2024年静岡県知事選挙
川勝静岡県知事の辞職に伴う県知事選挙が5月9日告示されました。
5月26日に投開票となります。
立候補者は、大村慎一氏、鈴木康友氏、その他4名の計6名ですが、実質的には大村慎一氏と鈴木康友氏の一騎打ちになる可能性が高いと思われます。
このnoteではこの2名について概要と争点、個人的な見解についてまとめたいと思います。
大村慎一氏と鈴木康友氏の概要
ざっくり両者の比較表を作ってみました。
※作成時点で把握しているものであり、最新の情報では無い可能性があります
以下、争点について記載していきます。
リニア中央新幹線
おそらく県外の人が最も注目しているのはこの点だと思います。
ですが、ここは恐らくあまり争点にならないと思われます。
理由は以下のとおりです。
静岡県には停車しない
静岡県に停まらない、つまり自分達は使わないのだから自分達には関係無いと思うのは自然なことです。自分に関係無い事に、普通人間は興味を持ちません。
水問題は概ね解決の見通しが立っている
前回の県知事選挙の時点では、リニア工事に伴い大井川の水量が減少する、いわゆる「水問題」についての対応が不明瞭でした。
この部分は静岡県民、特に大井川流域の住民にとっては死活問題です。川勝知事が前回の知事選で大勝した背景には彼がこの点で妥協しない姿勢を見せていた実績がありました。
しかし今の状況は違います。水が減った分は大井川上流にある田代ダムの取水を抑制して、大井川の水量を確保する「田代ダム案」によって、解決の見通しが立っています。流域自治体の理解も進み、川勝知事の頑なな姿勢は県内でも浮いたものとなっていました。
水の問題が解決すれば多くの静岡県民にとってリニアは関係の薄い話であり、無関心な状態に戻るだけです。
リニアに対する姿勢に大きな差が無い
どちらの候補もリニアを推進する姿勢を示しています。一方で流域住民との対話も重視しています。
恐らくどちらの候補も静岡県民の多数の声を無視して強引に決めたり、逆に断固妨害するといった極端な対応は取らないものと思います。
一部の人が望むようなスピード感とは行かないものの、推進のスピードに多少差が出る程度で、リニアについては両候補とも緩やかに進む方向を向いていると考えます。
以上のことから、リニアについては大きな争点にならないものと考えます。
行政経験
鈴木康友氏は浜松市長を4期務めており、経験は十分あると言えます。トップを長年努めた経験は強みと言えるでしょう。
一方、大村氏も静岡県の副知事を務めた経験があり、その後も総務省などで、災害対策や新型コロナ対応の要職を経験している事から、行政についての知見は十分あると考えて良いでしょう。国との太いパイプも強みと言えます。
両候補とも安定感があり、どちらを選んでも県政が大きく混乱するという事は無いように思います。
つまりこの点についても両者は甲乙つけがたく争点にはならないと考えます。
浜松新野球場
おそらくこの点が今回の静岡県知事選挙における最大の争点になると考えています。
(筆者個人もここを最重要視しています)
ここ数年、浜松市に建設予定の県営野球場の規模、タイプについて静岡県内で大きな議論になっています。
概ね以下の3案に絞られています。
1.3万人の屋外型(事業費:70億円、年間維持費:0.5億円)
2.2万人の屋外型(事業費:100億円、年間維持費:0.7億円)
2.2万人の多目的ドーム型(事業費:370億円、年間維持費:1.3億円)
川勝元知事や鈴木康友氏が強く推しているのが3番目のドーム型球場です。
では、このドーム型球場という選択は果たして正しいでしょうか?
日本の収容人数2万人以上のドーム型球場の一覧を以下に記載します。
※カッコの中は最寄り駅から徒歩での所要時間、本拠地としているプロ野球チームです。
・東京ドーム(3分、読売ジャイアンツ)
・福岡ドーム(15分、福岡ソフトバンクホークス)
・大阪ドーム(5分、オリックス・バファローズ)
・ナゴヤドーム(5分、中日ドラゴンズ)
・西武ドーム(2分、西武ライオンズ)
・札幌ドーム(10分、日本ハムファイターズ(元))
・エスコンフィールドHOKKAIDO(20分、日本ハムファイターズ(現))
・新浜松ドーム(25分、見込みなし)
なんですか?これ。
最寄り駅から徒歩で25分。プロ野球の本拠地になる見込みも無い。圏域人口も少ない。これでどうやって採算を取るんでしょうか?
既に民間事業者からも「音楽興行のニーズはほとんど見込めない」など否定的な意見が上がっています。
この不便な場所にドーム型球場を作るというのは、素人目にも明らかにオーバースペックと言わざるを得ません。
この過剰な施設を支持団体である浜松経済界の声に応えるため、鈴木康友氏は作ろうとしています。370億円もの静岡県民の税金を使って。
(個人的には、そんなに浜松経済界が望み、採算も取れると考えるなら浜松市の税金で作って欲しいと思っています)
一方、大村氏の方はドーム型球場について慎重な姿勢を見せています。
両者に大きな違いがあるのは、この浜松新野球場についてであるため、静岡県民にとっては、この問題が最大の争点になると考えます。
「370億円もの静岡県民の税金を使って不便な場所にドーム球場を作りたければ、鈴木康友氏」
「そんな無駄な税金を使って欲しく無ければ大村氏」
という事です。
静岡県民の皆様はこのドーム球場を望みますか?
浜松系継続の是非
川勝知事は浜松市の静岡文化芸術大学の元学長であり、バックにはリニア反対と言われるスズキの鈴木修氏を始めとする浜松経済界がありました。
この構図は鈴木康友氏も同じ、言わば『浜松系』です。
この事もあり、川勝知事も鈴木康友氏も先に記載した多額の県税を使うドーム型球場を推進する姿勢を明確にしています。
15年間続いた『浜松系』の期間を更に伸ばす事を浜松市以外の自治体、特に静岡県中部、東部の人間がどう考えるか、という所が一つのポイントになると考えます。
つまり、『オール静岡』と言いながら当選したら浜松市に偏った県政を行うのでは無いか?という懸念です。
鈴木康友氏が浜松の新野球場について巨額の静岡県民の税金を使うドーム型球場を推進する姿勢を示している以上、この懸念は当然だと思います。
5/9時点で静岡県内の多くの中部、東部の市長、町長がこの点について懸念を訴え、大村氏の支持を表明しています。
『オール静岡』というキーワードは両候補が主張していますが、静岡県内の自治体から信憑性があると思われているのは大村氏の方と言えるでしょう。
国政の影響
自民党は大村氏を、立憲民主党、国民民主党は鈴木康友氏を推薦した事から名目上は与野党対決と言えます。
しかし、実際には自民党の一部は鈴木康友氏を支持したり、逆に野党系の一部が大村氏を支持したりしている状況です。
立候補を表明した時点で両氏とも両党に推薦願いを出しており、立憲民主党県連も「甲乙つけがたい」と発言していた事から、どちらの方が良いと判断したと言うよりは、鈴木康友氏の民主党時代の付き合いによって推薦が決まったように思われます。
また、両候補とも国政の与野党対立を県内に持ち込む事を望んでおらず、その意味でも『オール静岡』を標ぼうしています。
つまり、今回の県知事選挙においては成り行き上与野党対決になったものの、本質的に政党色は薄いと考えます。
どちらの候補が勝ったとしてもそれは国政与野党のどちらかが支持された、と考えるべきでは無いと思います。
まとめ
選挙では多くの場合知名度がある方が勝つので、基本的には浜松市長を長く務めていた鈴木康友氏の方が有利と言えるでしょう。
ただし、時間が経つに連れて静岡県内の多くの市長、町長が大村氏の支持を表明し始めている事から、最後までわからない接戦になる可能性もあります。
両候補の支持率を大村氏を青、康友氏を赤で色分けした場合、恐らく浜松市は赤一色、西部はほぼ赤、静岡市は青色、他の中部、東部はまだら模様、という結果になると予想します。
今回の選挙では、この「まだら」な地域が鍵を握っていると考えます。
大村氏が勝つためには知名度に勝る鈴木康友氏に対して、どうやって明確な争点を作って違いを打ち出し、追い上げを図って行けるかにかかっています。
個人的な意見としては先に記載したとおり、浜松市のドーム型野球場を最大の争点として全面に掲げるのが有効な手段だと思います。
「多額の静岡県民の税金を使う、無駄なドーム型球場に反対なら大村氏」、「賛成なら鈴木康友氏」と争点が明確であれば有権者は選択し易く、大村氏にも勝ち目が出て来ると思います。
以上、静岡県知事選挙についてまとめてみました。選挙に向けて参考にして頂ければ幸いです。
久しぶりに結果が予想できない静岡県知事選挙。
静岡県民の皆さんの一票が本当に結果を左右します。
皆さん是非投票に行ってくださいね!