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パーソナルスタイリングに行って、自分に似合うものがわからなくなった(無計画日記)

この春、髪の毛を桜色に染めた。
理由は、近所の桜並木の蕾がほころび始めたから。

つい数日前までの寒さが嘘のように、暖かく穏やかな天気が数日続いた。外に出ると、冬を越えた植物たちが新芽を出している。外気に触れたばかりの葉は淡く柔らかく、光を受けて力強くきらめく。桜が開花する直前、枝先と、その周辺の空気がぼうっとピンク色に染まる。
春が好きだ。
そんな浮き足立った気分のままPinterestで綺麗な桜色の髪色を見つけ、「この色にしてください!」と美容師さんにお願いした。
美容師さんの腕のおかげで美しいベージュピンクに染まった私の髪。ウキウキで帰宅した翌日、思いがけない誤算があったことに気付く。
手持ちの服が全く似合わなくなったのだ。

これまでの約30年間を地毛(暗めの茶髪)で過ごしており、ワードローブの8割がグレースケール。部屋着すらラクダ色。
地毛だったからこそ馴染んでいたそれらの服も、今着るとピンク色の頭だけが浮いてちぐはぐだ。しかも、心なしか顔が老けて見える。なんてこった。
ただ私には、頭だけ派手になった自分を全身おしゃれにできる手腕がない。自力で服を選んでも、「なんか違う気がする」という結果になるのが目に見えてる。
そこで、思い切ってパーソナルスタイリングを依頼することにした。有料で、服に詳しい第三者に似合う服を選んでもらうサービスである。
お金をかけて有識者に聞けば、この髪色にふさわしいオシャレが手に入るはず!と予算は奮発して5万円。普段買うのはユニクロの2990円の服だけど。
金の力で解決しようと他力本願でいたのが甘かったのかもしれない。
予約当日、スタイリストさんといくつかお店を回り、1時間のうち3回以上服を脱ぎ着した。しかも別の店で。
なのに、全然決まらん。何を買えばいいのかが全くわからない。
まさか、お金を出して有識者に聞いても服が買えないなんて…。ファッションってなんて難しいんだ…。

誓って言うが、スタイリストさんのセンスは抜群だった。
私の「きれいめなスタイルが好きで〜、髪に合うような色物の服が欲しいんですけど、できれば靴とかアクセサリーも見たいなぁ」というふわっとした要望に応えようと色んなお店や服をチョイスしてくれた。
ただ、根っからの優柔不断に加えて、ちょっと前までグレースケールで世界を見ていた私の目に、黄色やオレンジの服は鮮やかすぎたのだ。姿見に映る全身パステルカラーの女と、自分の心が驚くほど噛み合わない。彼女や店員さんが「可愛い!これは本当に似合う!」と少し照れるくらいに褒めてくれても、自分が自分に可愛いと言ってあげられない。彼女たちはピンク色の私しか知らないけれど、私は29年間焦茶色だったのだから。
結局時間内には1着も決められず、このままでは帰れない!と一人になってからも足が痛くなるまで色んな店を回った。
そして購入したのは、白のブラウス。柔らかい素材で袖がふくらんでいる、シンプルだけど心ときめく一枚で、試着時にスタイリストさんが一番似合ってると言ってくれたものを同じお店に戻って購入した。
当初の目的とはちょっと違うけど、1着で1万5000円。私にしてはかなりの冒険価格なので、この日はこれでよしとした。

これは約1ヶ月前の話だけど、今ではカラフルな洋服や柄物を当てても最初ほどの違和感がなくなった。むしろ髪色が派手になったぶん、洋服も派手にした方が見栄えがするような気がする。
なので、店頭で手に取る機会が増えた。まだ買うほどの勇気は出ないけどね。
今思えばあのときは髪を染めたての自分を見慣れていなかっただけだったのかもしれない。それに、あれもこれもと欲張らずに依頼段階でアイテムを絞っていれば、もっと満足のいく買い物ができたのかもしれない。
まあ、初めてだったししかたないか。
改めてスタイリストさん、私にグレースケール以外の選択肢を与えてくれて本当にありがとう。

2022.4.25 朝


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