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【描写遊び】休日の朝と猫

Emikoさんの記事で紹介していた描写遊びに初挑戦します!

https://note.com/emiemibrightness/n/n40a489574f74

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カーテンの隙間から、柔らかな朝の光が差し込み、眠りの淵から意識が浮上した。まだ半分夢のなかにいて、ぼんやりとしか頭が働かない。

とすんとすん

こちらが起きた気配に気付いたのか、キャットタワーから猫が降りる音が聞こえた。静かな足取りで近寄ってきて、「みゃーん」と枕元でひと声あげる。餌を催促しているのだろう。
腕を伸ばすと、すべすべの毛が掌に触れた。

ぐるぐるぐる

何度かしっぽの付け根を撫でてやると、心地よさそうに喉を鳴らした。
枕の横にあったスケッチブックの上に、すとんと腰を下ろす。うちの猫さまは、マットレスのふかふかの触感よりも、床などのちょっと固い質感の方が好きらしい。特等席に座り、「ほら撫でろ」とでも言うかのように私の方に身体を差し出している。グレーとクリーム色が入り混じった毛に顔を寄せると、陽だまりのような温かな匂いがした。アンティークのとんぼ玉のような深みのある黄金色の瞳は、まっすぐカーテンの隙間を見つめている。
窓の外が気になるご様子だ。

私はぐるりと躰をねじって、グレー味がかった水色のカーテンを開けた。空に立ち込めた雲が優しい光を放っており、寝起きの目に眩しく映った。猫が外に出ないよう少しだけ窓を解放すると、雨が上がったところなのか、瑞々しい雨の匂いが緩やかな風と共に部屋に入り込んだ。

猫の方に向き直ると、差し込んだ光できゅうっと瞳孔を細め、一生懸命に窓の外を追っていた。ぴんと伸びた背筋。好奇心旺盛にキラキラと輝く瞳。愛らしい姿と窓からの光で、徐々に頭がはっきりしてきた。

そろそろ起きるかと、上体を起こす。
ようやく餌がもらえると察したのか、猫がベッドから滑り降りて催促する。猫を追うように私もベッドから降り、キッチンへと向かった。

穏やかな休日のいち日がはじまる。


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