人工知能が人間を滅ぼす? 映画『EX MACHINA』
(この記事は2015年7月16日に書かれたものです)
あなたはインターネットで調べものをするとき、検索エンジンは何を使いますか?Google?Yahoo?Amazonや楽天で買い物をしたり、欲しい商品を検索したり、という経験もあるのではないでしょうか。
その画面に以前検索した商品の広告が表示されたり、ときにはAmazonなどからおすすめ商品のメールが届いたりしませんか?あまりにも自分の趣味嗜好を把握されすぎていて、私は時に怖いと感じます。
これから紹介する映画『EX MACHINA』(日本公開未定)では、人々の検索結果によって得られる膨大な情報が物語のキーになってきます。
世界最大の検索エンジン企業「Blue Book」で働くプログラマー・ケイレブは、社内のコンテストで優勝し、カリスマ的な存在で現在はコロラドの山奥に住むCEO・ネイサンと一週間の共同生活を送る権利を得ます。そこでケイレブは「チューリング・テスト」を実施するようにネイサンから指示されます。
※チューリング・テスト:アラン・チューリングによって考案されたある機械が人工知能であるかどうかを判定するためのテスト。テストを行った人のうち、30%の人がそれが人間かコンピューターか分からなければ、それは人工知能だと言われている。
※人工知能(artificial intelligence、AI):人間の脳が行っている知的な作業をコンピュータで模倣したソフトウェアやシステム。人間の使う自然言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりする。あらかじめインプットされた行動しかできないコンピュータプログラムとは一線を画す。
巨大企業のCEO・ネイサンはなんと「インターネットを通じて集めた人間に関するあらゆる情報」を使い、人工知能を開発していたのです。
被験者の人工知能はエヴァという人間そっくりの美しい女性。体の部分はむき出しで機械であることが明白であるにも関わらず、なぜかとてもリアルです。
テストを行うごとに、エヴァに惹かれていくケイレブ。なぜなら彼女は彼の理想のタイプそのものだったのです。恥ずかしいから服を着る、と言って選ぶ服も彼の好みにぴったり。それはなぜかというと…というお話。
登場する会社の名前が「Blue Book」という名前でGoogleやFacebookを想起させるように、こういった企業は実際に人工知能の開発に乗り出しています。
この映画を観終わった直後はそこまで思わなかったのですが、次第にじわじわと恐ろしくなってきました。私たちが普段、検索している情報はすべて検索エンジン企業に収集されている。それを駆使していつか人間の行動をそっくりそのまま行える人工知能が作られてもおかしくないし、実際に作られている。もちろん、介護など人手の足りないところでは活躍するかもしれないが、人間と同じように考え行動するということは、問題が発生してもおかしくない。(参考:AIは怖い?Chikirinの日記)
実際、イーロン・マスクやラリー・ページ、ビル・ゲイツといった大物たちが「人工知能の恐ろしさ」「これからの可能性」について語っています。その内容が、この映画の予告編にも使われており、とても印象深いものになっています。
人工知能と上手に付き合っていくために、人間はどうしたらよいのか。とても考えさせられる映画でした。
この映画は、建物のデザインや舞台となっている場所の自然がとても美しく、それにより悲劇が引き立った内容になっています。上映時間も約1時間50分とコンパクトで、アメリカンサイズの超特大コーラを飲んでも、トイレに行きたくなることはなく集中して鑑賞できます。
劇中にキョウコという日本人女性が出てくるのですが、演じている方はソノヤ・ミズノさんという日本生まれのイギリスで活躍しているバレリーナさんでした。彼女のミステリアスな演技も必見です。
シンプルなようでいてこれからの世界について考えずにはいられない映画なので、いつか日本でも公開されたらいいな、と思います。
EX MACHINA
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