シンママの娘(23)実家に戻る
「出ていってくれと言われた」
冷静な娘の声がオットのスマホに入った。桜は早くに散っての6月。蒸しつく夜だった。しとしと空だけ泣いていた。
自分の家なので今晩は動くな
孫は、生後6ヶ月で保育所へ。
・住んでいるマンション
・娘の職場(扶養内パート)
・最寄り駅
・保育所
すべて回っても15分ぐらいの距離内にありました。電動自転車は旦那さまが買ってくれたそう。
ひとりの育児は距離が命。保育園に入れただけでも、ありがたい。
バタバタ育児と、慣れない仕事。
予想はしていたが「出ていって」の言葉。
この時期、娘は本当に体当たり人生でした。思い出そうにもポッカリ記憶がないというのです。
とにかく「朝まで動かずに」。
オットは、すぐ帰れ!とか言うかと思いましたが、それはさすがになくて、ホッとしました。
悪いことしていないのに。そりゃそうです。
マンションをすぐ追い出されるような行為があったら、どうしょう。
娘の身の危険もチラッと感じました。さいわい、そんなことはありませんでした。
娘と孫を連れてタクシーへ
朝になりました。わたしは電車で娘のマンションに向かいました。
娘は……どんな気持ちで朝を迎えたのか……。
娘も孫も普段どおりの朝。
親子ふたりだけの生活。
きょうは土曜日で保育所もお休み。ゆっくりしたかっただろうに。
保育園の道具や孫の着替え、ベビーカー。娘の大きなバック。手早く用意。
実家に帰る。身のまわりのものだけ、タクシーに詰めこみました。
もう、ここには帰らない。
旦那さまは、小さな娘と暮らそうともせず、勝手きままな実家暮らし。
たびたび怒鳴りちらす。娘はいさめるため謝る。
それは結婚生活でも何でもないのだ。
タクシーの支払い・3500円の距離。
同じ市内で、駅は5つ。近くてよかった。
遠くなら、もっと早く行動してたかもしれない。言い訳も出る、親失格だ。
鈍くて遅い自分を責めた。
これからが大変だ。
実家ぐらし
娘は実家に帰っても、これからの生活のことを考え表情は硬い。
実家天国のはずなのに。
オットもわたしも手放しで喜んではいけない。ここからだ。
「みんなで暮らそう」オットの提案。
娘は区役所の相談室に行った時、
「事情が許せば、実家に帰れば?」
その方が安全で生活に困ることはないとアドバイスされていた。
親には迷惑かけられない思いが強い娘。
自分の人生は、娘と暮らすこと。
保育所は変えたくない。孫がとても楽しそうに登園するらしい。
何もかもガラッと変えるのは、1歳児でも無理がある。環境の変化がもう起こっているのだ。
保育所を変えないとすると、いまの居住区で生活を続けないと。
月曜日から、どうするか?
実家から通勤
実家から保育所と職場へ。お迎えに行って実家に帰る。梅雨空の決意。
とにかくやってみる。電動自転車で40分。
みんなで地図を見て道をたどる。
この道が速い。これなら行けそう……
オットは孫をだっこしながらも、少し寂しげだった。
もう、マンションに帰らないと誓ったが、一回だけ行った。
電動自転車を取りに。
いつも こころに うるおいを。
水分補給も わすれずに。
最後までお読みくださり、
ありがとうございます。
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