第五章「固有性を離れる・線」⏐ 矢野静明
絵画以前ということなのかもしれませんが、人が一本の線を引くということを、これまで自分の体験に基づいて考えてきました。あわせて、自分の体験について、シモーヌ・ヴェイユの「人格と聖なるもの」に触発されて考えてきた部分もあります。ヴェイユから受け取った問題とは、固有性から離れるというものです。ヴェイユは、哲学者でもあり、社会運動家、教師でもあるのですが、もっとも本質的な意味で宗教家であったという、他にあまり例を見ない存在について考えるのはまた別の機会にしたいと思います。ヴェイユ自身