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会計務事務所でどうやって成長するか

税理士試験にトライ中のアラフォーの”元”銀行員です。新卒で入った銀行で15年以上勤め、令和4年11月に会計事務所に転職しました。

簿・財・消・相に合格済で、令和6年度に法人税法を受験し結果待ちという状況です。

会計事務所に転職し令和6年9月現在、まだたった2年弱しか経っていませんが、会計事務所で働く人間として、「税務」や「会計」についてどうやってレベルアップしていくか、意見を述べたいと思います。

税理士試験に挑戦することは大前提として、
概要としては、
・お金をかけて良質な情報に素早くアクセスできる環境を作る
・情報は複数媒体から入手する
・投資を惜しまない、情報はタダではない
・顧問先からの照会には根拠通達や法令を示しながら回答する、それを繰り返す
です。


自分が置かれた環境

勤務先は職員10名程度のいわゆる町の会計事務所です。所長以外に資格持ちの職員はいません。

自分の担当先は法人が約15社、個人が約20件です。今の事務所しか知らないので比較できないですけど担当件数はかなり少ない方だと思います。

担当先の法人の年商は数千万円から100億円までまばらですが、大半が10億円超の先です。私は税理士として独立するために辞めた人の後任として入っていますが、その辞めた人が担当していた先が中心で、今の事務所の中で大き目の先は私にほぼ集中させたそうです。

入った初日に「とりあえず去年の申告書とか見ながら決算やってみて。わかんなかったら周りの人に教えてもらって」と言われ会計事務所でのキャリアがスタートしました。

職場の雰囲気は悪くなく、聞けば教えてもらえますが基本的に税務や会計を体系的に教えてくれるような研修などはありません。所長から指導を受けたこともゼロです。

諸先輩方が作った過去の決算書や申告書を教材に、どこの数値を拾って別表に反映させているのかなどを、推理しながら自己研鑽していく感じです。


会計事務所で仕事をする上で有料情報ツールは必須

昨今、インターネット上で非常に有用な税務記事を書いて公開してくれている諸先輩方が多数います。ChatGPTのような優れたAIツールも無料も使えることができます。

しかしこれらを根拠として仕事をするわけにはいきません。顧客に根拠は?と聞かれたときに「ChatGPTによると・・・」とか「インターネットにこういう記事がありまして・・・」なんて説明できるわけがないです。

こういった記事を手掛かりにして根拠通達や法令を探すというのは良いと思いますが、顧客に回答するにあたってはあくまで通達や法令の原文、あるいは判例を示して回答するというのがあるべき姿です。

ところが通達や法令は内容が非常にわかりづらい。法令なんかは条文の中に他の条文が入っていることも多く、法令から法令へとサーフィンをしているとあっという間に時間が過ぎて行きます。

日々顧客から多種多様な質問が飛んでくるわけですが、ピンポイントで回答してくれている通達や法令はなかなかありません。

そこで役立つのが税務通信などの情報サイトや実務書です。具体的事例を根拠となる通達や法令を示し且つ噛み砕いて解説してくれています。

税務は基本的に通達や法令などに基づいています。ただこれらは普通に見てもなかなか意味が理解できません。具体的事例をどのように法令に当てはめるか、実務書や税務通信などの調べ物ができる媒体がないと正しい回答をする上では正直詰んでしまうと思います。


情報ツールは成長を助ける

一方、情報サイトや実務書を使うと言うと、「楽をして調べているので力がつかない」と思われる方もいるかもしれません(いやいない?)。「ネットで調べるよりも辞書を自分で引いた方が身に付く」的な意見もあるかもしれません。

自腹とは言え同僚に比べて情報ツールを使いまくって仕事をしているので、自分自身でもズルをしているかなと思わないでもないです。

ただ、当然ながら、良質な情報に素早くアクセスできる環境があると、正しい知識の蓄積が非常に早まります。

そして顧問先からの照会があったときは、根拠通達や法令を正しく理解して、その根拠を示しながら回答する、これを日々繰り返すと、たった1年でも大きな差になります。

特に自分でも思うのが、日々の仕事で根拠通達や条文を見にいくという癖がつきました。これは「士業」という職業柄非常に大事な行動特性だと思います。

日々、情報ツールを使い、通達や法令を併せて読むことで、自分の引き出しもどんどん増えていき、顧問先との会話においても自信を持って即答できることも増えてきました。

(ちょっとうぬぼれが過ぎるかもしれませんが、、法人税の税務知識については既に当事務所では一番だと思っています。)


複数の情報ツールで多面的に調べる

一方、税務通信などの情報サイトや実務書も決して簡単に読めるものではありません。理解しづらい解説もあります。判例などは特に難しいですね。

また、それらが絶対的に正しいとも言えないこともあると思われます。著者の主観で述べている部分もあったりしますし。

そのため自分は何かを調べるときはなるべく複数の媒体で調べるようにしています。1つの論点に対して実務書はたいてい2冊以上買いますし、税務通信以外の情報サイトも利用しています。

複数の本やサイトで調べると結構違う角度で解説してあったり、ある本ではAについては述べているけどBについては述べてなかったり、逆に別の本ではAはないけどBがあったりと、複数の媒体を見ることで穴がなくなります。

この2年ほどで買った本を分野ごとにざっくり紹介すると以下の感じです。全部が全部2冊ずつというわけではないですが。

・(4冊)組織再編
・(3冊)非上場株式の税務
・(3冊)事業承継
・(3冊)役員取引(役員報酬、借地権、不動産取引等)
・(2冊)別表の書き方
・(2冊)減価償却
・(2冊)相続手続(準確定申告、必要書類等とか)
・(1冊)法人税基本通達逐条解説(データベース版とセットのやつ)
・(1冊ずつ)会社清算関係、DES関係、持株会関係、公益法人関係、保険税務、社会保険、確定申告書関係など)

上記に加え、実務書が見放題の「丸善リサーチ」(月3,850円)も契約しています。本屋にあるすべての本が見れるわけではないのですが、相当数の本が登録されています。税務の実務書は高価なものが多いので、必要な部分だけのぞきに行けるのは非常に便利ですし、ワードで検索することもできるので重宝しています。

税務通信も年間5万円ほどしますが、別の某税務サイト(年間約10万円)も利用しています(税務よりも会計士向けの情報が割と多いので、来年はどうしようかなと迷っていますが)。

また、実務ネタはあまり多くないんですが、「税のしるべ」という週刊誌も契約しています。これは年間で1万円以下なので比較的安価です。毎週判例の紹介記事があるんですが、これが結構好きです(判例なのでけっこう読みづらいんですけども)。

あとは税理士試験のための予備校代やらなんやらで60万円以上を使っています。税法はTACですが、簿・財はスタディングを利用したので安上がりに済みましたが、会計業界に身を置こうと思ってから100万円近くは使っていると思われます、多分。


最後に

情報はタダではない。どうしてもお金は必要。

その点で言うと自分のファーストキャリアが銀行だったのは運が良かったと思います。比較的年収が高い業界で、ここに15年ほど身を置けたので蓄えはそれなりにあります。

会計業界に飛び込んだのはアラフォーになってからで、とにかく早く成長したい、周りに追いつくためには出し惜しみをしている場合ではないと思ってやってきました。

銀行にいたときは飲み会がちょくちょくあって(上司次第で部店によるものの自分の経験上、月1~3回は飲んでたと思います)、たまに後輩らと行くと、さすがに全おごりはしないですが1万円以上は平気で払っていました。

飲み会もまったく楽しくないというわけではないですが、あとになって何も残らない支出に比べると「実務に直結する自己投資」、「自分の血肉となる支出」はまったく惜しくないですね。

・・・すみません、「まったく惜しくない」は嘘です、すみません。高い本買うときは必ず本屋で中身見て迷いながら買ってます、Amazonでぽちりとかはとてもできません。高額な情報サイトもとりあえず使ってみよう感覚ではいるものの口コミとか評判をめっちゃ探してから契約します。

ただ、蓄えがあまりなかったとしても自己投資は絶対やっていたと思います。今のところ独立志向はありませんが、独立する場合あるいはより良い条件の職場に転職する場合、自分の成長が収入に直結するわけですから、こんなやりがいのある自己投資はありません。あとからいくらでも回収できます(できるはず・・・!)。

あと、情報ツールの中でも税務通信はほんとに手放せないですね。実務ネタがほかのサイトに比べ多いですし、かなり古い記事まで検索できるので情報量にも深みがあります。

そして特に気に入っているのが税務通信データベースを契約すると見れる法令集、とても便利です。条文の中に他の条文がよく出てきますが、その条文に飛ぶためのリンクがついてあって、法令サーフィンするのに非常に便利ですね。また、カッコ書きを消したり、色付けしたりする機能もあり、これがあると法令の理解がとても進みやすいです。

また、税務通信のいわゆる中の人(?)と思われる方が以前Xで次のようなポストをしていて、情報の信頼性は特に高いのではないかなと思います。

説明しよう、税務通信は国税の偉い人が自分の口では直接言いづらいことを匿名取材を通して記事にする特別な週刊紙なのだ。
その結果、税務署の職員が法令等の裏付けが微妙なケースでも税務通信を根拠に重要な判断をしたりするんだよ。
税務に関係するお仕事をしている皆は購読しよう。

今回は以上です。

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