
BRIDGE選定チームインタビュー『食がつなぐ、聴くでつながる心身の健康増進プロジェクト』
静岡市が主催する知・地域共創コンテスト、スタートアップ提案型「BRIDGE」。この取り組みは、地域が抱える多様な社会課題に対し、スタートアップや地域団体が行政と連携し、新たな社会システムの構築を目指すものです。昨年11月に開催された二次審査会では、厳正な審査を経て5つのチームが選定され、それぞれが実証実験フェーズへと進むことになりました。本記事では、選定されたチームの担当者らにインタビューを実施。選定されたビジネスプランの内容やコンテストへの応募背景、実証実験の進捗状況、そして今後の展望についてお話を伺いました。
<共創チーム>
テーマ「食がつなぐ、聴くでつながる心身の健康増進プロジェクト」
チーム:株式会社Lively × 株式会社天神屋
<プロフィール>
氏名:岡えりさん
所属:株式会社Lively

-まずはじめに、自己紹介と会社概要についてお聞かせください
岡さん:株式会社Livelyは2020年に創業しました。私はもともと作業療法士として7年間勤務した後、専業主婦として3人の子育てに専念しました。再び働きたいと思ったとき、自宅でできる仕事としてオンラインで人の話を聞く活動を始めました。そこで、多くの人が「話を聞いてもらいたい」と感じていること、そして「話をすることで元気になる人がいる」ことに気づきました。加えて、精神科の医療機関での勤務経験から、精神疾患の未病ケアの重要性を実感していたこともあり、話をすることが心の健康維持に役立つのではないかと考えました。また、私自身が子育てをしながらも働く選択肢を得たことで、孤独感が解消された経験もありました。
これらの経験を通じて、「人に話すこと」がメンタルダウンを未然に防ぐ一つの方法になり得ると確信しました。そして、社会課題の解決と、「働きたいけれど選択肢がない」と感じる人々の支援を両立させるために、Livelyを創業しました。
事業内容としては、オンラインで話を聞いてもらうサービス「LivelyTalk」を展開しています。このサービスでは、アクティブリスニングという聞き方を提唱しており、単に相槌を打つだけでなく、話し手の本質的な思いや背景にある感情を聞き取り、さらに質問で深掘りしていく手法を用いています。また、この聞き方が企業の営業やマネジメントにも役立つことから、企業向けの研修事業も行っています。私たちのミッションは「聞くコミュニケーションに働くチャンスを作り社会の孤独を減らす」ことです。
-今回、BRIDGE 2024に応募しようと思われたきっかけは何ですか?
岡さん:BRIDGE 2024を知ったきっかけは、デロイトトーマツの方からのメールでした。私たちの事業は社会性が高いと自負しておりますが、「話を聞いてもらう」という価値を広めるには時間がかかると考えていました。そのため、自治体と連携して事業を展開することが、サービスの発展に役立つと考え応募を決めました。応募に際しては、自分たちの強みをどのようにテーマにフィットさせるか、自分たちのやりたいことと外れないようにするにはどうすればよいかを考えました。

-ご提案いただいたビジネスプランの概要を教えてください
岡さん:今回のプランは、静岡市民のウェルビーイング向上を目指すものです。特に、食と社会交流の二つの要素を組み合わせて、ウェルビーイングな人を増やしていく取り組みです。具体的には、天神屋さんで買い物をする方々、特に一人で食事をする方々を主な対象として、オンラインで話を聞く体験を提供します。この取り組みでは、LINEを活用したAIチャットボットを導入し、利用者が気軽に相談できる環境を整えます。食事の悩みや日常的な問題について相談できるようにし、必要に応じて天神屋さんの商品やLivelyのサービスを自然にレコメンドする仕組みを構築します。
-静岡市においてどのような地域課題を解決し、地域や経済にどのような変化をもたらしたいと考えていますか?
岡さん:日本全体で5人に2人が孤独を感じているという統計があります。静岡市でも、人口減少や単身世帯の増加に伴い、孤独・孤立が課題となっています。私たちは、一人一人がウェルビーイングな状態になることで、結果として社会全体が活気づくと考えています。そのために、個人が自分の健康に関心を持つ意識を高めていくことが必要だと考えています。私たちのサービスを通じて、人々が自分の気持ちや生き方を大切にできるようになり、それが社会全体のウェルビーイング向上につながることを目指しています。
-実証実験で得たい成果や進行中の課題について教えてください
岡さん:現在、AIチャットボットの開発を進めています。天神屋さんの商品情報を組み込み、利用者に最適なタイミングで必要な情報を提供できるよう設計しています。また、天神屋さんの人気商品ランキングなどの情報も活用し、AIチャットボットのキャラクター設定にも反映させる予定です。課題としては、どのようにすれば利用者に興味を持ってもらえるかという点があります。以前の展示会での経験から、診断テストのような形式が人々の興味を引きやすいことがわかりました。そのため、今回もキャラクター診断のような要素を取り入れ、利用者が自然に興味を持てるような工夫を検討しています。

-今後の展望についてお聞かせください
岡さん:今回の実証実験を通じて得られたフィードバックを基に、サービスの改善と拡大を図っていきたいと考えています。将来的には、天神屋さんだけでなく他の企業とも連携し、より多くの市民に必要な情報やサービスを適切なタイミングで提供できるプラットフォームの構築を目指しています。また、このプロジェクトで得た知見を他の地域にも展開し、日本全体の孤独・孤立問題の解決に寄与していきたいと考えています。行政、地域事業者、そして市民の皆様との協力関係を大切にしながら、持続可能なコミュニケーションサービスの提供に努めてまいります。
-共創事業として取り組む中で得られた学びや印象的なエピソードはありますか?
岡さん:静岡市の職員の方々の熱意に非常に感銘を受けました。選考の段階から私たちの会社について詳しく調べてくださり、真剣に向き合ってくださっていることを感じました。また、中間報告の際には、市役所の方々が一緒に考えてくださり、「これがLivelyらしさですね」といった具体的なフィードバックをいただきました。
また、静岡市を訪れる機会を得たことで、街の魅力を直接体験することができました。駅を降りた時の空気感や、人々の温かさ、美味しい食事など、静岡市の良さを実感し、プロジェクトへの思いがさらに強くなりました。
-BRIDGE 2024への参加を通じて得た学びや気づきはありますか?
岡さん:BRIDGEを通じて、地域事業者との連携の重要性を改めて実感しました。天神屋さんとの協業により、新しいサービス展開の可能性が広がりました。また、行政との直接的な連携により、市民への認知拡大やサービス導入へのハードルが下がることを実感しています。さらに、このような取り組みを通じて、単に問題を指摘するだけでなく、自分たちの町は自分たちで良くしていこうという意識を広げていくことの大切さを学びました。
-次回参加を検討している方々に向けたアドバイスとして、BRIDGEの魅力や、挑戦する際の心構えなどを教えてください
岡さん:BRIDGEは、自治体と直接連携できる貴重な機会です。応募の際は、現在取り組んでいることだけでなく、「もしかしたらこんなふうにできたら面白いかも」というアイデアも含めて相談してみることをお勧めします。市の職員の方々も一緒に考えてくださるので、新しいアイデアが生まれる可能性があります。BRIDGEを通じて、自分たちのプロジェクトの可能性や課題をより深く認識することができると思います。
今回は、株式会社Livelyの岡さんにインタビューさせていただきました。インタビューでもご紹介いただいたように、各チームでは実証実験を進めています!3月には、取り組みを報告する成果発表会を予定しています。