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天上のバレエ・地上のダンス(45)文化教室のバレエ発表会③劣等感

手ぬいのバレエ舞台衣裳。
苦手だけれども、さいごまで手をうごかす。じぶんで何でもやらなければ舞台には立てない。生きることもできない。


コンプレックス増幅の家庭科

中学生では、たしかワンピースやパジャマを縫った家庭科。
布地に型紙をのせる……から、はじまる細かい作業。


わたしは、まるでダメでした。
授業を受けても落ちこぼれ、とてもムリ。
たてまえで学校の家庭科室のミシンは放課後に解放されていました。


「だれか家庭科室にいないかな?」
わたし手先は不器用。ミシンもどうしたらいいのか。
だれか、いますように。
いたら教えてもらおう……なのに……。


課題のパジャマは、恥ずかしながら途中で提出。
家庭科の先生はサラリと言った。
「おかあさんは、手伝ってくださらないの?」


みんな母親が縫ってるのよねえ。
と、言いたげな先生。
「はい」とだけ返事する。


だから放課後のミシン解放なんてさ、だれもいない。


「わけあり家庭」の想像もできないのか先生は……
 担任でもないし、そらわからんな……



それでも衣裳を手づくり

バレエのレッスン時間をいて、みんなで針をちくちく。
四人の生徒は無言で手を動かしていた。


だれも持って帰っていいですか?なんていわない。
かんたん。ウエストにスカートを縫いつける。
かんたんな作業、それだけだから?


じぶんが好きなバレエ。じぶんが作る、じぶんが舞台に立つから。


去年のパジャマから家庭科はキライになった。
正直に、じぶんで縫ったのを提出したら落第点……母親が縫ったの提出したら高得点。


それなのにバレエの衣裳、ちくちくやってる。
なんて単純な、わたし。
好きなことなら頑張れる。そうか。


バレエの先生のデザイン「森の妖精」の衣裳。
スポットライトで目立つ、あざやかな緑色。
舞台では細かい線より「面」「色」に目がいく。
特別な空間。
ヘタな縫い目も、細かいことはライトがあたると消し飛ぶのだった。




むかしでよかった

40年ぐらい前のバレエ教室の発表会。
舞台写真はあっても、動画の撮影はありませんでした。
令和のいまなら画質が良すぎ、踊りもなにもかもアラが目立ちますね。


細かいことなんか、だれもわからない。
客席からは見えてない。
だれも気にしてないし。興味がない。


おおきな舞台では、
ちっぽけなじぶんの存在。
世の中もそうかもしれないな。
だれも知らない。
わたしが悩もうと泣こうと。


気にしすぎない。気にしない。
自力でツラさを逃がす術。
わかった、人生の早いうちに。


百貨店の文化教室の発表会。
バレエの振り付けや衣裳、どんどん進みました。


つぎは合同練習・合同リハーサル。
中学三年生のバレエ初舞台。


わたしの落第点はこれからも……



毎週木曜日は
「バレエ・ダンス」の日


いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに


さいごまでお読みくださり、
ありがとうございます。

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