丁寧に動けば、心は落ち着く
子供の頃、茶道はとても不思議なものに見えました。
なぜお茶を入れるのに、あんなに面倒な手順を踏むのか。
(しかも、わざわざ丁寧に入れてくれてるのに、お茶はとても苦いし!)
大人になり体を使うようになってから、
型や所作というものの意義を理解できるようになりました。
カタや所作は、いわゆるルーティンです。
一つひとつを丁寧に集中して行うことで、
あれこれ飛び回る思考を、せわしなく動いている心の動きを
スローダウンし、「今」に留めてくれます。
これを繰り返していき体に染み込ませると、
心の準備はできてないなくても、
集中して丁寧に手順を行っていくだけで、頭と心が落ち着いてゆく。
体を使って心を留める、まさにヨガと同じです。
これは、茶道やヨガ、スポーツだけに限りません。
日常にも持ち込めるものです。
例えば、仕事でミスをした、時間がなく焦っている、
初めての場面で緊張している、といった場合。
いつもより集中して丁寧に一つひとつの動きを行ってみましょう。
自分の動き一つひとつを心の中で実況中継してゆくのです。
「右手で椅子を掴んで、手前に引き、椅子の横に立って、
膝をゆっくり追っていき、座面が体に触れた。
徐々にお尻を下ろして、体の後ろ側に体重移動し、しっかり座った」
「人差し指でパソコンの電源を押す。
左手でカップを持ち、唇にカップを当て、
手首を倒しカップを斜めにする。
コーヒーの液体が口に入ってきて、
口の中に苦味や暖かさを感じる、
それを飲み込むと喉に暖かさが広がり、鼻へ香りが抜けていく」
席に着き、パソコンのスイッチを入れて
起動を待つ間にコーヒーを飲む。
これだけの間に、私たちはこんなに手順を踏み動いているのです。
集中して丁寧に、自分の動きを観察していくことは、
「今」の体の動きと心をつなぐことです。
心は「今」に集中することに注力するので、
焦りや不安に心を占拠させている「余力」はなくなります。
あとは、同じように仕事の動きを丁寧に行っていきます。
パソコンを打つ動きも、コピーをとる動きも、
書類をめくる動きも、丁寧に丁寧に。
心が追いつかないなら、体に頼る。
動きのスピードを落としたって構いません。
自分が焦っていることに気づき、ゆっくり丁寧に、自分の動きを観察する。
日常にこそ、マインドフルネスを生かしましょう。