【散文詩】金曜日のパン屋の隅
「悪いけど君の不幸を背負うことはできないよ」、そう言われたあの夏から、私の雨はずっと止みません。止みません、もう病みません。二度と泣いたり致しません。
私はあなたに何も背負わせるつもりなどなかった。一度だって「わかってほしい」なんて言ったことなかった。人はよくわからない、相変わらずよくわからない。昨日も明日も明後日も、何が何だかわからない。
止まない雨はないというポップスを、ぼろぼろのスニーカーで踏み潰した。仕事がなくても生きていけるよって誰かが言うから、じゃあ私の人生を1日でいいから生きてみろよって言いたかった。でも口が裂けてもそんなこと言えないね、と笑って、感情はすべてビールで胸の奥に流し込んだ。そのまま琥珀になって固まったはいいものの、言葉を発するときに喉元に詰まり、きらきら光って止みません。
自分以外の幸せを願っている時間は、すこしだけ息ができた。みんな好きだから幸せになってください。あなたもね、と言われる度に曖昧に微笑んで、ありがとう優しいね、と答えては、底のない湖に向かって歩いている。誰かに手を引いてほしいのに、誰かと叫ぶことができなくて、この世のどんな芸術も私を救えない。そんなバカなことがありますか。始めから世界はバカですか。世界に生きる私もバカですか。誰も彼もが天才だろうが。
祈りには何に意味もない、と誰かが言って、戦場に運ばれていく善意の千羽鶴を思った。言葉には何の意味もない、と誰かが言って、noteとTwitterの下書きを眺めながら泣いた。うそだよ、うそだよ、全部うそ。この世は全部幻で、私もあなたも全部虚像。どこにも何もないんだよ、花びらひとつ空を舞う。
衝動的に書き綴った言葉が誰にとっての何にもならないとしても、ただかたちになって残るだけで、今はよしとしてくれよ。神様そこにいるんでしょ、既読無視しながら別の国のストーリーを上げている、わかるよ、気持ちすごいわかる。愛で救えない世界をあなたが救え。
お昼にたべたサンドイッチが美味しくて、空が青くて、私はどうにもならないままです。イエーイ バイバイ また明日
詩 2022.5.20