『HEADS or TAILS ?』第1話
【あらすじ】
舞台は日本の兵庫県のとある都市。権力や財政において、白髪が黒髪よりも優位であり、裕福である白髪が能力を買って使うことができる現代の話。ある日便利屋に訪れた黒髪の女は、訳アリで蔑まれている黒髪の主人公が所属する便利屋に親殺しの疑いで警察から捜索依頼を受けた人間だった。その女の父親が主人公によって殺されたため、主人公を拳銃で撃つが、その銃声で警察が来る。そこで、主人公が驚きの行動に出る‼︎
【1話目】
『モノにしろ、ヒトにしろ、見えないモノにしろ、必ず表があり、裏がある。それらは極小さなキッカケで、ひっくり返るのである。』
2024年現在 日本 兵庫県 とある都市(大都市の大阪市や神戸市へのアクセスが良く、緑も見られる程よい都会)
人間は黒髪と白髪がおり、白髪が黒髪よりも大きな権力や財政を握っており、都市では白髪の人間しか見ることがなく、黒髪の人間はスラムに集う。そして、一般市民が1000万円で特殊な腕輪を買うことにより、安いモノで500万円から、様々な能力の力が秘められた指輪を買うことができる。つまり、能力の指輪を持つのは、富裕層が多い白髪である。
舞台はビルとビルの間の二階建ての木造建築である便利屋。便利屋前にはポストがある。
フードを深く被った男が便利屋前の郵便ポストから新聞と赤い封筒を取り出す。
男「[封筒から1通の手紙と写真を取り出す]ん?」
『便利屋皆様
依頼 父親殺しの漣穂希の捜索を求む。
依頼料 1000万円
警察本部より』
男「[タバコを咥えながら読む]……[女が写った写真を取り出す]…知らないな。」
ドンッ‼︎
ヤンキーと男がぶつかる。男は微動だにせず、写真などを封筒にいれ、赤い封筒を胸ポケットに入れる。周りの市民は立ち止まる。
ヤンキー「[倒れて尻餅をつく]痛ぇな‼︎[立ち上がってガンを飛ばす]てめぇ、道の真ん中でボーッと突っ立ってんじゃねぇよ‼︎俺を誰だと思っ…て…」
男「[フードを外し、睨むように見下ろす]……」
男の名は岩龍 静流[がんりゅう しずる]
…身長185cm、20歳、黒髪でストレートのセンター分けで髭を生やし、イケおじみたいに老けて見える。貫禄があり、筋肉質。右目のこめかみに昔の擦り傷がある。服装はズボンがスーツで、上は白のワイシャツとネクタイをし、パーカーを着ている[便利屋の正装]、パーカーは青色でボロボロ
静流の顔を見たヤンキーの顔がどんどん恐怖と驚きの顔に変化し、涙が出る。
ヤンキー「[額から血が出るほど勢いよく土下座する]すんませんでしたー‼︎」
市民が静流を見て、ザワザワする。
市民の男「アイツ死んだな。」
子供「[静流を指差す]ねぇ、ママ‼︎あの人知ってる‼︎」
母親「[子供の口を手で押さえる]しっ‼︎やめなさい‼︎」
女がフードを被って遠くから見つめる。
女「…」
静流がヤンキーの前でしゃがみ、パーカーの内ポケットに手を入れる。内ポケットからポケットティッシュを取り出す。
静流「[ティッシュを差し出す]ほら、使え。」
ヤンキー「[顔を上げる]…へっ?」
静流「デコから血出てるぞ。」
ヤンキー「[両手で恐る恐るティッシュを受け取る]…あ、ありがとうございます…」
[静流が便利屋の玄関のドアを開ける]チリンチリン。
便利屋の玄関のドアには、支店長と静流の顔の写真が貼られていて、便利屋の詳細[猫探し、レンタル彼氏、代行、暗殺など、どんな依頼でも引き受けます‼︎依頼金は要相談で決定致します‼︎依頼相談は無料なのでいつでも足を運んで下さい‼︎オンライン相談OK‼︎]が書かれたチラシが貼ってある。
玄関から入って右側にあるキッチンのコーヒーメーカーで、静流がマイコップにコーヒーを入れていると、男が肩を組んで揺らし、コーヒーがこぼれる。
男の名は金城 華山[かなしろ かざん]
…身長175cm、44歳、白髪の長髪で髪を括っている、明るいおじさん、筋肉質でガタイがいい。服装は便利屋の正装で、パーカーが紫色。
華山「あ、ごめんごめ〜ん。熱くなかった〜?」
静流「大丈夫だ。」
華山「そっかよかった〜。ってか静流ちゃんさ〜、いっつも言ってんじゃーん。新聞とるならネットニュースとか見とけって〜。家賃払うだけでギリギリなんだからよ〜。」
静流「金城さんのキャバクラに比べりゃ安いもんだ。」
華山「安いどうこうの話じゃなくて、それは店のお金で払ってんの〜。わかる?」
静流「金城さんのキャバクラもだろ?」
華山「さっきからキャバクラキャバクラって何の話かな〜?今新聞の話をしてるんだけど?もしかして、静流ちゃん日本語もわかんないのかな〜?」
静流「用がないなら俺に構うな。」
静流が肩にかかった腕を払い落とす。
華山「用ならあるぜ?」
華山がいきなり静流の顔を左手で殴る。静流は倒れることなく顔面で受け止める。
華山「いつものトイレ掃除勝負忘れちゃいけねぇな〜。俺に殴られすぎて記憶も飛んじゃったのかな〜?」
静流が華山を睨む。静流が右手で華山をつかもうとすると、華山がしゃがんで避け、腕を静流の首に引っ掛ける。
華山「お前には負ける気しねぇな〜‼︎」
ドカッ‼︎[静流を後頭部と背中から倒す]
華山が静流に馬乗りする。
華山「お前はここに寝に来たのか〜⁉︎あぁ⁉︎」
静流「…」
華山「何か言えよ岩龍‼︎[静流を殴る]あ〜そういや、お前にまだ言ってなかったっけ〜?昨日お前が帰った後にな、本店のお偉いさんが来たんだよ〜。そして俺に何て言ったかわかるか〜?[顔を近づけて囁く]お前んとこのガキがいなくなったら1人になるから、本店に帰って来いだってよ。」
静流「…」
華山「[大声になる]最高だよな〜‼︎お前がいなくなれば俺は本店に帰れるんだぜ〜⁉︎だからお前を辞めさせるしかなくなったわけ。[また顔を近づける]なぜ俺がお前に言ったか、賢いからわかるよな?今なら傷ひとつなく辞めさせてやるよ。どうだ?」
静流「…」
華山「あ〜そっか〜、寝ちまったのか〜。…じゃあ殴り起こしてやるよ‼︎[左手の握り拳を挙げる]」
チリンチリン[誰かが便利屋の玄関のドアを開ける]
華山が殴ろうとした左手を止める。外から女が歩いてくる。
女「久しぶり、華山。」
静流「[女を見て驚愕する]え…」
華山「[立ち上がる]お、お〜久しぶりだな〜‼︎どーしたんだ?」
女「岩龍静流、いるよね?」
華山「いるけど、静流ちゃんがどーしたんだ?」
女「ちょっと依頼があって。」
華山「え?依頼ってそもそも…」
静流「[起き上がる]漣穂希…」
女「‼︎」
女の名は漣 穂希[さざなみ ほまれ]
…身長172cm、21歳、黒髪セミロングのかきあげ、スレンダー、服装は便利屋の正装に黒パーカー、顔は美人系
華山「[静流を見る]え?[穂希を見る]え?[静流を見る]え?」
静流「…」
穂希「…」
華山「[静流の胸ぐらを掴む]なんでお前が穂希を知ってんだよ?」
静流「なんでって…」
華山「あ〜そーいうことか〜。」
華山「[ショックで叫ぶ]お前ら付き合ってんのか⁉︎そうなのか⁉︎そうだったらオジサン許さんぞ‼︎」
静流「いや、全然違う。」
華山「[静流の肩を叩く]そうかそうか〜そうだよな〜。だってあの静流ちゃんだもんな〜。友達どころか、彼女なんている訳ないわな〜。」
静流が無言で胸ポケットにある赤い封筒を華山に渡す。
華山「赤?警察本部からじゃん。」
穂希「‼︎」
華山が手紙を取り出して読む。
華山「ふむふむ…父ちゃんのことは気の毒だったけど、穂希が殺したのか⁉︎」
穂希「[フードを深く被る]遅かった…」
穂希が便利屋の玄関のドアを開けて出ようとする。
静流「…ちょっと待て。」
穂希が立ち止まる。
静流「依頼、引き受けてやるよ。」
穂希「え?」
華山「おいおい、静流ちゃ〜ん。人殺しの依頼を引き受けるのはマズイって〜。便利屋が…」
静流「俺個人としてだ。便利屋は関係ない。なんなら俺を辞めさせてしまえばいい。」
華山「お、マジ〜?[左手の親指でクビのジェスチャーをする]クビにしちゃっていいのか〜?」
静流「勝手にしろ。[穂希を見る]…で、依頼ってのは何だ?」
穂希「[ドアを閉める]……匿ってほしい…」
静流「‼︎」
穂希「お父さんを殺したのは私じゃない‼︎犯人なら目星がついてる‼︎だから、犯人を捕まえるまで私を匿って‼︎」
静流「……[フードを被る]……すまないが、その依頼は引き受けられない。」
穂希「え…なんで⁉︎ちょっとの間だけでいい‼︎お金ならいくらでもある‼︎」
静流「…金の問題じゃない。[独り言]……もう、大切な人を失いたくない…[新聞を拾う]仕事がないのなら、もう帰らせてもらう。」
静流が穂希の横を通って便利屋を出る。
穂希「……」
華山「[穂希の肩に手を置く]わ、悪ぃな。アイツ、ホント無愛想だよな〜。あ、そっか、笑ってないからか〜。アイツ、いつから笑わなくなっちまったんだろな〜。あははは…」
穂希「[フードを被る]…華山。あの子、どこに行くかわかる?」
華山「静流ちゃん?まあわかるけど〜。あ、わかった‼︎お前、もしかしてストーカー?」
穂希「違う‼︎」
華山「そっか〜まあ静流ちゃんも有名人だし〜カッコいいからな〜。俺はいいと思うぜ‼︎[左手でグッドする]」
穂希「だから違うって‼︎」
華山がメモ帳に何かを書いて、紙を引きちぎる。
華山「[メモを渡す]ほら。」
穂希「これは?」
華山「静流ちゃんの住所。家の1階は雑貨屋になってて、たぶんこの時間は店番やるだろーし、時間空けてから行ってみな〜。あとお詫び。」
華山が内ポケットから拳銃を取り出す。
穂希「え…」
華山「護身用として持ち歩いときな〜。」
穂希「[拳銃を受け取る]あ、ありがとう…」
華山「それと……俺の家ならいつでも大歓迎だぜ‼︎[左手でグッドする]」
チリンチリン[穂希は何も聞かずにすぐ出ていく]
華山「[固まる]……」
落ち込みながら、静流が入れたコーヒーを飲む。
華山「あ〜ぬる。[コーヒーを洗面台に流す]…あの時に引き返せたらな〜…」
舞台は静流の家の一階。
人通りの多い大通りから少し外れた場所に家がある。入って左側の商品棚にはたくさんの雑貨が並んでいる。玄関ドアから入って右手にレジの受付カウンターがあり、その奥には物置のドアがある。そのドアの手前に椅子があり、静流がそこで物思いに耽りながら、タバコを吸って座っている。
静流「[目に入った硬球を手に取る]……」
回想
静流が10歳の時。
舞台は家のリビング。玄関からリビングのドアを開くと右手にテレビがあり、その前にソファがある。ソファより左奥には食卓がある。
静流がソファに寝転びながら物理の本を読んでいると、父親が帰ってきてドアを開ける。
父親
…身長162cm、当時34歳、黒髪で坊主にしてから3ヶ月ぐらいの髪型、小柄でぽっちゃりのずんぐりむっくり
父親「ただいま〜‼︎おぉ〜‼︎ちゃんと勉強してんじゃねぇか‼︎感心感心‼︎」
静流「[本を読み続ける]…」
父親「[仕事のカバンや服を片付ける]今日もずっと家にいたのか?」
静流「[本を読み続ける]うん。」
父親「そっかそっか〜。…なぁ静流。[カバンから何かを取り出し、静流に見せる]じゃっじゃじゃーん‼︎静流、これが何かわかるか⁉︎」
静流「[読書をやめる]ん?野球ボール?」
父親「正解‼︎」
静流「(テンション高っ。)」
父親「[ボールを右手で握って手首を縦に曲げる]静流、キャッチボールやろーぜ‼︎」
静流「…[本を読み始める]いやだ。」
父親「なんでだよ〜。静流、たまには外で運動するのも大事だぞ⁉︎」
静流「ってか、なんで軟球じゃなくて硬球?当たったら痛いだろ。」
父親「何言ってんだよ‼︎男はやっぱこの赤い縫い目に憧れるだろ‼︎」
静流「そんなことはない。」
父親「嘘だろ⁉︎最近の若者はそーなのか⁉︎俺なんかコイツが欲しすぎて、俺の金ボールに赤ペンで縫い目描いてたぞ⁉︎」
静流「もっと他にボールあっただろ。」
父親「[しゃがんで自分の黒髪を指差しながら笑う]ほら、俺もいるから大丈夫だって。」
静流「…[読書をやめる]はぁ。ちょっとだけな。」
父親「ぅぉぉおっしゃ〜‼︎」
静流「うるさい。」
場面は公園。
2人でキャッチボールをしていて、近くには誰1人いない。静流は軍手で、父親はブラジャーでキャッチボールをする。
静流「[父親を指差す]なぁ。他にもっといいグローブなかったのか?(しかもどこで手に入れた?)」
父親「何言ってんだよ‼︎軍手よりもダントツで取りやすいだろ⁉︎こーやって重ねたら絶対に取り損ねねぇじゃん‼︎」
静流「恥ずかしいだろ。」
父親「思春期だな〜俺にもそんな時代がありました。」
静流「思春期は関係ない。」
父親「なんと言ってもこの手のフィット感‼︎スゥ〜[ブラを鼻に近づけて思いっきり息を吸う]ハァ〜[口から息を吐く]‼︎たまらんね‼︎[父親の目がキマっている
]」
静流「(嫌な性癖を垣間見たな。せいぜい下着泥棒で捕まらないようにしてくれ。)」
父親「…[父親が急に真面目な顔になる]なぁ静流。学校はもう行かないのか?」
静流「たぶんな。」
父親「そっかそっか。俺はそれでいいと思うわ。黒髪がどうとか言う白髪と一緒に勉強してても楽しくねぇしな。」
静流「…」
父親「まあ、イジメはイジメられる方じゃなくてイジメる方に問題があるから、お前は気にすんな。」
静流「俺はイジメられてない。アイツらの遊びに付き合ってないだけだ。」
父親「そっかそっか。遊んでやるときはほどほどにな。アレは使うなよ。」
静流「もちろんだ。アレは一生使わない。」
父親「一生?好きな人を守る時もか?強いヤツと闘う時もか?」
静流「…その時は使う。」
父親「お前、ツンデレみたいだな。」
静流「違う。」
父親「そーいえば、純白[ましろ]くんと仲良くやってるか?」
静流「うん。…でも、離れるべきか迷ってる。」
父親「なんで?」
静流「俺と一緒にいたら、いつか芯波[しんば]に迷惑がかかるかもしれない…」
回想終わり
玄関ドアから穂希が入る。
静流「[穂希を見る]らっさっせー。」
穂希「[右手を挙げる]おっす。」
静流「……[奥の物置きに入ろうとする]」
穂希「え、ちょっと‼︎私、一応お客さんなんだけど⁉︎」
静流がレジで壁にもたれて、タバコを吸う。
静流「何しに来た。」
穂希「[静流の咥えているタバコを指差す]そのタバコ、1箱ちょーだい。」
静流「タバコ吸うのか?」
穂希「ううん。」
静流が受付の下からタバコを取り出すためにしゃがむ。
穂希「…ねぇ。気持ちは変わらない?」
静流「変わらない。何故俺に拘る?お金があるなら、華山の方が知名度も人気もあって信用できる。[タバコをカウンターに置く]500円だ。」
穂希「[500円玉をカウンターに置く]はい。あとこれも。[受け取ったタバコを静流に差し出す]」
静流「何のつもりだ。」
穂希「言ったでしょ?私、タバコ吸わないから。」
静流「理由になってない。」
静流がタバコを穂希の方に置き、横目で穂希を見る。
穂希「[首を傾げる]いらないの?」
静流「[2人が見つめ合う]……[タバコとお金を受け取る]ちょうど切らしてたから、一応もらっといてやる。」
穂希「ツンデレ?」
静流「違う。」
タバコをポケットに入れて、お金を静流の背後の壁沿いのお金入れに入れる。
穂希「…ねぇ。どうしてあなたに拘るのか教えてあげようか?」
カチャッ[穂希が拳銃をカタカタ震わせながら静流に向ける]
静流「[静流が動きを止める]何のまねだ?」
穂希「お、お父さんを殺したのは君でしょ‼︎」
静流「……」
穂希「君が依頼を引き受けなかったのは、私が近くにいたら殺されるかもしれないからでしょ⁉︎」
静流がお金のフタを閉める。
穂希「動かないで‼︎」
静流が穂希の方を向く。
穂希「動かないでって言ったでしょ‼︎」
パンッ‼︎[静流の顔スレスレに撃つ]
穂希「次はないよ‼︎」
静流がタバコを吸う。
穂希「この状況でどうしてそんなに余裕があるのよ‼︎」
静流「…どーせ、俺が殺したって言ったら撃つんだろ?」
穂希「‼︎やっぱり君が殺したの⁉︎」
静流「これを見たから来たんだろ?[ポケットから『暗殺依頼』と書かれた名刺を取り出す]」
穂希「暗殺カード‼︎」
静流「完全犯罪の殺人現場に、必ず置かれている俺の名刺だ。まあ、わかっていると思うが…[名刺をカウンターに投げて突き刺す。裏には『殺し屋 岩龍静流』と書かれている]俺がかの有名な『殺しの岩龍』だ。」
穂希「どうしてお父さんを殺したの⁉︎」
静流「…依頼を受けて、お前の親父は殺されるべきだと判断した。それだけだ。」
穂希「…‼︎」
パンッ‼︎[銃弾が静流の左脇腹に当たる]
静流「ぐっ‼︎[左手で腹部を抑えて、右手をカウンターにつく]」
穂希「[放心状態]はぁ、はぁ、はぁ。」
静流「はぁ、はぁ…[左手を見ると血がついている]これなら…死ぬ良い言い訳になるかもな…[外を見て何かに気づき、穂希を見ると、まだ放心状態]死ぬ前ぐらい俺の存在意義を証明しろと?フン。[笑う]神様も意地悪だな。」
静流が穂希の腕を掴んで、奥のドアから物置に入れる。
静流「俺が開けるまでここから出るな。いいな?」
穂希「え…?」
静流がドアを閉め、カウンター上の名刺を内ポケットに入れ、壁にもたれてお腹を抑えながらレジに立つ。外から帽子を深く被った警官が入ってくる。
静流「警官がここに何の用だ?」
穂希「([驚く]警官⁉︎[体育座りで壁にもたれて頭を抱える]はぁ…私、捕まっちゃうのか…仕方ないよね…復讐したんだから………ごめん、清桜[きよはる]。復讐なんかよりも先に見つけるべきだったのに…約束守れなかった…ごめん…)」
警官「ここから銃声がしたと連絡があったので駆けつけたのですが?」
静流「い、いや〜、どーだろ?か、勘違いだ。客じゃないなら出て行ってくれ。」
穂希「(え…?匿ってくれてる?なんで?撃ったのに…お金になるのに……そんなわけないか…[静流が開けるなと言った時のことを思い出す]…でももし…もしも匿ってくれてるのなら…助けてくれるのなら…こんな私でも、生きる希望を持って…いいのかな…)」
警官「そうですか。それでは、貴方は何故怪我をしているのですか?」
静流「…え、あ、いや、その…アレだ。ピザソースを溢した。」
穂希「(嘘ヘタ‼︎)」
警官「[笑う]アッハッハ‼︎相変わらず岩ちゃんは嘘がヘタなんだね。[帽子を外す]久しぶり、岩ちゃん。」
静流「し、芯波‼︎」
芯波「岩ちゃんの活躍は聞いているよ。政府は岩ちゃんを捕まえるのに必死だからね。早くヘマをしろってみんな言ってるよ。」
静流「そうか。はぁ…[お腹が痛む]芯波ももう少しでベスト5だろ?」
芯波「よく知ってるね。それじゃあ、僕がここに来た理由わかってるんじゃない?」
静流「…俺を捕まえに来た。」
芯波「[拍手する]正解。流石だね。[静流のお腹を指差す]もし岩ちゃんが拳銃を持っていれば、銃刀法違反だよ。岩ちゃんの逮捕はかなりの得点になるんだ。僕ならベスト5になれる。」
静流「そうか。はぁ…生憎だが、俺は拳銃を持っていない。」
芯波「へぇ〜岩ちゃんは持ってないんだ〜…それじゃあ、ここに他に誰かいて、岩ちゃんを撃ったってことだね?」
静流「…え、あ、ん?うーん…[頭を掻く]何か言ったか?」
穂希「(ホントに匿う気ある⁉︎)」
芯波「例えばその誰かが…漣穂希だったりしてね。」
静流「‼︎」
穂希「‼︎」
芯波「図星かな?もしそうなら、岩ちゃんと彼女にはそれなりの対処が必要になるね。」
静流「ん、は、え?[そっぽを向く]お、俺は何も知らない。」
穂希「(頼むから君は何も話さないでよ‼︎)」
芯波「[笑う]アッハッハ‼︎岩ちゃんはホントわかりやすいね。」
芯波が物置きのドアの前に歩くが、静流が前を遮る。
芯波「どいてよ、岩ちゃん。」
静流「はぁ…言っただろ?客じゃないなら帰れ。友達だからって贔屓するつもりはない。」
芯波「そっか。」
ドカッ‼︎[芯波が静流の傷口を押さえている左手に右フック]
静流「ぐはっ‼︎[吐血し、膝をついて苦しむ。]」
穂希「(岩龍‼︎)」
芯波「ごめん、岩ちゃん。このチャンスを無駄にはできない。安心して。今回は岩ちゃんを見逃すよ。」
芯波が静流を避けて、物置きのドアの前に立つ。
穂希「(まあ、そうだよね。結局こうなる運命なんだよね…ありがとう、岩龍。他人でここまで優しくしてくれたのは君が2人目だよ…)」
ギィィ[ドアを開ける]
穂希「…」
バタン‼︎[ドアが思いっきり閉まる]
穂希「何⁉︎」
芯波から物置きの中が見えないぐらいにドアを半分開けたときに、静流がドアにもたれかかって思いっきりドアを閉めていた。
静流「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
芯波「岩ちゃん‼︎」
穂希「(岩龍⁉︎[自分の顔を抑える]…もういいよ。君はどうしてそこまでするの…?そこまでして君に何の利益になるの…?[涙を流す])」
静流「はぁ、はぁ、はぁ…ここに拳銃がある?ここに漣穂希がいる?はぁ…そんなことどうだっていい。はぁ、はぁ…ここが俺の家で、ここに俺がいる…はぁ…お前がわかっておくべきことはそれだけで十分だ。違うか?」
芯波「えーっと…ごめん岩ちゃん。何言ってるかわからないな。脅しなのかもしれないけど、僕には効かないよ。昔からそうだったで…」
ガチャガチャガチャ
芯波「ん?[後ろを振り向く]」
ガチャガチャガチャガチャ[少し地面が揺れる]
穂希「(何?何が起きてるの?)」
芯波「[足がすくむ]……う、うそ…嘘だ…‼︎[目から鱗が落ちるように驚き、開いた口が塞がらない]…が、岩ちゃんが…磁力の能力者…なの…⁉︎」
芯波の目の前には、店の鉄製の商品を磁力で組み合わせた無数の手がある。
穂希「[驚きで体育座りから、ドアに両手を当てて膝立ちをする]じ、磁力…⁉︎嘘でしょ…⁉︎ど、どうして岩龍があの能力を…⁉︎」
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ[無数の手が崩れ落ちる]
芯波「え…?」
ドサッ‼︎
芯波が静流を見ると、物置きのドアにもたれて座っている。
静流「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。ぐっ‼︎[痛む]」
穂希「岩龍‼︎」
芯波「[放心状態]…………岩ちゃん…」
静流「…なぁ芯波…」
芯波「………え、あ、な、何?」
静流「…今聞こえたか?漣の声が…はぁ…」
芯波「う、うん…」
静流「アイツはな…はぁ…親が殺されて…いつか殺してないのに親殺しの疑いで報道されて…いつか孤独になって…いつか死にたくなるほど辛くなる…はぁ…これって…俺の人生に似てると思わないか…?」
芯波「…‼︎」
静流「父さんが殺されて…黒髪だからって蔑まれて…孤独になるしかなくなって…逃げる場所もなくなって…何度死のうと思ったことか…」
芯波「…うん。」
静流「はぁ、はぁ…なぁ芯波。お前は…お前だけは…アイツの側にいてやってくれ…はぁ…孤独だとな…生きる理由がないとな…[涙を流す]…生きることを否定されるとな…人間は生きていけない…俺の二の舞にはなってほしくないんだ…はぁ…だからお前だけは…お前だけでいい…アイツが俺みたいにならないように…側にいてやってくれ…はぁ…これは俺の最後のお願いだ…はぁ、はぁ…」
穂希「[涙を流す](岩龍…)」
芯波「…[帽子を深く被る]…ごめん、岩ちゃん。君の能力を見て、気分が変わったよ。」
ドカッ‼︎[芯波が静流の顔を蹴る]
静流「ぐはっ‼︎[気絶する]」
芯波「僕は彼女の側にいられない。でも君ならいられる。だから、君には生きてもらわなくちゃならない。しかも、君にやってもらわなくちゃならないことだってある。……君には生きる理由があるはずだよ。死ぬだなんて、僕が許さない‼︎」