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満腹のサメと小児性愛者(ペドファイル)

 令和2年8月末、とある有名ショタコン絵描きの方によりショタラブドールレビュー漫画がツイッターにて投稿されました。
 その内容は、以下のようなものです。

ショタラブドールを購入したら、自分の想像以上にラブドールにハマってしまった。
ショタコンは他の人が思っているより多く存在しているが、ショタコン用の性コンテンツは少ないためこのドールにより魂が救われた
(ドールの写真を記載する部分もあり)

そして最後は

現実の男児に手を出す前に是非

といったような一文で締められていました。

 このツイートにはたくさんいいね!がつき、拡散されていました。いわゆる『バズった』のですが、

『試しにドールを購入してだんだんエスカレートしていく様子』
『記載されていたドールの生々しい写真』
『最後の「現実の男児に手を出す前に〜」の一文』

が主な火種となり炎上、そして肯定派と否定派の大論争へ発展してしまいました。
しかも、

小児愛者は犯罪予備軍なのか?
小児愛者は病気なのか?
小児愛者には人権がないのか?
ラブドール使用は抑止になるのか、むしろ現実の男児へ関心が高まるのか?
ラブドールは規制されるべきなのか?
創作と現実の区別というものはあるのか?
小児愛は性的指向なのか、性的趣向なのか?LBGTと同列なのか?

等々、たったひとつのツイートから多方向へ飛び火し、その先々でまた燃え上がるというような大事態になったのです。

否定派は小児愛者(ペドファイル)を嫌悪している?

 瞬く間にTwitterで燃え広がったこの論争でしたが、その中で違和感を感じる点がありました。それは、

否定派は、小児愛者やオタク、ラブドールを差別、気持ち悪がっているから否定している

という認識を多くの方々が持ちがちであることです。

 私は『どちらかといえば否定派(肯定派が0で否定派が100だったら65程度)』ですが、オタクの方々を嫌っているわけではないし、ショタコン漫画やラブドールを規制してほしいとも思っていないです。
 私自身、思春期時代はオタクでしたし、セクシャルなものに対しても許容範囲が狭いか広いかだったら広い方です。ラブドール(女性型のものですが)の存在もずっと前から知っていましたが、気持ち悪いと思うどころかそのクオリティの高さに感心してたぐらいでした。
 それにそもそもこの漫画をはじめて目にしたときは否定派でもなかったのです。
 しかし、この漫画に対する他の方々の意見を目にし『もしやこれは世間一般的には公の場で公開する内容ではないのでは?ゾーニングすべきなのでは?』と思い直しました。

否定派の方々の中には『オタクアンチ』どころか『ご本人自身がディープなオタク』といった方も少なくなく、その彼らは特に『誰でもみれる場でこの漫画を公開した』という点に対して苦言を呈されていました。

 このドールと同じぐらいの少年達やその親達、幼い頃性被害にあった人達等、この漫画が目に入れば精神的ダメージを受ける人や不安を抱く人は多いだろう。
 特に最後の一文は「小児愛者は一歩間違えれば現実の児童に手を出すかもしれない」という不安感を植え付ける。

といった理由でです。

 がしかし、そういった否定派に対し、

実際のこどもには手を出していない無罪の小児性愛者(ペドファイル)を犯罪者予備軍扱いしているツイフェミのような人達

 といった印象を根強く抱いた方々もこれまた多く、実際にそういった内容で否定派を批判するツイートも多く見受けられました。

 小児性愛はある意味セクシャルマイノリティのひとつかもしれません。
 しかしLGBTはお互いの合意の上であれば性的関係を持てますが、小児性愛は違います。合意ありなしに関係なく13歳未満のこどもと性的関係を持つことは法律で認められていません。冗談でなく、『手を出したら犯罪者』なのです。
 
 だからこそ、ラブドールでの性処理に対し、

 現実の男児に手を出す代わりに2.5次元のショタラブドールで性処理することはセーフだし悪いことでもなんでもない。むしろいいことだ。

と肯定派の方々が言っている意味も十分わかりますし、ラブドールでの性処理も悪いことでは決してないと私も思います。

 ですが、『煙草を吸わない人より吸う人の方が大麻に手を出しやすい』みたいな話も実際にありますし、『現実の男児に手をださないようにショタラブドールで性処理している』という公言により、

ラブドールでの性処理がむしろ現実の男児に手を出すトリガーになってしまうのではなかろうか…

 という不安が少なからず芽生えてしまう人がいるのも当たり前のことなのでは?とも感じてしまいます。
 それがこどもを持つ親御さんや実際に幼少期に性被害に遭われたことのある人であれば尚更です。

満腹のサメが海にいるのをみているかのような心境

 私も私なりに今回の大論争から精一杯想像力を働かせて考えていました。その末に、『否定派の方々の心境は人がサメを間近でみたときのそれと酷似している』のでは?と思い至りました。
 サメはかの有名パニック映画『JAWS』でのイメージの通りに人を襲うものもいます。しかし、まず人を襲う可能性のあるサメは全体の10%程で『JAWS』に登場する人喰いサメ『ホオジロザメ』でさえも空腹でなかったら積極的に人を襲おうとはしないらしいです。(そもそもホオジロサメが人を襲うのも主食であるアザラシだと勘違いするからだそうで…)

 もしもの話ですが、近くにこのような海があるとします。

・人も普通に泳いでいるが、複数のサメがそこの海で放し飼いされている
(柵もなし、サメは人の近くを含め自由に行き来できる)
・そこの複数のサメは人を襲う可能性があるもの(ホオジロザメやオオメジロザメ)からプランクトンしか食べないもの(ジンベイザメやウバザメ)まで様々な種類がいる
・サメには餌をたっぷり与えていつも満腹だし人を襲ったことはないから大丈夫だとそのサメの飼い主が言う
・その海は近くにあり、よく通るのでその海の光景が見ようとしなくても目に入る

 現実にはあり得ない状況ですが、こんな海で泳いだらとても怖いだろうと思いますし、泳がなくても見てるだけでひやひやしてしまうと思うのです。
 見てひやひやするだけならまだいいのですが、人によっては見てるだけで精神的ダメージを負うのだろうと思います。例えば、そこの海で泳がなければならない人とその人の身内、一度でもサメに襲われたことのある人等はそうなのではないでしょうか。
 ですから、『見てて精神的ダメージを負う人もいるのでせめてサメと人が接触しないように対処してくれませんか?』という要望も出す人もでてくると思うのです。
 しかし、そういった人に対して、

『ここのサメは満腹な状態にしてて人は襲わない。そんなことを言ってたらサメがかわいそうですよ』
『サメ映画の見過ぎなのでは?』
『サメが凶暴で悪い生き物だから駆除すべきだと思ってるからそんなことを言うのですか?』
『サメだって生きているんですよ。それはあなたのエゴですよ』

という言葉を返すとしたらそれはやっぱりちょっと優しくないのかなと考えてしまいます。(もちろん、中には不安になって『見てて恐ろしいからそんな凶暴な生き物は駆除すべき』という主張をする人もいるかと思いますが)

 この『見てて怖いからゾーニング等の対処してほしい派』と『見てて怖いしそれは悪い存在だから駆除してほしい派』を一括りにされて逆に批判されてしまう、これと同じ状況がこのショタラブドール漫画の論争でもよく見られました。

 そして人とサメの接触をしないように対処していかないとどうなるかを想像してみると

・サメ自体を恐ろしい存在に感じてしまい、ジンベイザメやウバザメ等の全く人を襲わないサメですら恐怖に感じてしまうようになる 
・サメは怖いからといって実際にサメ全体を駆除しようとする人が増える

といったことも起こり得るのではないかと思うのです。これも今回の件と通じる点です。
 『今回の件で現実の児童や親に配慮していたオタクですら恐怖を与える存在になってしまう』
これもまた否定派に属するディープなオタクの方々がかなり懸念していることです。

 それに、

『私のサメはたくさん餌をあげているから人を襲ったことはないですよ。でも餌をあげなかったら人を襲うかもしれませんよ』
と公言している人のサメがもともと人を襲う可能性が0である種類のサメだった

というパターンがさほど珍しくなく、そういったこともこの件を余計ややこしくさせてしまっているのではと思ってしまいます。
 ※後に件のショタラブドールレポ漫画の作者の方も実は恋愛対象は女性だったことを明らかにしています。

おわりに

 今回の件でいえば漫画の作者さんに同情の念も少しありますし、例えばpixiv等に投稿しリンクをTwitterに貼り付けなどすればこんな炎上することもなかったのかなとも思います。
 件の漫画は女性らしいタッチ(実際は男性の方ですが)でかかれており、Twitterで人気のエッセイレポ漫画そのものでした。ただ、内容は小児性愛を連想させるものではあったのは否定できません。
 だからこそ、読み手によって受ける印象が全くといっていいほどに違い、こんなに拡散されて終いには炎上となってしまったのだと思います。

長々とかいてしまいましたが、つまり私が伝えたかったことは、

 ショタラブドールレポ漫画を目にして『まるでサメが人に近づいてるのを目にしたかのような心境』になり、精神的ダメージを受ける方も普通にいるわけなので、そういった方々に配慮していただければいいなと思っています。
 オタクやラブドール自体を差別してはいないのでそこはよろしくお願いします。

というものです。
 Twitterでみる限り、他の多くの方々もこういった主旨の意見を述べていました。

 もしホオジロザメが地元の海で人の近くで泳いでいたとしたら、被害に遭わないようになんらかの対処をするはずです。しかし、人の近くを泳いでるだけで駆除するのはさすがに残酷でかわいそうなのでホオジロザメが人に近づかないようにする等の対処をすると思います。
 それは現実の児童へ性的関心がある小児性愛者の方に対しても同じだと思います。
 しかし、当然人とサメは違いますし、本人の人権も守らないといけませんので人との接触を断たせることもしてはいけません。そうなると最善の対処法はやっぱり治療を受けてもらうことなのだと思います。

 令和の今、Twitterは既に公共の場となっています。ネットでも多くの方々の目に入るかもしれないという配慮が必要な時代になってきたなとひしひしと実感しています。

 

 

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