大きな流れの中に~余市エコビレッジでインターンをして~
2022年4月から7月までの4か月間、余市エコビレッジで住み込みインターンをさせて頂きました。「どうしてエコビレッジでお仕事しようと思ったの?」と聞かれた時、私は「エコビレッジのコミュニティー形態に興味があったから」と答えています。社会と自然環境、そして人々の繋がりが無理なく調和している暮らし。そこに、現代の資本主義社会の歪を狭めるヒントを見つけることができるのでないかと考えていました。けれど(それも確かにそうだけど)、実際はそんなにかっこいい理由だけではなくて。留学への挑戦と夢の断念、進路への不安と、様々なものを抱えた転換期に余市エコビレッジと出会い、そしてインターンとして採用して頂きました。幸運とご縁の中で育んだこの4か月間は、私の見る世界をより豊かにしてくれる、とても大切な時間となりました。
「エコビレッジにいる間に何かやりたいことはある?」えこびれ初日、純科さんが私に聞いてくれて、そして他のボランティアさんにも必ず聞いている質問。当初は「時間はたっぷりあるし、新しいことにたくさん挑戦できる!」と思っていたけれど、気が付ついた時にはあっという間にインターン終了間近。「たくさんできることは増えたけど、あれもやりたかったな、これも忘れていたな」と振り返っています。エコビレッジではそれほど目まぐるしくも、丁寧な毎日を過ごしていました。
私の日々のお仕事は、自給用の畑の作業や鶏クラブへの参加、イベントや研修のお手伝い、宿泊の受け入れ準備、そしてオンラインイベントの運営など。さらに時間が空いた時は草刈りをします。とにかく仕事に溢れ、人々が絶えず行き交うエコビレッジの日常で「私は何をやりたいの?今何をやるべきなの?私に何ができるの?」という問いに向き合い、自分自身で判断して行動することの難しさによくぶつかりながら、日々学んでいったように思います。
この4か月間は、エコビレッジでの暮らしを通して新しい分野に関心を持ったり、今までの価値観が揺らいだりと自身の中に多くの変化がありましたが、その中でも特に「食」に関する考え方を深めることができたことは、私の視野をさらに広くしてくれました。野菜を育て、地元の食材と共にお料理し、皆で食卓を囲む日々。エコビレッジでは忙しくて時間のない時でも、きちんとお料理して皆で頂くことをおろそかにしません。だからどんなに疲れているときやヘコんでいるときも美味しいものを食べれば自然とエネルギーが湧いてくるし、採りたての野菜や野草、地元の旬の食材は、とても新鮮で甘くていつも幸せな気持ちにしてくれる。さらにはその過程を仲間たちと共有することで、食事がもっと楽しくなります。「食」は生命の源にあることをつい忘れてしまいがちになるけれど、エコビレッジでの日々はその尊さを教えてくれました。
また、自然農法の難しさ、タネや肥料のことや、世界の食料問題など、食を取り巻く諸問題を近隣の農家さんや大学の先生方から直接伺い、考える機会にも恵まれました。食についてこれからさらに学びを深めながら、商品の一つ一つの選択に責任を持ち、目の届く範囲のさらに向こう側にある問題にも目を向けることができる消費者でありたいと感じました。
さて、現在、インターンを終えて一か月が経ちました。久々に実家に戻ってみると、特に生活面での自身の行動の変化を実感します。例えば食器を洗うときやお風呂に入るとき、またはお洗濯するときに環境に優しい洗剤を使うように意識したり、安すぎるお野菜やお肉を買う時に違和感を抱いたり、ファーストフードよりも家で丁寧にコトコト作ったお料理が食べたくなったり。今まで違和感なく行っていた一つ一つの行動や習慣にも立ち止まって考えている自分がいて、時々戸惑っています。けれど無力感や無関心で自分を固めてしまわずに、一つ一つの問いや課題に向き合うことで、自然の一部、そして社会の一員としてできることをコツコツ積み重ねることができる人になりたいです。そしてその学びを自身の中に留めるだけでなく、日常生活の中で小さな行動を起こす楽しさを、仲間たちと共有していきたい。エコビレッジではそのように日々の実践を大切にしている人々とたくさん出会ったから、私もその可能性を信じて、少しずつ変化を重ねていきたいです。
余市エコビレッジで出会ったボランティアの皆さん、たくさんお世話になった会員さん、長い時間を一緒に過ごしたケーマくん、そしてインターンを引き受け、多くの学びの機会を与えてくださった純科さん、本当にありがとうございました。
2022.8.27