということが容易に可能だ。そのため、持ち時間を最大限に活用して、1点でも高い描き方を模索するべきである。

 7ラウンドで注意すべき点を優先度が高い順に上から列記する。

  • 最長経路が繋がっていない場合は繋ぐ

  • 出口を繋ぐ。

  • エラーを減らす。

  • 最長経路を伸ばす。

  • 中央に描く。

 上に書いてあるものほど、点数への影響が大きい。特に最長経路の完成は6~8点ほど増やせることもあるので、出口よりも優先した方が良い場面がほとんどである。その他の行動については、盤面次第で最善手が変化するため、面倒ではあるが一つ一つ試してみるしかない。もちろんだが、今までと違いリスクを考慮する必要は一切ない。

 これらに気を付けて先ほどの続きを描いていくと以下のようになった。

7ラウンド終了後の盤面

 またしても道路ラッシュだったが、三叉道路が1つあったため、事なきを得ている。スペシャルルートを用いることで南南西の出口は繋ぐことができるが、その場合65点となり最高点ではなかったため、中央を埋めながら最長経路を伸ばすように描いている。

終わりに

 本noteではレイルロード・インクの考え方や戦略を実際の盤面を用いて解説した。本noteがレイルロード・インクで行き詰っている人、強くなりたい人の助けになれば幸いである。最後に、およそ7500字にわたる長い解説記事を読んでくれてありがとう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?