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中高時代、筆箱を勝手に触ってくる人が苦手だった

「筆箱が性癖なのか?」 本気でそう思ったこともある。

自分の筆箱を勝手に漁られたこと、皆さんもありませんか?

僕はあります。何度も。

授業が終わり、たった10分の休憩時間。僕は大体トイレに行っていた。

「トイレが近かったからか?」と考えれば理由はそれだけではない

机でぼーっとしていたら彼はやってくる。

目的は僕と話すことではない。僕の筆箱だ。

一言も発することなく、黙々と僕の筆箱を漁っている。

別に高級なシャープペンを使っているわけでも、可愛い動物の筆箱を使っているわけでもない。

当時の筆箱(今でも使い続けています)

なんなら、何度も漁っているのだから彼は中身を知っているはずである。

「触んないでくんね?」「だるいだるい」

いつも軽く嫌悪感をアピールしてた。

でも次の日、彼は再びやってくる。

「強めに言わないと辞めてくれないかな?」と思ったものの、

「筆箱を漁られたくらいでキレるのは違うだろう」

いつもそう踏みとどまっていた。

そもそも、別に怒っているわけではない。ただ、勝手に自分の物を触られるのが不快なだけである。不快の中でも、そこそこの不快であった。

でも、辞めさせたい。

だから、計画的にキレる(怒る)ことにした。

いや、正確に言うとキレない。キレる演出をするのだ。

目的はもちろん、「筆箱を勝手に触られないようにすること」。

ただ条件が3つある。

1.「僕が嫌がっていることを知ってもらうこと」→大前提
2.「大きな声を出さないこと」→事を大きくするメリットはお互いにない
3.「キレた後も気まずくならないこと」→今後話したくない訳ではない

大きな声を出さなくても気持ちは十分に伝わる。いつも冗談のように軽く「だるいだるい」と言っていたのを、目を見て真剣に伝えればいいのだ。

とはいえ、強く言えば良いと言うものでもない。
彼は普通に話す分には楽しいクラスメイトである。筆箱程度で友人が1人減るのもそれはそれで問題である。

こうして考えられた僕の”計画的なキレ”は成功し、全ての条件を満たした。


本題:そもそも何でこんなことを思い出したのだろう。

アメリカ留学に来て、考えることの量が増え、角度が変わった。

「世界中から優秀な学生が集まるこの場所で、日本人である僕にしか出来ないことってなんだろう?」

アメリカで育った学生はもちろん、ヨーロッパからの学生もみんな英語が上手で、ここにいる以上僕の英語は”武器”じゃなくて”コミュニケーションツール”に過ぎない。(日本の学部でもそうだったけれども)

最近の僕が出した答えは、「バランス感覚」だ。

誰かと議論する時、相手の感情を読み取りながら自分の意見を伝えたり、

グループワークで他のメンバーがあまり良く分かっていなさそうな時に、あえて僕がリーダーに質問をして根本的な目的意識を揃えたり。

自分の感情を犠牲にすることなく、全体の利益を考えて自分の言動で方向性をコントロールする。

細かいところまで配慮ができて、全体のバランスを取れる外国からの学生は肌感覚で決して多くない気がする。


今思えば、あの”計画的なキレ”は中間管理職のような体験だったと思う。

「筆箱漁りをやめさせる」×「悪影響は極力出したくない」

ジレンマのように自分が板挟みにされた、一見矛盾した二つの条件をうまく隙間をついて解決する、中高時代の僕は案外それに気づいていたのかもしれない。

でも、20歳になった今考えると、「彼は寂しかったのかもしれない」とか「彼の席周りが心地よくなくて避難してきていたのかもしれない」とか、数年前よりも、より彼の立場になって物事を考えることができる。

今後就職活動をして、2年後の春にいわゆる社会人として会社に勤める頃にはまた別の視点や価値観で物事を考えられているのだろう。

なんだか自分の将来が楽しみになってきた。


「あとがき」

そういえば、、、

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