【私の感傷的百物語】第四十二話 学校の怪談
以前、学校の「七不思議」についての記事を書きましたが、今回は「学校の怪談」について考えてみましょう。学校の七不思議が必ずしも怖いものばかりでないのに対して、当然のことながら、怪談には確実に恐怖要素が含まれています。
学校の怪談でまず真っ先に思い浮かぶのが、同名の映画シリーズです。小学生の頃、夏になると映画館やテレビで予告CMが流れていましたが、僕はこの時間が嫌で嫌でたまらず、絶対に観たくないと怯えていました。実際に映画本編を観ることができたのは、大学生になってからです。内容はホラーというよりファンタジーの雰囲気があって、なぜあんなにビクビクしていたのか、思わず苦笑いしてしまったのでした(ちなみに、初代・学校の怪談は、僕の住む沼津市と同じ、静岡県東部の富士宮市で撮影されたとか)。きっと、登場人物と同じ小学生という立場であった当時の僕は、この映画にものすごい真実味(リアリティー)を感じていたのでしょう。
また、同時期あたりにNHK教育で放映されていた、タイトルもよく覚えていない子供向けドラマの冒頭シーンが、やけに記憶に残っています。体育器具庫にボールを取りに来た女の子が、ふと、倉庫奥にある扉に目をやります。扉はわずかに空いており、その扉の隙間の暗闇から、小刻みに震える2つの目玉が覗(のぞ)いているのです。
僕は、怖くなってすぐにチャンネルを変えてしまったと記憶しています。情報が断片的すぎるため、番組の詳細は調べようがありません。ひょっとしたら、あの映像自体が怪奇現象だったのでは? という妄想も頭をよぎります。「最後まで観ておけばよかったな」という思いと、「このまま曖昧な記憶の方が、続きを想像して楽しむことができるな」という思いが、心の中で交差しているところです。
現実の僕の学校生活では、七不思議の時と同様に、小、中、高と、いずれも学校に伝わる怪談というものに出会うことはありませんでした。平成の時代では、架空の学校の怪談が完成されすぎていて、実際の噂が霞んでしまっていたのでしょうか(もしくは、最初から存在していなかったか……)。だから関連した自分の思い出も、前述のようなフィクション作品にまつわるものばかりです。それは、幸運であったような、残念であったような、これまたどっちつかずの心境でいます。