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睡魔と戦った1学期
朝、元気に学校に出かけた娘が間もなく戻ってきた。鍵のかかったドアをガチャガチャとこじ開けようとしている。驚いて開けると、「プールカードを忘れた」と、焦ったのと暑いのとで真っ赤になった顔で立っていた。カードはランドセルに入っていたのだが、プール袋の中を見て、入ってないと勘違いしたようだ。「ちゃんと入っているよ」と言うと、「みくちゃんたち、先に行っちゃった」と目に涙をためた。心細そうなので、夫が途中まで送っていった。歩きながらずっと、「目、赤くない?」と心配していたそうだ。泣いたことが友達にばれるのは、いやなのだった。
初めてのことだらけの小学校の1学期は、あっという間に終わった。学期末の保護者会で会った先生は、娘について「最初の1カ月はずっと笑わなかったので、なにか怒ってるのかなぁと思っていたんですが、最近はツンツンと私の背中を突っついてくれるようになりました」と言っていた。
指でツンツンとするのは、家族以外の人に対する彼女の精いっぱいの愛情表現なのだ。それにしても、やっぱり1カ月間は笑ってなかったのかぁ……と苦笑いしてしまった。新しい状況でも泣かなかったから、成長したなと思っていたのだ。
この3カ月余り、大変だったのは睡魔との戦いだった。保育園時代より活動開始時間が早まり、おまけに新生活の緊張と課題がのしかかり、夜8時ごろには必ず電池切れになる。でも、こちらの帰宅はだいたい7時ごろなので、圧倒的に時間が足りない。夕飯の用意ができるのに間に合わず、床で寝てしまうこともしばしば。電池切れの彼女を揺り起こし、服を脱がせて無理やりお風呂に入れるが、もう体も大きいので、こっちの体力も持たない。そういう繰り返しだった。
ともあれ、朝になれば彼女はまた元気が戻り、一日も休まず通っていたが、最後の最後に溶連菌感染症でダウン。初めての終業式は欠席となった。
2009年7月26日
☆2009年から2012年まで子ども向けの新聞につづった連載を改編したものです。