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天上のバレエ・地上のダンス(46)文化教室の発表会④ぽっちゃり防弾チョッキ
文化教室のバレエ講座で週一回のレッスン。もうすぐ、はじめての発表会。
笑われました。合同練習でクスクスと。
発表会目前・合同練習
百貨店の文化教室。バレエ団の先生が教えにきてくださる。
わたしは、この先生がすきだった。
1980年ごろ。世間では「バレエは小さい頃の習い事」そんな認識。
中・高校生からバレエを習うのは遅すぎる、無駄、そんな時代。
それでも先生は大きい生徒の気持ちをくんで、身体が硬くてもバカにせず、正しくバレエ基礎をていねいに教えてくださった。
先生は三ヶ所の文化教室を担当していました。仕事とはいえ、幼児・小学生・中高生、年齢もキャリアもみな違う生徒の指導。
さぞかし大変だったと思います。
これから三ヶ所の生徒が、一同に集まり舞台練習と最終チェックをするのです。
振り付けは覚えたし、衣裳もできた。
わたしは、すっかり、いい気になっていた。
バレエを習うことに成功
思いおこせば……
どうしてもバレエしたかった!
ひとりで、お年玉を握りしめ入会。身分証も要らず本人確認もなく、かんたんに。
毎月の月謝は小遣いから。発表会参加料・雑費なども格安。衣裳は手づくり。
そしてこの先生。
ラッキーが重なり、お金を払えて参加できたのです。
3歳から習っている子
各教室・クラスの生徒が先生の指示にしたがい作品を披露します。
しぶんの番までは座って観れるのです。わたしは、目を皿のようにして踊りを観ていました。
「やはり、小さいころから習っている子は違うなぁ」
じぶんとおなじ中学生ぐらいの子が5~6人。スラリとした体型。
衣裳が高そうな貸衣裳。着こなしている、キレイ!
バレエの象徴・トゥシューズを履いているので、立っているだけでバレリーナ。踊りも慣れている。
小さい頃から習っている余裕と風格。小学生のクラスでさえ優雅に踊る。バレエを踊っている。
ばらの花。
わたしには、ないものだ。
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さあ、じぶんのクラス。
みんなが見ているなかで踊りだす。
なにやら変な感じがしました。
見ている中学生5~6人が、ヒソヒソ。
太っているから
さっきのうまい子たちだ。理由は、じぶんでわかります。
わたしは中学二年生からのバレエ組。
すでに思春期で身体がまるい、ぽっちゃり体型。
バレエでは完全に太い部類。
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他のクラスメート3人は痩せていました。なのでよけいに太っているのが目立つのですね……
バレエの先生は、ひとことも痩せなさいとか、貧乏や体型をバカにすることは言いませんでした。
ほんとうに、いま考えてもありがたい。
ひとに恥をかかさない
先生は、そんなおとなのマナーも教えてくださったように思います。
いまごろからバレエ習ってさ……
クスクス……なに、あの子……
太すぎ……ププッ……
笑われても平気でした。
あたしのことクスクス笑うけどさ。
あんたたち、月謝その他、親にお金出してもらってるんでしょ?
なんでもかんでも、いっさいがっさい。
あたしは全部じぶんで払ってるよ。
ビンボウだけどね。なんも恥ずかしいことはないよ。
そう思っていました。
よくよく考えたらば、わたしも父にもらったおこづかいだ。
出どころは、おんなじ親のお金。
まさに、目くそ、鼻くそレベルでありました。
わたしは井の中の蛙。
いや、井の中のぽっちゃり。
泥水にまみれた井の中のブタ。
世間という大海を知らずでした。
クスクス笑いもヒソヒソ話も平気。
いつの間にか、厚顔無恥な防弾チョッキを手に入れたのです。
ささやかな成功体験の産物を。
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「バレエ・ダンス」の日
いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに
さいごまでお読みくださり、
ありがとうございます。