三味線弾きの断片的日常 2024/09/11-20
9月11日。
来月、地歌と津軽と1曲ずつ5分くらいのものを演奏してほしいといわれている舞台があって、1曲なら津軽はまぁ曲弾きかなと思いつつ、地歌は何がいいか師匠に相談。ちょうど今やっている「鉄輪」でどう?という話になる。「鉄輪」をやるなら、津軽の方は「よされ」でもいいな。鉄輪とよされ、とても私らしい選曲ではないだろうか。津軽三味線というと、やっぱりみんな曲弾きを期待してるのかなと忖度してしまうが、私が弾きたいのは「よされ」なのだな。
9月12日。
国立劇場のHPに掲載されている、いとうせいこう「文楽の極意を聞く」。とても面白く読んだ。同じようなことを他の師匠方からもよく聞くなぁという話も多かった。音楽なんて己の才能頼みで独学で自由にやればいい、と考えることもできるけれど、師匠の稽古がどれほど大事か、ということも実感する。それでも、文楽は特別な世界だと思う。公演が保障されていてお給料が出て、生業が同時に勉強でもあるなど恵まれすぎでは。女流義太夫とは全然違う世界。
9月13日。
月例・三味線三昧@天Q。じょんから旧節、りんごメドレー、淡海節、炭坑節、よされ節、を「月」の入った歌詞で揃えてみた。楽屋では、民謡クルセイダーズやすずめのティアーズなど、最近、民謡がおもしろくなってきているよね、という話が出る。民謡はアレンジの余地が大きいと思うし、私も色々やってみたいところ。
9月14日。
元ちとせ@ビルボード大阪へ。はじめての元ちとせライブ!「元ちとせ×ストーリー」というテーマで、映像作品に使われた曲を中心に選ばれたセットリスト。ドラマを感じる歌、という私の最近の興味とも重なる偶然。
9月15日。
先日の天Qライブの時に、急に黒ちゃんから、今日のライブを聴いて意見をくれと言われる事件がありまして。別に私などの意見を求める必要などないくらいに、すでに自分のパフォーマンスというものを持っていると思うのですが、どんなに小さなライブでも一つ一つのクオリティにこだわりたいという気持ちには共感があり、少しばかり感想を伝えましたが、うーーん、あれは客観的な意見というより、単に私の好みの問題だったかもなと反芻している。
9月16日。
時間はあるようで、ない。ここから来年3月まで全力疾走のスケジュールで、本番はまだ先だと思っていても、そこにかけられる時間は実はそんなにない。つまり、12月の「うた絵巻」の選曲も早めに絞りたいのだけれど、いつものように、古典曲のネタ探しに苦労している。
9月17日。
今宵は中秋の名月。月見バーガーは年に一度は食したい。もはや年中行事。
9月18日。
楽器を大切にする、ということについては、ミュージシャンでも温度差があるけれど、私はやっぱり楽器を大切に扱えない人とは付き合えない。たとえば、たとえ空でも楽器ケースの上にコップを置くようなミュージシャンとはもう一緒にやりたくないし、たとえ親切心からの申し出でも楽器のことを知らない人に運んでもらったりもしない。頑なだと言われるかもしれないけれど、人にはそれぞれ譲れないことがあるし、それを尊重するのが相手を大事にすることだと思う。
9月19日。
随分前に録画したテレビ番組を見る。ピアニストの藤田真央が出ていた。名前だけは知っていたけれど、初めて演奏を聴いて、すごく良かった。童顔と所作から受ける印象と、語彙力の豊かさ、言葉選びの的確さのギャップにも驚く。エッセイも売れているというのも納得。やはり、もっといろんな音楽に日々アンテナを張っていたいと思う。
9月20日。
気に入らないことがあると大声を出して相手を黙らせようとする人が苦手だ。苦手というかムリだ。大声を出されると委縮してしまう。そんな自分が情けないとも思うけれど、もうそれ以上関わりたくないし反論できない。でも本当はもっと強くありたい。