読書記録(歴史)『最後の決断 戊辰戦争 越後四藩の苦悩』
渡辺れい著 新潟日報事業社2012年
【目次】
はじめに
越後の立場ー国の成り立ちと小藩分立
越後への道ー北越戊辰戦争開戦前夜
王政復古の大号令/小御所会議/公議政体派の巻き返し/鳥羽伏見の戦いへ/戦争の経緯/桑名討伐/北陸道鎮撫総督の越後下向/長州の怨念と会津の意地
高田藩の決断
榊原家による統治/第二次長州征伐 小瀬川の戦い 宮内の戦い/哀訴諫諍の貫徹/高田藩の決断/新旧勢力駆け引きの場
会津藩と越後
ふたつの会談/奥羽列藩同盟/長岡城への道 小千谷戦線 鯨波戦争
長岡藩の決断
慈眼寺談判/長岡藩の藩風 藩の成り立ち 老中輩出の時代へ 長岡藩の財政状況 天保唐物抜け荷事件/河井継之助/藩政改革 会津藩と長岡藩 決断のとき/慈眼寺会談の決裂について
長岡戦争
榎峠・朝日山の攻防戦/長岡城奪還 加茂軍議 見附・今町の攻防戦 長岡城奪還
新発田藩の決断
「二つのif」/新発田藩家臣団の形成/新発田藩の憂鬱 沼垂の苦悩 二万石高替えと財政の窮乏/新発田藩の決断 苦悩の始まり 大藩の圧力 列藩同盟への参加 外様と譜代 最後の決断
新潟戦争
内応のとき/新潟総攻撃
村上藩の決断
藩分裂 悲劇の始まり 二つの勢力 藩財政 対立の激化/落城と抗戦 落城 抗戦/遅れてきた決断
レクイエムー新旧の力学と二者択一
あとがき
【概要・所感】
本書は、戊辰戦争を勤王派と佐幕派の戦い等ではなく、長州と会津の怨讐による争いと位置付けている。どちらにも正義があり、またどちらもやり過ぎたところかある。越後には新潟湊等の幕府領を始めに、会津藩や桑名藩の飛地が数多くあった。在来の藩は小藩ばかりで、会津藩の影響が強く、図らずも激しい動乱の渦に巻き込まれた感がある。
本書は、高田藩、長岡藩、新発田藩、村上藩という越後を代表する四藩に焦点を当て、それぞれの藩の成り立ちから、家臣団の特徴、幕末における状況に加え、戊辰戦争においてそれぞれが下さざるを得なかった苦渋の決断を紹介している。
その中でも新発田藩は、しばし新政府軍に内応したとして同盟の裏切り者という印象が強いが、もともと外様で会津や幕府に義理立てする必要もない立場ながら、同盟軍に囲まれた藩の所在地から、嫌々ながら同盟に加わったことがよくわかる。
昨年公開された「十一人の賊軍」はそんな新発田藩を描いた映画であるが、結果として戦火を免れた町民の「長岡みたいにならなくて良かった」という台詞が妙に印象的だった。とはいえ新発田藩兵はその後の戦争では先鋒を務めさせられ、人的な被害も大きかった。
戦争の記憶というと、どうしても先の大戦の印象が強いが、現代まで続いている日本の歪みの原因が戊辰戦争にあるということにも注意しておく必要がある。