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UNITE選定チームインタビュー『次世代のスマート自治地域団体の負担軽減&活性化』
静岡市が主催する知・地域共創コンテスト、行政課題発信型「UNITE」。この取り組みは、地域が抱える多様な社会課題に対し、スタートアップや地域団体が行政と連携し、新たな社会システムの構築を目指すものです。昨年11月に開催された二次審査会では、厳正な審査を経て5つのチームが選定され、それぞれが実証実験フェーズへと進むことになりました。本記事では、選定されたチームの担当者らにインタビューを実施。選定されたビジネスプランの内容やコンテストへの応募背景、実証実験の進捗状況、そして今後の展望についてお話を伺いました。
<プロフィール>
氏名:浦山 久美子さん、奥間 和弘さん(所属:ジャパンベストレスキューシステム株式会社)
氏名:前田 尚さん、佐倉 智司(所属:株式会社グッドライフ)
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<共創チーム概要>
テーマ:『次世代のスマート自治地域団体の負担軽減&活性化』
チーム:ジャパンベストレスキューシステム株式会社×株式会社グッドライフ×静岡市(市民自治推進課)
-まずはじめに、自己紹介と会社概要についてお聞かせください
浦山さん:ジャパンベストレスキューシステムの浦山と申します、プロジェクトリーダーをさせていただいています。よろしくお願いします。
奥間さん:ジャパンベストレスキューシステムの奥間と申します。 基本的には弊社が提携している作業パートナー店さんを管理している部門の責任者をしております。よろしくお願いいたします。
前田さん:グッドライフの前田と申します。社内では企画、開発、販売の方を担当しております。よろしくお願いします。
佐倉さん: グッドライフの佐倉です。実証実験で使用する「ジチカン」というシステムの担当者をしております。よろしくお願いします。
ー今回、UNITE2024に応募しようと思われたきっかけは何ですか?
浦山さん:今回の応募に至った背景には、DX推進だけでなく、自治会業務の効率化や支援を求める現場のニーズがありました。具体的には、自治会業務の負担軽減について、静岡市内で自治会役員をされていた社長のお知り合いから当社に相談が寄せられていたことがきっかけです。
そんな中で、もともとお付き合いのあったグッドライフさんから声をかけていただき、自治会のニーズが重なったことで、DX推進のみならず、実際の現場作業の支援も含めた形で総合的な提案を行うことができると判断しました。
これまで静岡市役所への訪問や、自治会業務の課題に関する取り組みを通じて培った知見を最大限活かし、グッドライフさんとの連携により、現場の負担軽減とDX推進の双方を実現できると考え、今回の応募に至りました。
-応募に至るまでの課題や期待していたことがあれば教えてください。
浦山さん:通常、市役所関連の取り組みでは入札を通じた形式が多いという印象がありました。しかし、UNITEでは、市役所側から具体的な課題が提示される形となり、行政の方々にも大きな協力を期待できるという点が非常に魅力的でした。
このように、市役所や自治体の課題解決に向けた密接な連携が可能な形で進められる点が、私たちとしても大きな後押しとなりました。
-ご提案いただいたビジネスプランの概要を教えてください。
浦山さん:今回のビジネスプランは、自治会・町内会の業務を効率化し、負担軽減を図ることを目的としています。業務は以下のように分類され、それぞれに適した支援を提案しています。
業務整理の3分類
会員で対応すべき業務:防災訓練や地域清掃など。
会員以外でも対応可能な業務:運営管理や連絡業務など。
見直し可能な業務:重複した作業や非効率的なプロセス。
DXによる運用管理の支援
運用管理部分を効率化するため、ITツールを導入。具体的には、電子回覧板や会員名簿管理、イベント企画などに対応する「ジチカン」というシステムを提供します。実働作業の外部委託
地域の作業店や外部業者を活用し、実際の作業負担を軽減。特に、役員や会員の負担となっている作業を重点的にサポートします。費用負担の分担案
自治会費や自治体の補助金を活用し、運用コストを抑える。
地元の店舗との連携を図り、広告費やクーポンの活用で収益化。
最終目標
自治会・町内会の持続可能性を確保しつつ、地元経済の活性化も視野に入れたモデルを構築します。
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このプランは、自治会と自治体、地元企業が連携し、地域全体での効率化と活性化を目指しています。具体的なロードマップとして、まずは実証実験を行い、その結果を基に改善を重ね、地域全体への展開を進める計画です。
ー静岡市においてどのような地域課題を感じていますか?
浦山さん:静岡市では、防災に関する課題が特に重要だと感じています。南海トラフ地震のリスクが取り沙汰される中、地域全体で防災対策を進める必要性が高まっています。自治会長との会話からも、防災への関心が非常に高いことが伺えます。特に川の氾濫や津波といった具体的なリスクが現実味を帯びていることが、静岡市特有の課題として挙げられます。他の自治体と比較しても、この点において静岡市の取り組みや考え方には独自性があると感じています。
ーこちらの事業を通して地域、経済にはどういう変化を与えていきたいのか教えてください。
浦山さん:この事業を通じて、地域と地元経済におけるコミュニティの再構築と持続可能な循環の実現を目指しています。もともと当社のビジネスモデルは「駆けつけサービス」を軸に、地元の作業店を活用して困っている方々を支援するものでした。静岡市では高齢化や少子化が進み、地元の助け合いが減少していることが、自治会の課題をより深刻化させています。
本事業では、自治会の業務を地元の業者や店舗と連携して解決する仕組みを構築することで、新たな形で地域コミュニティを繋げていきたいと考えています。具体的には、自治会が抱える課題や作業を地元業者に依頼し、地元で発生する仕事を地元の人々で賄う「地産地消」の仕組みを取り入れます。
これにより、縮小傾向にある地域コミュニティの活性化を図るとともに、地元経済にささやかながらも循環型の仕組みを提供することを目指しています。このモデルが機能すれば、地域の課題解決と経済の安定を両立できると考えています。
-事業を通じて目指す社会像はどのようなものですか?
奥間さん:目標としては、まず自治会の皆様がどれだけ負担を軽減できるかが最も重要です。DXや作業の外部委託についても提案していますが、回覧板や連絡事項をデジタル化する際には、高齢の方々にとってクリアしなければならないハードルがあります。それをできないからと言って諦めるわけにはいきません。地域の皆が誰一人取り残されない社会を作ることを目指しています。そのため、実証実験に参加していただいている自治会の皆様に満足してもらい、使いやすいサービスとして評価していただけることが最も大切です。
その結果を踏まえて、静岡市内の他のエリアや、過疎地などでもサービスを提供できるようにしたいと考えています。過疎地では回覧板を回すだけでも大変なところがあり、さらに多くのハードルがあると予想されますが、今回の実証実験を通じてサービスに興味を持ってもらい、静岡市以外の自治会にも利用してもらえるような形にしていきたいです。そのために、実際のノウハウを積み重ねていくことが重要だと感じており、その経験を活かして他の自治会にも展開できるようにしたいと考えています。
浦山さん:実はうちの社長が富士市に住んでおり、最近、富士市をはじめ静岡県内の複数の市で市民向けのアンケートが行われたそうです。その中に電子回覧板に関する質問があり、これに静岡市の取り組みが影響しているのではないかと感じました。他の自治体も同様の取り組みを始めているのは理解しており、うまくいかない理由についても認識していますが、今回、静岡市で得られるノウハウが市場化できれば、それが他の自治体にも有益なモデルとなると考えています。
具体的には、「静岡モデル」として、県内・県外の他の自治体にもサービスを提供できるようにしたいです。このノウハウを他の地域に広めていくことが、私たちにとって大きな成果となり、静岡市がその成功事例となることを目指しています。そのためにも、このプロジェクトがうまく進んでいくことを切に望んでいます。
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ー実証実験のスケジュール感や今後の動きを教えてください。
浦山さん:現在、実証実験は、主に3つの取り組みを進めています。まず、「ジチカン」システムの試験運用として、2つの自治会で一部機能の利用を開始します。同時に、自治会へのヒアリングを実施し、外部委託可能な作業の洗い出しを行っています。次に、費用負担の検討を進めています。市の補助金を活用する可能性を探るとともに、市役所が発行する大量のチラシやパンフレットを「ジチカン」システムに統合することで印刷費を削減し、その分をシステムのライセンス費用に充てる仕組みを模索しています。
さらに、地域や教育機関との連携も検討を進めています。システム導入拡大に向けて、中学校生にはシステム操作説明のサポートを依頼し、地域コミュニケーションの軸になっていただけないかをご相談しています。また、静岡大学の学生には、イベントの企画や一部の自治会作業の支援が可能かを協議、模索しています。
これらの取り組みにより、地域の課題解決と事業継続の可能性を探ると同時に、効率的なシステム導入や地域との連携を強化していきます。今後のスケジュールとしては、これらの調査や実験結果を3月末までに取りまとめる予定です。
-共創事業として取り組む中で得られた学びや印象的なエピソードはありますか?
佐倉さん: これまでの取り組みでは、主に自治会長さんとの連携が中心でした。自治会長の多くはITに不慣れな世代であるため、実証実験への参加に対して不安を抱かれることが多く見受けられました。しかし、実際にシステムに触れてみると「思ったよりも簡単に使える」といった反応があり、ITに対するハードルが少しずつ下がっていく様子が印象的でした。一方で、自治会ならではの情報が多く含まれるため、セキュリティに対する懸念も共有されています。それでも、紙の回覧板では難しかった安否確認がITツールによって実現できる点に、前向きな意見をいただくことができました。
例えば、防災に関する局面では、12月1日に静岡市が先行してアプリを活用し、防災訓練や対談パーティーの開催を通じて、地域の中で「これなら使えそうだ」という理解が進みました。このように、行政や地域の方々と直接やり取りする中で得られる現場の声やアイデアは、共創の重要性と学びの多さを実感させるものでした。
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ー今回行政や地域と連携して取り組みを進めて来られたと思いますが、 その中で印象に残ったところ、良い点、難しかった点あればお聞かせいただければと思います。
前田さん:印象に残った点は、静岡市の本気度を強く感じられたことです。静岡市の取り組みに対する真摯な姿勢が、私たちにとって非常に重要だと感じました。浦山さんもおっしゃっていたように、今後本当にこのプロジェクトを展開できるかどうかが重要なポイントであり、そのためには行政との協力が不可欠です。この協力関係がうまく構築できれば、その後の横展開にもつながるのではないかと感じています。
浦山さん:一番印象的だったのは、審査会での出来事です。私たちの会社の社長も出席しており、審査発表後は「やったね!選定されたね!」と喜んでいたのですが、会が終わり後ろを振り返ったとき、静岡市の市民自治担当さんが号泣されているのを見て、とても感動しました。私たちも嬉しかったのですが、前田さんがおっしゃったように、市の方々が本気で取り組んでいたからこその反応だったのだと思います。
その後、自治体の職員の方々や自治会長、自治会の役員の皆さんともお会いし、皆さんが非常に協力的で前向きに進めていることを感じています。今は本当に良いチームワークで進行しているなと実感しています。
奥間さん:最初の頃、市役所の方々が”共創”にどう関わるのか、どのように参加されるのかがイメージしづらいところがありました。最初のキックオフの時に一緒にテーブルに座って進めていく中で、どのような意味合いで参加されているのか少し疑問に思っていました。また、Slack(コミュニティツール)にみんなが参加し始めたときも、どのように関わっていくのかが不安だったのですが、実際には、市役所の方々は私たち以上に積極的に意見を出してくださったり、動いてくださったりしたので非常に助かりました。
佐倉さん: 自治会の方々が自発的に参加し、熱意を持って取り組んでいただいている点が非常に印象的でした。自治会の皆さんは、これをお仕事としてではなく、収益を得る目的でなく、地域のために本気で参加してくださっているので、その熱意にはとても感謝しています。
-UNITE2024で選定された後、事業やチームにおいてどのような変化・進展がありましたか?
浦山さん:チームとしても個人的にも変化がありました。最初は、市役所側と私たち事業会社側で立場が違ったため、市役所には市役所の思いがあり、私たちはビジネスとしての継続性を考える必要がありました。利害関係の違いが壁となる場面もありましたが、今では作業を進める中で、お互いの目指すべき方向が共通してきていると感じています。
私たち営利企業としては、利益を上げることも大事ですが、それよりも市にこの取り組みを広げていくことが重要だと再認識しました。自治会の方々が実際に困っていることを身近に感じ、困っている人を助けるという私たちのポリシーに照らし合わせて、展開の方向性がより明確になったと感じています。個人的には、ここに向かう気持ちが強まり、より実態に即した、現実的な動き方ができるようになったと実感しています。
【担当課 インタビュー】市民自治推進課 長澤 瞳さん
-普段の業務への想いを教えてください。
自治会・町内会の支援に関する業務や自治会や民生委員、自主防災組織などの地域団体の課題解決に向けた庁内プロジェクトチームに関する業務を行っています。
自治会・町内会は任意の団体であり、それぞれの団体が独自で運営をされています。ただ、任意団体といっても、災害時の対応等、その活動は非常に公共性の高いものとなっています。
今、社会変化などから役員の担い手不足や、住民の参加の減少など課題を抱え、会の運営を担っている役員の方たちの苦労や悩みはこれまでになく大きなものとなっていると思います。そのような中でも、自分たちの地域をより良くしていくために、日々工夫をしながら運営をされている方たちを下支えし、一緒に課題を解決していくことができればと思い業務に取り組んでいます。
-今回テーマとしてあげていただいた部署として抱えている課題について教えてください。
自治会・町内会や民生委員、自主防災組織などの地域団体は、お祭りなどのイベントから、福祉的支援、災害時の対応に至るまで幅広い活動を行っており、活動を通して大人から子どもまで、地域の様々な人たちのつながりをつくり、住民の命と暮らしを守っていくための重要な役割を担っていただいています。
一方、地域団体は、「活動の負担の増大」、「役員の担い手不足」、「住民の参加の減少」などの課題を抱えています。将来にわたり継続して活動していくことができるよう、どのような支援が必要なのか、市としても大きな課題として捉え、令和5年度から地域団体に関わる課がチームを組み課題解決に向けた検討を行ってきました。
-スタートアップや地域との共創で苦労した点はありますか?
当チームは、地域との共創として自治会長3名にご協力いただいていました。スタートアップの皆様、自治会長方、みなさんこの取組に対して非常に協力的で「共創」に関して苦労したという印象はありません。ただ、実証実験に入ると、自治会員の皆様のご協力が必要になるため、取組についての説明を分かりやすく、所要時間など皆さんの負担にならないよう行う必要がありました。資料の構成や説明方法、内容など、もっと工夫できた部分はあったのでは、と感じていて、次の機会では取組の意義がより分かりやすく簡潔に伝わるようなものにできたらと思っています。
-スタートアップや地域との共創でよかった点や新たな発見はありますか?
今回、企業の皆様、自治会長方と一緒に取り組む中で、「やってみたい」と思ったことを実現に移すまでのスピード感に驚きました。共創チームを組み、関係者全員が当事者となって取り組むことで、目指していることに向けて何をすべきか同じ場で意見を共有し、考え、計画を立てることができました。これがスピード感につながっていると感じています。また、普段の業務では「やらなければならないこと」を優先し、新しい取組に手がつかないことが悩ましかったのですが、この取組では企業の方たちが非常に主体的に関わり、「次はあれをしたい」「これをしてみたい」とパワフルに行動してくださっていて、新たらしいことにいくつもチャレンジできています。
今回は、ジャパンベストレスキューシステム株式会社の浦山さん、奥間さん、株式会社グッドライフの前田さん、佐倉さん、市民自治推進課の長澤さんにインタビューをさせていただきました。インビューでもご紹介いただいたように、各チームでは実証実験を進めています!3月には、取り組みを報告する成果発表会を予定しています。